車のエンタメ
更新日:2025.02.10 / 掲載日:2025.02.10
間違いだらけの国産車選び
孤高の自動車評論家が吠える!

トヨタに日産、ホンダ、マツダ、三菱、スバル、そしてスズキにダイハツ……。日本には自動車メーカーが8社も存在する。私たち日本人は、これら数多くのクルマを通して、デザインを考察したり、乗り味を吟味したり、各ブランドの歴史について想いを馳せたりできる。しかし2025年を迎え、新しい技術やクルマを取り巻く環境には変化が見られるようになってきた。今回は、この素晴らしい国産メーカーとそのクルマに対してアンチテーゼを提唱し、日本のクルマ業界について考え直してみたい──。
構成・文/清水草一、フォッケウルフ 撮影/茂呂幸正、木村博道
(掲載されている内容はグー本誌 2025年2月発売号掲載の内容です)
清水草一(Soichi SHIMIZU)
1962年生まれ。東京都出身。フェラーリの魅力を伝道しながら、モータージャーナリスト活動を続けてはや30余年。自動車評論のみならず、交通ジャーナリストとしても著書多数。
渡辺敏史(Toshihumi WATANABE)
1967年生まれ。福岡県出身。二輪誌、四輪誌の編集部勤務を経てフリーに。いわゆる“エンスー”系カーマニアから大人気の自動車評論家で、海外取材で忙しく世界中を飛び回っている。
間違いだらけの国産車選び 「デザイン編 01」
マツダの“魂動”はどこに辿り着いたのか?
高級ブランド化を図るマツダが最初に手をつけたのはデザインだった。
共通デザインでラインアップを統一化し、約15年それを続けてきたが、はたしてそれはよかったのか、それとも?

驚愕だったデザイン改革も、ここまで続けたのは見事
マツダが「魂動デザイン」を打ち出したのは2010年のこと。それから15年の歳月が流れ、マツダのラインアップは、すべて統一された質感の高いデザインをまとうにいたっている。
メーカーが外観デザインのイメージを統一するのは、ヨーロッパの高級ブランドでは当たり前だが、国産メーカーでここまで徹底したのは、マツダが初めてだ。そのねらいは、ズバリ、ブランドイメージを上昇させることにあった。
15年後の今、それは達成されたのだろうか。「どれもみんな同じように見える」ようになってしまったのか。自動車評論家の清水草一と渡辺敏史が語り合った。
* * *
清水「ナベちゃんは、マツダの魂動デザインについてどう思う?」
渡辺「ちょっと美しすぎると言いますか、自分のライフスタイルからすると、正直、カッコよすぎて引く部分はありますね(笑)」
清水「これじゃ牛丼屋に乗って行けないよ、みたいな感じだね」
渡辺「でも、ねらいや気概は、十二分に認めさせてもらってます」
清水「マツダは15年前に、『上質なデザインでブランドイメージを高めていく! それが俺たちの生きる道だ!』って決めたわけじゃない?」
渡辺「そういうのって、業績によって揺らいでしまったりしますけど、マツダはブレませんね」
清水「ブレないよね!」
渡辺「変わった形のヘッドライトやグリルとかで、目先の変化を追わずに、ひたすらデザインの本質で勝負する姿勢は凄いです」
清水「凄いよね! 俺は美しすぎるクルマはぜんぜん大丈夫なほうだから、マツダの魂動デザインは、最初から全面的に応援してる」
渡辺「清水さんはフェラーリに乗り続けてるくらいですから、魂動デザインくらいじゃ、ビクともしないでしょう。ウフフ~」
清水「もっともっと美しくしてくれ! くらいに思ってるけど、それがビジネス的には大変なチャレンジだってことも理解してるよ。『なにお高くとまってんだ』っていう反発だってあるだろうし」
渡辺「マツダはクルマだけじゃなく、ディーラーも外観を黒で統一して、凄くカッコよくしたでしょう。あれにはビビりました。ついこの間まで、『ご来店のお客様にはもれなく食器用洗剤をプレゼント!』ってやってたメーカーですから」
清水「それが一転、ウチは美しいクルマしか売りません! 値引きもしません! になったわけだもんね」
渡辺「それを心配してましたけど、思ったよりうまくいってますよね」
清水「昔と違って値引きはしてくれなくなったけど、デザイン料だと思えば高くないって考える層はいるわけだ。たとえばMAZDA3。世界中探しても、これだけ造形にこだわったハッチバックはないんじゃない?」
渡辺「出たときは美しすぎて引きましたけど(笑)、だんだん慣れて、落ち着いたデザインに見えてきました」
清水「時間が経っても飽きないし、逆に時間とともに引き込まれていく」
渡辺「マツダのデザインはみんなそうですね」
清水「CX-60はどう?」
渡辺「今までの魂動デザインにはない、マッチョ感がありますよね」
清水「ロングノーズと絶壁グリルが男っぽいし、力強い。装飾じゃなく、デザインの本質で魂動デザインの新しい方向性を見せてくれたんじゃないかな」
渡辺「同感です」
清水「そういえば、ナベちゃんは今ロードスターに乗ってるけど、それとは別にマツダの中古車を買うとしたら、どれにする?」
渡辺「うーん……」
清水「俺は現行CX-5だな。あらゆる意味でバランスがいいし、デザインもまったく飽きがこない。コスパは高いと思うよ」
渡辺「僕はMX-30ですね」
清水「ええっ! あのリアドア、使いづらくない?」
渡辺「僕の場合、後席は荷物置きですから。そういう風に割り切れれば、乗り味がいいし、おすすめなんです」

