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更新日:2022.09.09 / 掲載日:2022.09.04

新型クラウンクロスオーバー 国産高級SUV&先代車と先取り比較!

予告の広告ではSUV? セダン? というコピーが踊るなど、これまでにないキャラクターも武器としている新型クラウン クロスオーバー。ライバル車も多く、さらにそのどれもが実力車である。ここでは有力ライバルとの関係を検証してみたい。

●文:川島茂夫/月刊自家用車編集部

TOYOTA 新型クラウン クロスオーバー

●価格:435〜640万円
ライバルモデルはズバリこの4モデル!

LEXUS NX

●価格:455〜738万円

TOYOTA ハリアー

●価格:299〜504万円

LEXUS ES

●価格:602〜718万円

TOYOTA カムリ

●価格:349万5000〜468万2000円

パワートレーン&シャシーは
クロスオーバーがリード

 新型クラウン クロスオーバー(以下クロスオーバー)は、簡単にいってしまえば、トヨタ/レクサスの最新技術と装備を注ぎ込んだ、セダンとSUVの良いとこ取りを狙ったモデルといっていい。そんな理由もあってライバルになりうるモデルも幅広く、これも悩ます理由といえるだろう。
 プレミアムを武器とするモデルならば、どれもがライバルになりうるが、その中から絞り込んでいくと、やはり注目すべきはパワートレーンやメカニズム構成、装備設定が近い、トヨタ/レクサスのモデルたちだろう。
 クロスオーバーが採用しているプラットフォームは、トヨタ/レクサスの主力モデルに採用が進んでいるGA-K。TNGA技術から生まれたこの新世代プラットフォームは、レクサスESやカムリなどのセダンから、RAV4やハリアー、レクサスNXといったSUVまで、幅広いモデルに採用されている。適応用途や車格設定に応じて柔軟な設計ができることが特徴で、モデルごとに最適化されることで高い性能を発揮することが強み。TNGA以降のトヨタ/レクサスのモデルは走りでも高い評価を得ているが、この新世代プラットフォームが、トヨタ/レクサス車の走りの質を大きく引き上げた立役者と考えていい。
 クロスオーバーはGA-Kの最新仕様で、リヤ側にはDRS(ダイナミック・リア・ステアリング)などの最新メカニズムも採用されている。他のGA-K採用モデルよりも一歩進んだシャシー性能を獲得していると考えていい。
 またパワートレーンも、他のトヨタ/レクサスモデルをリードしている。全モデルにハイブリッド4WDを採用したことに加えて、上級仕様のRS系には新開発の2・4ℓターボベースのパラレル式ハイブリッドを搭載している。
 この最新ハイブリッドに採用された2・4ℓターボエンジンは、エンジン単体で272PSを発生する高性能仕様で、61‌kWを発生する前輪駆動用モーターと59‌kWを発生する後輪駆動用のモーターが組み合わされる。ちなみに後輪駆動系は従来のE-Fourとは異なり、モーターとインバーター/減速機を一体化したeAxleが採用されている。これまで以上に柔軟な駆動制御が加わることで、電動のスムーズさと高性能エンジンの速さを兼ね備えた、とても良質なドライバビリティを実現していることが予想できる。
 RS系を除くグレードに搭載される2・5ℓハイブリッド(THS Ⅱ)は、トヨタ/レクサスのミドル級モデルの標準的なパワーユニットでもあり、ESやカムリ、ハリアーやRAV4のE-Four車にも採用されている。ターボハイブリッドと比べるとパワースペックは劣るが、燃費と動力性能を高水準で両立しているのが特徴だ。クロスオーバーは動力性能重視のターボハイブリッドと、燃費もしくはバランス優先の従来ハイブリットという棲み分けができていることも強みといえよう。
 ちなみにセダン系の駆動方式はESがFFのみ、カムリの4WDは後輪駆動系に小出力誘導モーターを採用した簡易型E-Four。セダン視点という点からみると、後輪駆動容量に余裕を持たせていることも、クロスオーバーの強みといえる。
キャビンは上級セダン相応
アレンジ性能は平凡

