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更新日:2022.03.16 / 掲載日:2022.01.28
【ホンダ オデッセイ特集】ホンダらしいこだわりが詰まった上級ミニバン
文●大音安弘 写真●ホンダ
ホンダの上級ミニバンとして活躍した「オデッセイ」が、2021年内で国内生産を終了した。歴代オデッセイの持ち味は、乗降に優れる低床フロアと日本の駐車場事情にもマッチする全高、セダンに迫る走りの良さにあった。その初代で築き上げた価値を武器に、加速するミニバンブームの中でも大きな存在感を示してきた。その輝かしい歴史を振り返りたい。
初代:ミニバンのイメージを覆したローフォルム
90年代前後のホンダは、スーパーカーNSXの投入やセナによるF1活躍など華やかな時代である一方で、三菱パジェロやスバルレガシィツーリングワゴンなどに代表されるRVブームに適した車種がなく、SUVを他社からのOEMで賄うなど販売面での苦戦し、バブル崩壊後の業績不振へと繋がっていく。その状況を打開すべく企画されたのが、初代オデッセイだ。
開発費を抑えるために持てる資源を最大限活用し、専用プラットフォームではなく、最新世代のアコードをベースに。さらに組み立てラインの共用化まで行った。それが低床低全高という独自のパッケージにも繋がっていく。もちろん、アコードとの共用化は、乗用車の快適性と走りの良さを兼ね備えるという狙いもあった。メカニズムは、車重と乗員、荷物の増加を考慮し、2.2L直列4気筒エンジンのみに。オートマチックもファイナルギアをローギア化することで、力強い走りを可能としていた。快適な乗り味を実現すべく、プラットフォームも強化し、ボディ剛性を向上。アコード譲りの4ダブルウイッシュボーンサスペンションも、走りの良さに貢献した。
スタイルは、ミニバンらしいフォルムを与えながら、セダンベースのフロアが生む、低いエンジン搭載位置を示すようにフロントマスクを低く配置。ちょっとユニークなスタイルに仕上げられていた。多人数向けワゴンのイメージを覆すデザインは、セダン派が受け入れやすいだけでなく、空力特性にも優れ、燃費にも貢献していた。
キャビン内は室内高こそ、他のミニバンやワンボックスには譲るが、コラムシフトによるゆとりある前席空間とウォークスルー構造、3列目までの移動も容易な2列目キャプテンシート、しっかり使える3列シートを与えるなど、多人数乗車の乗用車として高い機能と快適性を誇った。
1994年10月に発売され、その個性的な特徴からホンダは独自のユーテリテイを持つ新しいクルマとしてアピールすべく、「クリエイティブ・ブーバー」と紹介。これが後にCR-Vやステップワゴンなどのヒット車を生むシリーズの第一弾となった。ホンダの提案は、世間から支持され、瞬く間に人気車に成長。海外モデルが展開されたことで、豪華な装備とパワフルなV6エンジン搭載の上級モデルも追加されるなど、モデルラインの強化も図られた。
2代目:コンセプトを受け継ぎながらホンダらしい走りへのこだわりも深めた
1999年12月にフルモデルチェンジした2代目は、ファミリーカーのミニバン化が進んだことや、ミニバン人気の火付け役としても大きな功績を残したという自負から、基本的にはキープコンセプトとなっている。何しろ、初代は42万台を記録した大ヒット作である。その上で新型として、ミニバンとしての価値やオデッセイの独自性もしっかりと追及されている。ボディサイズは同等だが、全長と全幅を拡大しながらも、全高を抑えているのが特徴。このため、より低重心が強調され、スポーティなスタイルに仕上げられている。エンジンは、初代の後期型から採用される2.3L直列4気筒と、パワフルな3.0LV6の2本立てである点は同様だ。ミニバンでありながら、走りの良さを重視したオデッセイらしい進化のひとつがブレーキシステムにある。フロントディスクは、ベンチレーテッド化。リヤは、ソリッドディスクのままだが、前後共に1インチアップの16インチにアップ。タイヤサイズも16インチからとなっている。キャビンは、従来の低床フラットなフロアとウォークスルー構造が継承され、操作性に優れるゲート式ATに変更しながらも、インパネシフトとすることで、運転席周りのゆとりも継承している。