マツダ CX-60
マツダの新世代商品群の第1弾として2022年に誕生したクロスオーバーSUV。駆動方式はFRを採用し、上質な内外装デザインを特徴とする。ガソリン&ディーゼルエンジンに加え、プラグインハイブリッド仕様も設定。
新車価格 326万7000~646万2500円
中古車中心相場 290万~470万円
マツダ MAZDA3
アクセラの系譜を継ぐコンパクトモデル。設定されるパワーユニットはガソリンエンジン、ハイブリッド、ディーゼルエンジンと多岐にわたり、ボディタイプもハッチバックのほか、リアがトランクになったセダンが選べる。
新車価格 220万9900~398万6400円
中古車中心相場 140万~280万円
※新車価格と中古車相場はハッチバックモデルのもの。


MAZDAデザインの変遷を見る
言い方は悪いが、かつてはマツダのデザインも統一性がなかった!? しかしそのなかで名デザインが生まれたのも事実。現在のラインアップの祖先ともいえるモデルたちに、現代に通じる“魂”のようなものは感じられるのか?
SUV


トリビュートは00年代にマツダがフォードと共同開発したグローバルSUV。当時は都会的な風景に映えるシティSUVというイメージだったが、現代のCX-5と比べると、デザインの力強さやオフローダーの雰囲気が感じられる。
ロードスター


歴代最高のデザインと名高い現行型の4代目モデルだが、初代モデルの完成度の高さも捨てがたいものがあった。シンプルでプレーンなデザインで、世界中のクルマ好きを虜にした。どちらもクリーンで美しいのが共通点だ。
コンパクトカー


歴代モデルとも人気を博したデミオだが、3代目モデルのデザインは各方面から絶賛された。現在のMAZDA2は同モデルの後継車ということで、雰囲気もよく似ていて、デミオに魂動デザインを当てはめたような構成になっている。
ロータリー


RX-7やRX-8はロータリーエンジン搭載車の代表的モデルだったが、現代においてロータリーを積むのはSUVのMX-30だ。まったく成り立ちが異なるモデルだが、ロータリー技術が残っているだけでもありがたいのかもしれない。
間違いだらけの国産車選び 「デザイン編 02」
セダンは日本の宝ではなかったのか?
日本に限らず、世界はSUVが主力ジャンルとなってしまい、セダンは今やジリ貧状態!? “セダン時代”を生きてきた清水草一は現況を嘆いているという。それでもセダンを選ぶのは、是か非か。


