自動車にかかる税金
更新日:2019.09.03 / 掲載日:2019.09.03
【消費税10%対応最新版】新車購入損得ガイド
いよいよ迫ってきた消費税増税。クルマについては、実はシンプルに「2%アップ」で済む話ではない。自動車関連税制の改正も同時に行われるためだ。そこで、何がどう変わるのかを整理しつつ、この時期のクルマ購入に知っておくべきポイントをまとめた。
●文:月刊自家用車編集部/松本隆一 ●イラスト:すずきはじめ
エコカー減税の変更も考慮して判断すべし
制度改正はブランド/ディーラーを問わず同条件だが、実際の商談では様々な対応があり得る。賢い交渉でよりお得な対応を引き出すべし。
消費税の増税が、いよいよ現実的になってきた。よほどのことがない限り、10月1日から消費税率は現在の8%から10%へと引き上げられる。その負担感はクルマのような高額商品ほど大きい。例えば500万円なら10万円の負担増となるのだ。となると、この負担を何とか避けたいのが人情だろう。そのためには、増税の前後それぞれのタイミングで知っておくべき事柄があるのだ。
消費税増税だけならある意味分かりやすいのだが、クルマについては時を同じくして税金の減免制度の変更があり、それらについても頭に入れておく必要がある。ポイントを以下にまとめたので、ひと通りご確認いただきたい。
こうした制度変更を踏まえた上で、できる限り損をせずお得にクルマを購入するにはどうしたらいいのか。ディーラーとの交渉に役立つ実践テクニックについては、自動車販売の裏のウラまで知り尽くした松本隆一が伝授する。
価格表記に注意!!
現状は8%と10%の表記が混在している
価格表記は消費税込みの総額表示が基本。9月中なら8%、10月になると10%の税額を含んだ表記となる。ただし、特に輸入車など、登録が10月以降になることがわかっているものは、すでに消費税10%の表記になっている場合もあるので注意が必要だ。
【例1】MERCEDES-BENZ Bクラス
Bクラスの価格は、導入時期によりガソリン車が8%込み、ディーゼル車は10%込み。
【例2】MAZDA マツダ3
マツダ3は遅れて投入されるスカイアクティブXのみ税率10%の価格となっている。
【キホン】税制改正のまとめ
<ポイント>10月登録分から適用
<ポイント>消費税以外も変更
契約が8月でも登録が10月なら新税率となる
総務省のポスター。令和元年度地方税制改正における、クルマ関連の税金見直しを告知するものだが、あまり目にしたことはない…。
消費税増税は10月からだが、いったい「何が」10月からなのか、まずはしっかり知っておくべし。消費税が課税されるのは売買契約時点ではなく、商品の引き渡し時点が基準となる。つまり、クルマにおいては「いつ登録か」が問題となるのだ。これは自動車関連税制も同じで、いくら早く契約しても、登録が10月以降にズレ込めば消費税も自動車関連の税金も、新制度で計算されることになる。だから一刻も早くディーラーへ急げ……と言いたいところだが、自動車関連税制については消費税増税をフォローする減税策が用意されている。車種によって減税の適用額が違うので、それを踏まえて商談しよう。
※以下の文中のA~Fは、DATA BOOKの表組みに対応
【損】消費税8%→10%
ご存じの通り、消費税は10月から10%となる。現状の8%と比べて2%の増税で、100万円につき2万円ずつの増税となる。消費税だけを見れば10月から明らかな負担増だ。
【得】自動車取得税廃止
【損】環境性能割導入
登録車3%、軽自動車2%の自動車取得税が廃止。これで消費税増税分はチャラ、登録車なら実質減税……というほど甘くはなく、新たに新車・中古車に環境性能割0~3%が課税される(B)。当初1年間は1%の臨時的軽減を実施する(C)ため、1年間は実質減税となる。
1年間は1~3%の【得】
【得】自動車税が1000~4500円引き下げ
10月1日以降に新車登録した乗用車は、毎年支払う自動車税が引き下げとなる(A)。ただしその額は1000~4500円と限定的だ。
【その他】エコカー減税/グリーン化税制の見直し
環境性能に応じて取得税と重量税を減免する制度は既に4月から見直されているが、10月以降は対象が重量税のみとなる(D~F)。
総務省作成のグラフ。取得税が環境性能割に取って代わり、エコカー税制とグリーン化税制は対象や軽減率が絞られることがわかる。
総務省のパンフレット。外面(写真)には概要や変更スケジュールが示されており、内面では個々の変更内容が解説されている。
ギモン解消!! 月刊自家用車流【得】購入術 by 値引きの神様・松本隆一
まつもと・りゅういち/月刊自家用車の値引き情報を一手に引き受けるベテランジャーナリスト。ユーザー、ディーラー、双方の事情に通じた、購入指南の第一人者だ。
月刊自家用車読者たるもの、制度が変わるというのなら、それをうまく利用してお得な買い物をすべし! というわけでそのノウハウを大公開。他記事の「新車値引き情報」で各車の具体例もご確認あれ。
10・1対策特別座談会
開催日:8月8日
出席者:松=松本隆一/デ=国産新車ディーラーのセールスマン。営業歴12年/ユ=本誌の愛読者。29歳
増税の前後それぞれに有効なやり方がある!