 もう一つ、注目したいのはボディタイプが異なることによる、スタイリングの印象の違いと、キャビン&荷室の使い分けだ。
 クロスオーバーと他のGA-K採用モデルを比べてみると、クロスオーバーの全長とホイールベースはESとカムリの中間になり「一回り」というほどの違いはない。いずれもミドル級としては程よいサイズ感を持っている。
 大径タイヤの採用もクロスオーバーの特徴であり、ライバル勢とはサイズはかなり異なる。クロスオーバーのタイヤサイズは225/55R19もしくは225/45R21の2つになるが、おおよそのタイヤの直径はESやカムリより60㎜以上大きい。大径タイヤはSUVの外観面の要点のひとつでもあり、クロスオーバーはホイールアーチを覆うクラッディングと合わせて、ここでもSUVらしさを主張している。
 そして全高の違いも見逃せない。SUVらしさの要点にも見えるが、実はセダン系モデルと比べると約100㎜高でしかなく、クロスオーバーの全高1540㎜は都市部に多い立体駐車場にも対応できる。SUV系との比較では、オンロード志向の強いハリアーやNXでも全高は1・7m弱。ラージクラスなら1・7m以上も珍しくない。セダンと比べると全高は高めだが、SUVとしてみるならばかなり低いといえる。
 クラウンの室内高は1170㎜。ESとカムリの中間値であり、ハリアーよりも45㎜ほど狭い。一般的にSUVはセダン系より室内高が大きいのだが、キャビンスペース設定はセダン寄りの設計と見るべきだろう。
 SUVの踏破性の目安となる最低地上高は145㎜と、一般乗用車のプラスαレベル。ハリアーやNXはオンロード重視の設計だが、それでも190㎜前後を確保していることを考えると、クロスオーバーをSUVの範疇で捉えるのは難しい。
 クロスオーバーはSUV的ルックスだが、車体周りの寸法諸元は上級セダンとほぼ等しく、キャビン実用性や着座地上高による運転感覚はESやカムリが近い存在。アウトドアも考慮する選び方では、ハリアーやNX以上に選択肢にしづらい。
 車体外寸やキャビンでは上級FFセダン、走行性能ではオンロード志向のプレミアムSUV、両方合わせると並び立つライバルは皆無というのがクラウン クロスオーバーの率直な立ち位置。隙間商品と言っては語弊があるが、SUV市場への影響はともかくとして、停滞気味の上級セダン市場に激震を走らせる可能性は十分にある。
 クロスオーバーがセダン寄りか、それともSUV寄りか、という問題は受け手側によって印象が異なるため、1番のライバルと目するモデルはユーザーそれぞれに変わってくるだろうが、基本メカニズムを共有、もしくは限りなく近いトヨタ/レクサスのモデルたちは、クロスオーバーの有力なライバルになるのは間違いない。

【ライバルその1】LEXUS NX

レクサス流の独自設計により、
1ランク上の走りが楽しめる
 プレミアム性を重視して設計されたミドルSUVモデル。ボディ&シャシーに環状構造が採用されるなど、レクサスならでの工夫が施されることも強み。クラウン同様に走り自慢のモデルになるが、PHEVモデルが設定されるなど、クラウンとは少し異なる上級ハイブリッドを楽しむことができる。

全長×全幅×全高は4660×1865×1660㎜。クラウンよりもボディサイズは一回り小さめ。空力を意識したボディデザインと引き締まったスピンドルグリルが印象的だ。
パワートレーンはPHEVやピュアターボも含む4タイプを設定。走りの質感でも十分に勝負できるSUVに仕立てられている。