マイノリティになった一方で獲得したもの
今、世界で最もスタンダードなボディタイプはSUVだ。日本ではまだ3割程度だが、全世界では約5割。「クルマはSUVがアタリマエ」なのである。
理由は、実用的でカッコいいから。クルマが重くなるので燃費には不利だが、それよりメリットが上まわると判断されている。
逆に、最も大きく販売割合を減らしたのがセダンだ。
かつてセダンは最もスタンダードなボディタイプで、国産車でも、小さいのから大きいのまで、あらゆるクラスにセダンを用意していた。トヨタで言えば「カローラ→コロナ→マークⅡ→クラウン」は、販売のセンターラインであり、その順に階段を上っていくのがお約束でもあった。
ところが今、セダンの新車販売割合は、わずか数パーセントにまで激減している。セダンを買うのは、特殊なクルマ趣味を持つ人だけになった。
が、マイノリティになったのは、悪いことばかりではない。今やセダンは、上級モデルやスポーツモデルしか生き残っていない。ゆえに、『セダンは高級でスポーティなボディタイプである』という、いいイメージが復活しつつある。
たとえばシビック。現行モデルはセダンタイプ(正確には5ドアハッチバック)で登場したが、発表当時は受注の9割をタイプRが占めた。シビックタイプRは、FF車として世界最速を誇る特別かつ高価なモデル。それがこれほど売れるとは!
セダンは、販売台数が激減したがゆえに、こだわりを持って選ばれる存在になった。私は今、中古のセダンに乗っているが、周囲の見る目は、確実に優しいと感じる。
ここ5年で販売中止となったセダンたち
2021


2022



2023


2024

間違いだらけの国産車選び 「メーカー編 01」
シャシー共通で作る兄弟車の存在意義
トヨタの高級ブランドとして誕生したレクサスだが、
そのラインアップの多くはトヨタ車とシャシーを同じくする兄弟モデルばかり?
車種が多いのはうれしいが、兄弟車ばかりでいいのだろうか。
昔と比べて兄弟車事情はどうなっている? 清水草一と渡辺敏史が語った。

昔の兄弟車と現代の兄弟車
違いは巧みな作り分け?
清水「ナベちゃん、ランクル250が凄い人気だね」
渡辺「ですねー」
清水「なによりランクル全体の人気が凄くて、最近は販売台数のベスト10にすら入ってきてるけど、そのうち8割くらいは250だよ」
渡辺「そんなに売れてるんですか!」
清水「最高735万円もするけれど、なにしろカッコいいじゃない。デザイン的にはレトロで、流行に惑わされない上流階級の匂いがする。そのあたりが人気の理由かな」
渡辺「ランクル250なら、メルセデス・ベンツGクラスやランドローバー・ディフェンダーにも対抗できるんじゃないですか」
清水「ランクル250のレクサス版がGXだけど、ナベちゃん、試乗した?」
渡辺「プロトタイプに乗りましたけど、さすがレクサスだけに、内装や乗り味の質感が断然高級でした」
清水「だいたいエンジンが違うもんね」
渡辺「ランクル250は2.8ℓのディーゼルが主力ですけど、レクサスGXはガソリンエンジンだけで、3.5ℓV6ツインターボも用意されます」
清水「もうひとつ違いがわかりやすいのは、内装だろうな。ランクル300とレクサスLXも姉妹関係だけど、LXの高級感はハンパじゃない。アラブの富裕層に大人気なのもわかるよ」
渡辺「トヨタはしっかり作り分けてますね。昔のバッジビジネスとはぜんぜん違います」
清水「考えてみると昔は、見た目だけちょっと変えて、別の名前で売ってた兄弟車が凄く多かったよね」
渡辺「お約束のように各社ありました」
清水「一番有名なのは、マークⅡ/チェイサー/クレスタのマークⅡ 3兄弟だろう」
渡辺「あの3兄弟、中身は一緒でしたけど、イメージ的には、マークⅡはスタンダードで、チェイサーは少しスポーティ、クレスタはエレガントっていう風に、うまいこと棲み分けしてましたね」
清水「あれは兄弟車として最大の成功例だね。でも、ほとんど名前が違うだけみたいな兄弟車も多かった」
渡辺「ディーラーが多チャネル化されてたんで、ホンダで言うとアコードとトルネオみたいに、あんまり意味のない兄弟車だらけでした」
清水「今はもうそういうビジネスモデルは成立しなくなった」
渡辺「ユーザーの目が肥えてますから、ランクル250とレクサスGXみたいに、ちゃんと作り分けないとダメでしょう」
清水「ただ、現在ではボディタイプが違っても、シャシーを共用できるようになったじゃない!」
渡辺「ハッチバックとSUVとか、セダン系とSUVとか、同じプラットフォームからなんでも作れる時代になりました」
清水「ホンダで言えば、フィットとヴェゼルとフリードは同じプラットフォームだもんね」
渡辺「それを意識してるユーザーはあんまりいないでしょう」
清水「別に意識する必要もない。カタチがぜんぜん違うんだから。好きなボディタイプを選べばいい」
渡辺「隠れ兄弟車だらけの時代になりましたね。ウフフ~」