松「消費税が増税されるっていうと『その前に買っちゃえ!』っていう“駆け込み”が起こるけど、実際、新車はどうですか?」
デ「現時点では殺到するほどじゃないけれど、やっぱりありますね。下取り車の車検切れは年末だけど、半年早めたなんて人が多いです」
ユ「庶民にとっては“たかが2%、されど2%”ですからね」(笑)
松「今回の増税、わかりにくい部分があるけれど、ディーラーではどんな風に対応していますか?」
デ「うちでは新車を販売するときに『確認書』という書類にサインをもらっています。これには『10月から実施する予定の“消費税増税”と“環境性能割”について販売員から説明を受けました』という文言が入っています。さらに『税制が変わった場合、増税分についてはお客様の負担となります』との断り書きも記されています」
ユ「えっ、環境性能割って?」
デ「すいません、突っ込まないでください。私たちもよくわかってないんですから」(笑)
松「詳しくは、この特集記事をご覧ください」(笑)
デ「ほんと、クルマの税金ってたくさんあって面倒なんです。クルマの場合、消費税がいつの時点で課税されるか、わかってない人がいるので困っていますよ」
松「弊誌の相談室に先日、実際にあった相談なんですけれど、その読者はランドクルーザープラドの購入を検討していて、トヨタのウェブサイトでは『納期は1か月以内』となっていた(※)んで、8月中旬に契約すれば9月末の登録は楽勝だから8%で買えると思っていたんですよね。ところが、実際に地元のトヨタA店と商談してみたら『増税前に買おうというお客さんがけっこういて、9月の割り当て分はもういっぱいになってしまった。いまから契約しても登録は10月以降になってしまう。だから消費税は10%で計算する』といわれたそうです。結局、契約したんだけれど、オプション付きで650万円もするクルマなので、消費増税によって13万円も負担が増えてしまったそうです」
ユ「そりゃ痛いですね。なんとかできなかったんですか?」
松「その人は弊誌の熱心な愛読者なんで、隣県への越境交渉を行って、経営の違うトヨタB店とも商談してプラド同士の競合にもち込んでいたんです。越境先のB店では『なんとか9月登録に間に合わせる』といわれたそうです」
ユ「えっ、だったら間に合うほうで買えばいいのに…」
松「そう簡単にはいかないところが新車購入の面白いところなんですよね。間に合わないほうのA店が増税分を吸収して余りある値引きを出したんで、支払い総額は消費税8%より10%のほうが安くなるという逆転現象がおきたんです。結局、B店がギブアップしちゃったんで、あえて10%で購入したわけです。ちなみに値引き総額は50万円を超えていました」
デ「各地のディーラーは独立採算のフランチャイズ制を採っていて、基本的にクルマごとにメーカーから割り当て台数が決められています。だから納期はディーラーによって変わってくることもあります。納期が間に合わないとなると、売り込み競争に勝つためには値引きを拡大するしかないですよね」
松「近くに経営資本の異なるディーラーがある場合は納期をチェックする必要がありますね。在庫のあるなしもディーラーによって違ってくるので、こっちでは駆け込みアウトでも、あっちではセーフってこともありますよ。ところで、納期が9月登録に間に合うか、間に合わないかの微妙なクルマを売る場合はどうしていますか?」
デ「正確な納期って契約の段階では私たちにもわからないんです。だから、注文車の場合、10%で計算した見積もりを出しています」
ユ「じゃ、10%で計算した見積もりを出してきたら、こちらで、8%で計算しなおして『納期が10月になっても、この値段でやってください。OKなら契約します』ってやったらどうでしょうか?」
松「いいですね」(笑)
デ「困りますね」(笑)
松「ともあれ、これから納期の微妙なクルマを商談する人は『もしも駆け込みできないようなら増税分は店側で負担してもらいたい。OKなら契約します』とやるといいでしょう」
デ「9月は半期の決算月なので、そう言われると弱いですね」(笑)
松「消費税増税後もチャンスはありますよ。ディーラーは冷え込んだ需要を喚起するために値引き条件を拡大してくるし、ライバル店同士の競争もさらにエスカレートします。月刊自家用車の黄色いページを参考に上手に交渉すれば、きっとウルトラCクラスの値引きを獲得できるでしょう」
※トヨタのWebサイトでは7月の時点でランドクルーザープラドの納期を「1か月以内」としていたが、8月中旬時点では「1~2か月程度」となっている。