【ライバルその2】TOYOTA ハリアー

ハイブリッド車同士で比べると
価格帯はかなり近い

 オンロード志向とスペシャリティ感覚はクラウンに近く、比較した4モデルの中でも最もキャラが近い。2.5ℓの4WD車同士で比べると価格帯はかなり近くなる。内装質感や装備はクラウンに分があるが、手頃な車体サイズやキャビン実用性などのSUVとしての使い勝手はこちらの方が明らかに上だ。

ひと目でハリアーと分かるリヤまわりのデザイン。特徴的なリヤコンビランプがスマートさを際立たせている。
光沢系の加飾を抑えて大人っぽい雰囲気を醸し出すキャビン。最上級グレードで比べてみると、クラウンと同等レベルといっていい。
ハイブリッド車はクラウンと同システムの2.5ℓハイブリッドを搭載するが、サスチューンは乗り心地重視の味付け。ここが差別点になる可能性が高い。

【ライバルその3】LEXUS ES

クラウンよりも格上になる
国産車屈指の上級セダン

 セダン寄りの視点を重視する場合に、最も有力なライバルとなるモデル。FFプラットフォームによる広いキャビンと穏やかな乗り味を武器とする良質な上級セダンだが、4WDが設定されないことはウイークポイント。内装質感はクラウンよりも格上だが、走りに関しては最新技術満載のクラウンに及ばない可能性が高い。

ステアリングやシフトノブにもディンブル本革を用いるなど、プレミアムの演出も抜かりない。レクサスならではの豪華なキャビンも人気の理由だ。
ESはGA-Kプラットフォームや2・5ℓが投入された最初の世代となるモデル。FFセダンながらも走りの良さも武器としている。

【ライバルその4】TOYOTA カムリ

走りは寛ぎ重視の味付け
快適性重視ならチャンスあり

 車体サイズの余裕を活かしたキャビンは、センチュリーを除くトヨタセダンの中では最大級。走りは寛ぎ重視の味付けで、ここがクラウンとの最大の差別点になる可能性が高い。2.5ℓハイブリッドのクラウンと比べると価格帯は少し低めの設定なので、快適性や実用性能を重視する向きにとっては有力ライバルになりうる。

初期モデルはコンソールにナビモニターを配置するレイアウトだったが、最新モデルはダッシュ中央にモニターを配置するレイアウトに変更されている。
前席はもちろん、後席も十分なスペースを確保。穏やかな乗り心地も含めて、乗員快適性に配慮した設計が注がれていることも特徴だ。

【新型 vs 先代】新旧クラウンの違いとは?

先代クラウン

走り重視のクラウンは変わらないが
フォーマル路線からスポーティ路線へイメージチェンジ
 15代目となる先代クラウンは、TNGA技術が導入されたこともあっって、歴代屈指の走りが楽しめることを武器としていた。分かりやすくいえばオーナードライバー向けの魅力を強化した伝統セダン。V6の上級ハイブリッドも選べるなど、歴代クラウンに通じるフォーマル感も兼ね備えていた。
 新型クラウン クロスオーバーの内装質感は車格相応に良好だが、派手な加飾は控えめでプレミアムをいたずらに主張するモデルではない。どちらかというと操作感や機能性を追求したスポーティな雰囲気が強い。乗員の居心地や快適性といったフォーマル感に関していえば、先代ほどクラウンらしさは感じられない。
 新型は最新プラットフォームとパワートレーンの採用もあって、先代以上に走りの質感を追求していることが予想できるが、伝統のクラウンらしさを求める向きにとっては、クロスオーバーはまったく別物と見られる可能性も考えられる。そういうユーザーは2023年に導入される予定の新型クラウンセダンまで待つのもいいだろう。

FR駆動を用いるGA-Lナロープラットフォームを採用。2ℓターボ車やV6ハイブリッド車も選べるなど、走りを意識したクラウンに仕立てられている。
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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

内外出版/月刊自家用車

オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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