トヨタ ランドクルーザー250
ランドクルーザープラドの後継車で、シャシーはランクル300と同じものを使用する、ランクルシリーズの次男坊的存在。2024年に発売されると、レトロとモダンを掛け合わせたような魅力的スタイルで一躍人気モデルに。
新車価格 520万~735万円
中古車中心相場 750万~1110万円


レクサス GX
ランクル250に先んじて2023年6月に発表されたレクサスGX。レクサスの新世代スピンドルグリルを採用し、幾何学的でシャープな印象を受ける。いかにも高級車然とした都会が似合う雰囲気を感じさせる。



トヨタ ランドクルーザー250
2023年8月に発表されたランドクルーザー250のデザインはシンプルでレトロモダンな雰囲気。太いバンパーアンダーカバーやフェンダーモールがオフローダーっぽさを感じさせる。丸目ライトも設定される。


こんなのもあった! 歴史に残る名兄弟車たち
「兄弟車」と聞いて、多くのクルマ好きが思い浮かべるのは、やはりマークⅡ3兄弟だろう。販売店が分かれていたこともあったが、当時、トヨタのセダンモデルには兄弟車がかなり多く存在した。
ほかに有名な兄弟車といえば、スプリンタートレノとカローラレビン、日産のセドリックとグロリアも有名だった。日産ではシルビアと180SXという、まるで完全別車種のような兄弟車もあり、それぞれが人気もあった。


同一メーカー内での兄弟車たち
古くは初代ヴィッツに対するプラッツ、ファンカーゴのように、優れたベースモデル(この場合はヴィッツ)があると、ボディタイプの異なる兄弟車が派生する。現代の、フィットに対するフリード、ヴェゼルも同じ形だ。



間違いだらけの国産車選び 「メーカー編 02」
一時代を築いたレガシィの終焉……。次を担うのは?
レガシィと言えばステーションワゴンをはじめ、セダンやSUVなどもラインアップしつつ、長く販売を続けてきた名車中の名車である。どうして日本市場から消える羽目になってしまったのか。清水草一が嘆き、そして、代役を考える。