この2代目では、ホンダらしい走りを高めたオデッセイのアイコンも誕生した。それが2001年11月のマイナーチェンジで追加された「アブソルート」だ。スポーティなエアロにディシュタイプの17インチホイールを装着することで、ドレスアップ。さらにミニバンでありながら、専用ローダウンサスペンションが与えられていた。若者やクルマ好きにも刺さる走りの「アブソルート」は大人気となり、その後のオデッセイに欠かせない存在となった。
3代目:低床設計を生かして立体駐車場にも対応
2003年10月にフルモデルチェンジした3世代目は、最も挑戦的なオデッセイとなった。ミニバンでありながら、前輪駆動車を機械式立体駐車場に対応可能な1550mmの全高を実現させていたのだ。このため、ミニバンを敬遠していた層からも支持も強い支持を受けた。
最大の武器である低さを実現させるべく、プラットフォームも一新。全高を抑えながらも、低床化を強めたことで、室内高は、5mmの拡大を実現させていた。エンジンは、2.4L直列4気筒に統一されているが、レギュラーガソリン+CVTを基本とする標準車に対して、スポーツ性を高めたアブソルートでは、ハイオク仕様の5速ATとしていた。
デザインは、より低さが強調され、塊感のあるデザインに。スリムさも強調されていたため、ミニバンとステーションワゴンの中間ともいえるスタイルに仕上げられていた。もちろん、広々キャビンとしっかり使える3列シートを継承。但し、2列目は通常の3人乗り仕様のみとなった。走りのミニバン「アブソルート」は、そのスポーティなフォルムを活かすことで、エアロを纏った雰囲気はよりクールに。ビジュアルだけで満足しないのが、ホンダらしいところ。足回りも専用チューニングを実施することで、走りのミニバンという価値をさらに高めていた。
4代目:歴代モデルの集大成ともいえる完成度の高さ
2008年10月に投入された4代目は、3世代に及ぶオデッセイの集大成ともいえる存在だ。3列シートミニバンでありながら、機械式立体駐車場に対応可能な1545mmという低い全高を備えつつ、ニーズが高まってきた上級ミニバンとしての質感やワゴンらしさも追及された。
キャビンのレイアウトは、3代目同様に、2+3+2のシート配置であったが、乗員位置をV字にすることで全席での前方視界を広げることで、開放感を与えた。ラゲッジスペースも拡大し、スペアタイヤを廃止したことで、軽量化と3列シートを維持したままでのベビーカーの収納を可能とするなど、機能性も高められていた。しかしながら、ミニバン市場は、低床フロアのハイトワゴンが人気を集めており、苦戦。デザインも上質さを意識したことで、アブソルートのクールさも薄まったことなどの要因も重なり、オデッセイのコンセプトを熟成された高い完成度を誇りながらも、販売面では苦戦。次期型の方向性にも大きな影響を与える。
パワートレインは、2.4L直列4気筒エンジンのみで、FF車がCVT、4WDとアブソルートが5速ATを組み合わせるのは3代目同様。エンジンも標準車はレギュラー仕様であるが、アブソルートはハイオク化で性能を高めていた。また環境意識の高まりから、FFの標準車には、燃費重視の「ECON」モードが追加されている。
5代目:スライドドアやハイブリッドを採用するなどミニバンのトレンドを積極的に取り込む
