故障・修理
更新日:2025.05.22 / 掲載日:2025.05.22
車のベルトが損傷・破断したらどうなる?切れたときの症状と対応を解説

「突然エンジンが止まった」「ハンドルが重くて動かない」このようなトラブルに遭遇したことはありませんか。
車のエンジンには、重要な役割を担う複数のベルトが使われています。
これらのベルトが損傷したり切れたりすると、エンジンが停止する、ハンドル操作ができなくなる、オーバーヒートを起こすなど、重大なトラブルに発展します。
そこでこの記事では、車に使われているベルトの基礎知識をはじめ、ベルトが切れた際に発生する症状と対応策、修理費用の目安などをくわしく解説します。
もし「車のベルトが切れたらどうすればいい?」と不安を感じておられる人は、ぜひこの記事を最後まで読んでいただけたら幸いです。
事前に知識を持っておくことで、いざというときに冷静に対応できます。
1. 車のベルトが損傷・破断した際の緊急対応
走行中に車のベルトが切れた場合、落ち着いて適切な行動をとることが重要です。
ベルトが切れたまま走行すると、エンジンの停止やオーバーヒート、ハンドルの操作が不能になるなど、重大な事故につながる危険性があります。
メーターパネルに警告灯が表示されたり、異音が発生したりした場合は、ベルトの異常を示すサインかもしれません。
安全な場所に停車して車両の状態を確認し、専門業者に連絡して指示を仰ぎましょう。
ベルトが切れた際の症状は後述します。
2. 車のベルトに関する基礎知識
車のエンジンには、動力を伝えるためのベルトが複数使われています。
主なベルトはエンジンを動かすために必要なタイミングベルト(タイミングチェーン)と、エンジンの力をほかの部品に伝える補機ベルトの2種類です。
タイミングベルトはエンジン1つにつき1本だけですが、補機ベルトの数は車の種類によって違います。1本のベルトで複数の部品を動かす車もあれば、部品ごとにベルトがついている車もあります。
一般的に、排気量の大きいエンジンは補機ベルトの本数が少なく、排気量の小さいエンジンは多い傾向にあります。
排気量の大きいエンジンほど、補機類を一斉に動かせる強い回転力を持っているため、1本のベルトで多くの補機をまかなえるのです。
3. 車についているベルトの役割と交換目安
まずは、車のエンジンについている主なベルトの種類と役割をご紹介しましょう。
(1) エンジンに組み込まれている「タイミングベルト」

タイミングベルトは、エンジン内部のクランクシャフトとカムシャフトを連結する形でつないでいます。バルブの開閉と点火のタイミングを、正確に制御する重要な役割があります。
タイミングベルトは、耐久性・耐熱性に優れたゴム樹脂製で、寿命の目安は使用期間10年、走行距離10万kmです。
近年では耐久性に優れた金属製のタイミングチェーンも普及し、30万km程度の走行まで交換不要となりました。
タイミングベルトの特徴として、ベルト内側に「リブ」と呼ばれる歯山があります。
クランクシャフトとカムシャフトの歯車と噛み合うことで力を効率的に伝え、正確なバルブの開閉と点火のタイミングを制御しています。
(2) かつての冷却システム「ファンベルト」

ファンベルトは、エンジンの冷却するファンを動かす重要な役割を担っています。エンジンの回転力をファンに伝え、エンジンから発生した熱を冷却するのが主な役割です。
しかし、現在では電動ファンが主流となり、ファンベルトを備えていない車種が増えています。
ベルトはゴム製で素材的に耐久性・耐熱性が低く、使用期間3~5年、走行距離3~5万kmが交換目安になります。
(3) 快適・安全な運転に欠かせない「補機ベルト」

補機ベルトは、パワーステアリングポンプ、エアコンコンプレッサー、オルタネーターといった車の快適性や安全性を支える補機類にエンジンの動力を伝達します。
断面がV字型になっている「Vベルト」と、たて溝が彫られている「リブベルト」の2種類あり、車種によって使い分けられています。
どちらもプーリーとの摩擦を利用していますが、近年では伝導率と高速回転対応力に優れたリブベルトが主流です。
ファンベルトと同様にゴム製で、寿命は使用期間3~5年、走行距離3~5万km程度になります。
また、昔からの名残で補機ベルト自体をファンベルトやパワステベルト、エアコンベルトなど、つながっている補機に合わせた名前で呼ぶこともあります。
4. 車のベルトが損傷・破断した際の症状と対処法