ワゴンの不人気が要因だがワゴン派生車に光明あり
レガシィは、日本に「ステーションワゴン」というボディタイプを根付かせた名車である。
レガシィツーリングワゴンが登場するまで、ステーションワゴンタイプは「ライトバン」と呼ばれ、セダンより格下と認識されていた。ところがレガシィツーリングワゴンの大ヒットにより、実用性とスポーティさを兼ね備えた、最もイケてるボディタイプになったのである。
そんなレガシィ(アウトバック)が、間もなく国内で終売となる。直接の要因は、北米向けにボディサイズが拡大されすぎたことにあるが、SUVの侵略(?)により、ステーションワゴンという
ジャンル自体が消滅しかかっているのも事実だ。
しかし、ステーションワゴンは、そう簡単にはなくならない。ましてや中古車は不滅である(笑)。
ステーションワゴンはマイナーな存在になったが、だからこそ個性を発揮しやすくなった。ステーションワゴンを選ぶ人は、セダン同様、周囲とは一味違った、古風で貴族的な雰囲気を醸し出せる。もちろん本質は30年前とまったく変わらず、実用性とスポーティさを兼ね備えたままでもある。
レガシィの名前は日本からは消える。しかしアウトバックは、フォレスターとともに、北米ではまだスバルの主力商品。ステーションワゴンをSUV化することによって、生き残りの道はあるのだ。
国内でも、クロストレックとレイバックという、ステーションワゴンベースのSUVが、かなりの人気を集めている。
近年は、クーペSUVというボディタイプも、徐々に存在感を高めている。SUVながら全高低め、見た目はシャープでスポーティ。これはステーションワゴンの進化形と見ることもできる。国産車では、マツダのCX–30などがそうだ。
ステーションワゴンは、時代に合わせて微妙に姿を変え、生き残っていくだろう。

間違いだらけの国産車選び 「メーカー編 03」
本当に絶滅危機なのか? クルマ好きが支持するMT車
カーマニアに嘆かれているのが「MT離れ」。いつからかMT車に乗る人はマニアックとされ、MTを設定する車種も減ってしまった。この先の時代、MTはどうなっていくのか、清水草一が示す希望とは? 選ぶべきMT車はどれだ?

MTの凋落は自然の流れ嘆くことなく誇るべき
近年、国内のMT(マニュアル・トランスミッション)車の販売比率は1~2%程度。今世紀初頭には、まだ10%ほどがMT車だったことを考えると、急激にレアものになりつつある。
たとえば三菱には、MTの乗用車がまったく用意されていない。マツダは、ほぼすべてのモデルにあえてMTを設定していたが、一昨年、CX-5など一部車種でとうとうMTを廃止した。かつてWRX STIのようなMTのスポーツモデルが人気を集めていたスバルも、現在ではスポーツカーのBRZを除いて、MTが消滅している。
そもそもMTは、ガソリン車だけのメカ。フルハイブリッドには設定できないし、EV(電気自動車)には変速機がなかったりする。今後、ガソリン車の販売割合が下がるにつれ、MTはさらにレアものになっていくのが自然な流れだ。
しかし逆に、MTの巻き返しも見られる。昨年、シビックに新たに設けられたスポーティグレード「RS」は、MTのみの設定ながら、発売から1ヶ月で2000台の受注を獲得。シビックは「タイプR」もMTしかないが、発売当初は受注の9割がタイプRだった。
マツダロードスターは、10年前の現行型へのモデルチェンジ以降、MTの販売比率が、それまでの約5割から7割に上昇した。
現在すでにスポーティなモデルに関しては、ATよりもMTのほうが人気があり、中古車相場も高い。ガソリン車そのものが、スポーツ走行に特化した特殊な存在になりつつあるから、MTの価値は今後も上昇を続け、ゼロになることはないだろう。
MTの中古車で、誰にでもおすすめできるのは、スズキのスイフトスポーツだ。スポーツモデルではあるけれど、神経質なところがなくて乗りやすいし、それでいて運転が楽しい。コンパクトな5ドアハッチバックボディは実用性満点で、国民車に推したいくらいである。
スイフトスポーツも、MT車の販売比率が約6割と高い。タマ数が多いほうが、中古車を選ぶ際、ボディカラーやオプションにこだわりやすいというメリットがある。
付け加えれば、MTならペダルの踏み間違いによる暴走も起きない。中高年ドライバーにとっては、ある意味究極の安全対策。MTの操作は、老化防止にも役立つだろう。MTの命は永遠(?)だ。