2013年9月に、公式WEBで先行公開された新型オデッセイの姿に、多くのファンが驚かされた。従来型までのオデッセイ像を打ち破り、ミニバンのトレンドを積極的に取り入れた新世代像を示されたからだ。シリーズ初となるスライドア付きとなったことも大きな注目を集めた。これは低床ハイトワゴンに完全にシフトした市場や上級ミニバンのアルファード/ヴェルファイアの台頭、そしてミニバンの必須アイテムとするユーザーニーズに応えたものであった。また2013年に販売を終了したホンダの上級ミニバン「エリシオン」のユーザーをカバーする役目も担っていた。
2013年11月より正式発売を開始。モデルラインは、標準車の「オデッセイ」とスポーティな「オデッセイ アブソルート」の2本立てであることは同様だった。激変を可能としたプラットフォームは、先代の超低床フロアの思想を受け継ぎながら、刷新。日本の道路事情を加味し、全高は1800mm維持されたが、全長は+30mmの4830mmに。全高は+150mmとなる1695mmまでそれぞれ拡大させた。このため、デザインも厚みを増し、ミニバンらしい雰囲気が強まったが、ノーズを傾斜させ低く抑えるなど、オデッセイらしいシャープなイメージを受け継いでいた。ボディ拡大の恩恵は、当然、室内に反映されており、超低床フロアの恩恵も活かしつつ、室内高さは+105mmとなる1325mmまで拡大。ホイールベースも拡大されたことで、室内長も最大化され、2935mmまで広げられた。ラージクラス並みを誇るキャビンでは、2代目以来となる2列目キャプテンシートが復活。後席を3人乗りとすることで、キャプテンシートの7人乗りと、シリーズ初のベンチシート仕様の8人乗りを用意し、上級ミニバン並みの乗員もカバー。新たな武器となるスライドアは、開口部もしっかりと確保。さらに超低床フロアを活かし、ステップの高さを約30cmに抑えたのも強みであった。
パワートレインは、2.4L直列4気筒エンジンを基本とするが、全車がCVT+レギュラー仕様に統一。ただホンダらしい拘りとして、アブソルートシリーズでは、セッティングを変更し、性能向上を図り、CVTも7速モードとパドル付き仕様とした。もちろん、足回りは、アブソルート専用のチューニングサスペンションとなり、タイヤサイズも18インチ仕様が設定されるなど迫力も増していた。ただ足回りも刷新により、オデッセイ伝統の全輪ダブルウィッシュボーン式から、フロントがストラット式、トーションビーム式(FF車)に変更されるなど、コストダウンが伺える部分も見えるようになり、特にオデッセイらしい走りを期待するファンからの懸念の声が聞かれた。
2016年2月の改良では、オデッセイ初となるハイブリッドが登場する。ホンダハイブリッドの上級仕様となる「SPORTS HYBRID i-MMD」を搭載。2.0L直列4気筒エンジンと2モーターを組み合わせたハイブリッドシステムで、シリーズ式とパラレル式の両方の機能を備え、モーターとエンジンの強みを最大化しているのが強み。標準車とアブソルートの両方に設定。もちろん、ガソリン仕様も併売された。
最後のマイナーチェンジとなる2020年11月の改良では、なんとシリーズでも初といえる大胆なフェイスリフトを含むデザイン変更が最大のトピック。一言でいえば、ザ・ミニバンといえる王道的スタイルに改められたのだ。自慢の低いノーズを捨て去り、ボンネットフードを高め、大型グリルを採用するなど、フォーマルさと高級感を意識したフロントマスクが特徴だ。モデルラインは、アブソルートのみに集約され、シンプルなモデル構成となった。激変したマスクに戸惑う人がいた一方で、ミニバン購入層には、堂々たるマスクデザインが支持され、販売拡大に貢献し、一定の成果を残すことになる。しかしながら、上級ミニバンは、トヨタアルファードの一強振りが強まるばかり。ホンダとしても国内での乗用車販売に苦戦していることから、生産拠点の統廃合により、生産拠点であった狭山工場の閉鎖を気に日本での歴史に幕を下ろすことになった。しかし、オデッセイ自体が消滅したわけではなく、世界での活躍は続いており、日本仕様と共通性の高い中国版や大型化され独自の進化を遂げている北米版などが存在している。