今、中古車で選ぶべきMTモデル


スズキ スイフトスポーツ(現行型)
中古車中心相場 120万~230万円
スイフトベースのスポーツモデルで、スイフトは2023年末にモデルチェンジ。次期型の登場が噂される今はねらい目となる。
かつての「技術の日産」はどこへ。今も輝く日産の技術とは?
日産の経営が急激に苦しくなり、ホンダの傘下に入る形での経営統合が協議されている。そのせいか、「技術の日産はどこへ行ったのか?」といったことも言われているが、私はむしろ、今こそ日産は技術の宝庫だと考えている。
「技術の日産」と言われていたのは、もう半世紀以上前のこと。当時の日産の技術はトヨタを上まわっていた部分もあったが、決して世界をリードしていたわけではない。
しかし現在の日産の技術は凄い。GT-Rは間もなく生産が終了するが、現在も世界第一級の速さを誇り、ハイブリッドでは、エンジンで発電してモーターで走る「e-POWER」が好評。EVに関しては世界のパイオニアであり、今でもサクラやアリアは日本のEV界を牽引している。
つまり、ガソリンエンジンでもハイブリッドでもEVでも、日産の技術は十分輝いているのである。
ただ、どれもあまりビジネスに結びついていない。GT-Rは当初計画の10分の1程度しか売れず、e-POWERは国内では好評だが海外ではいまひとつ。EVに関しても日本のリーダーではあるが、世界シェアは1%程度にまで落ち込んでいる。
日産は、先進安全技術や自動運転技術に関しても、他社に後れは取っていない。技術的には、世界中のどんな自動車メーカーとだって渡り合える。では、なぜ経営が苦しくなったのかと言えば、「経営側(マネジメント)がいまひとつだから」だろう。
正直な話、それは我々ユーザーとは関係ない。ユーザーは、いいクルマが買えればそれでいいのだから、経営状況が多少厳しかろうと、日産の優れた技術は「買い」だ。

総括
国産車に想いを馳せて、世界観を深掘りする
誰しもが年を重ねると、「あの頃はいい時代だった」とか「昔のアレはよかった」とか言いがちだ。昔のものを懐かしみ、親しみをもって懐古することは悪いことじゃない。クルマなんて特に多くの人がそのような生温かい想いを抱きがちで、子どもの頃に憧れていたクルマや初めて買ったクルマ、長く乗ったクルマなどには、“想い出補正”もされて、ついつい美化しがちである。
しかし、その想い入れが強過ぎるとよくない。時代はゆっくりと、しかし着実に進んでいく。クルマだって、時代に合わせて、常に新しいものへと進化していくのである。
そこにきて、現代のクルマやそれを取り巻く環境について、やんややんやと意見を言ってみようというのが今回の特集テーマだったわけだが、執筆を担当した清水草一も渡辺敏史も、古き良きクルマを知る世代でありながら、新しいものへの好奇心も、正しいものを見極める目と評価軸をしっかり持ち合わせていた。結果的に、2人とも現代のクルマとその新しい領域を評価し、改めて日本のクルマやメーカーを応援するアウトラインとなった。
マツダのデザインも、トヨタとレクサスの兄弟車も、一時代を築いたセダンやMTやレガシィも、そして激動の時を迎えている日産にも、輝かしい時代はあったし、今も好奇心をそそられるクルマが数多く見られる。
今回の特集における自動車評論家らの意見が、過去のクルマへの想いと現代のクルマとを温かくつなぐ存在になれば、これ幸いである。自分だけのお気に入りの国産車がすでにある人はそれを大事に、これから探していく人は楽しみながら探してもらいたい。