車のベルトが切れることでさまざまな影響が出ます。
ベルトによって症状も対処法も異なりますので、それぞれのベルトが切れた場合の症状と対処法を解説します。
(1) タイミングベルトが損傷・破断した際の症状と対処法
タイミングベルトが切れるとエンジンが停止し、エンジンに深刻なダメージを与えてしまいます。
タイミングベルトはエンジンの吸気・燃焼・排気を制御する重要な部品です。切れるとバルブの開閉が停止し、エンジンは即座に止まります。さらに、ピストンとバルブが衝突する「バルブクラッシュ」が発生すると、高額な修理費用が必要です。
もし、走行中にこのような症状が出た場合は、安全な場所に車を停車させ、ロードサービスに連絡しましょう。
無理にエンジンを始動しようとすると、エンジンにさらなる損傷を与えてしまいます。
なお、タイミングチェーン式のベルトは寿命が30万kmと長いので、かなりの負荷を与えない限り、切れることはないでしょう。
(2) ファンベルトが損傷・破断した際の症状と対処法
ファンベルトが切れると、オーバーヒートやエアコンの不調が起こります。
ファンベルトはエンジンの冷却ファンを動かしているため、切れると冷却効果が低下し、オーバーヒートしやすくなります。エアコンの送風にも影響するため、送風力が弱まる、あるいは停止してしまうのです。
具体的には、以下の表のような症状が出た場合は、適切に対処する必要があります。
症状 | 対処法 |
---|---|
エンジンから異音 | 直ちに安全な場所に車を停止し、ロードサービスに連絡 |
オーバーヒートの警告灯点灯 | 直ちに安全な場所に車を停止し、冷却水が冷えて警告灯が消えるのを待つ |
バッテリー上がりの警告灯点灯 | 直ちに安全な場所に車を停止し、ロードサービスに連絡 |
エアコンの効きが悪くなる | エアコンをオフにする |
なお、最近の車は電動ファンが主流のため、ファンベルト自体がない車も多くあります。電動ファン搭載車の場合は、モーターの故障でファンベルトと同じような症状が現れます。
(3) 補機ベルトが損傷・破断した際の症状と対処法
補機ベルトが切れると、補器へエンジンの回転力を伝えられないため、パワステ、エアコン、オルタネーターなどの機能が停止します。
補器ベルトが切れた場合の症状と、対処法は以下のとおりです。
ベルトの種類 | 症状 | 影響 | 対処法 |
---|---|---|---|
オルタネーターベルト | 発電・充電ができなくなる | バッテリーが上がり、エンジンが始動不良になる | 直ちに安全な場所に車を停止し、ロードサービスに連絡する |
エアコンベルト | 冷房機能が停止する | 冷房が効かなくなる | エアコンをオフにし、業者に修理を依頼する |
パワステベルト | ハンドル操作できなくなる | ハンドルが重くなり、操作に力が必要になる | 直ちに安全な場所に車を停止し、ロードサービスに連絡する |
複数補器ベルトがある車種では、切れたベルトに対応する補機のみが停止します。ただし、補器ベルトが1本の車種では、すべての補機が一度に停止します。
5. 車のベルトが損傷・破断してしまう原因
車のベルトは、経年劣化とさまざまな負荷によって、徐々に摩耗し、最終的には切れてしまいます。
車のベルトは主にゴム製で、時間とともに硬化し、弾力性と強度が低下します。またエンジンからの熱、プーリーとの摩擦、動力を伝える張力などの負荷が常にかかっています。
これらの負荷はベルトの劣化を加速させ、硬化やひび割れを引き起こしてしまうのです。
経年劣化以外には異物混入、オイルやラジエーター液の漏れ、ベルトの張りの不適切さも、ベルトが切れる原因となります。新しいベルトを切ってしまう恐れもあるので注意しましょう。
6. ベルトに関するよくある質問
ここでは、ベルトに関するよくある質問にお答えします。
(1) ベルトが切れる前に前兆はあるの?
ベルトの種類によって切れる前に現れる前兆が異なります。
タイミングベルトは基本的に前兆なく突然切れます。一方、ファンベルトや補機ベルトは「キュルキュル」というベルト鳴きが発生することがあります。
① タイミングベルトは突然切れる
タイミングベルトは耐久性が高いですが、劣化している様子が現れずに突然切れてしまいます。
そのため、寿命の目安である使用期間10年、または走行距離10万kmまでに交換することが推奨されています。
② ファン・補機ベルトはベルト鳴きが起きる
ファンベルトや補機ベルトはタイミングベルトより耐久性が低く、経年劣化や熱の影響を受けやすい特徴があります。
ベルトが硬化・ひび割れると張りが緩み、「キュルキュル」というベルト鳴きが発生します。
キュルキュル音は劣化しているサインで、放置すると切断につながるため、早めの交換が必要です。
なお、ベルト鳴きは発進時やアイドリング時、低速走行時に発生しやすく、高速走行時には音が収まることがあります。
(2) 車のベルトの交換は自分でもできる?
車のベルト交換は、一見シンプルに見えても、実際は専門的な知識と工具、そして高い技術力が求められる作業です。
そのため、自分で交換せず、専門業者に依頼しましょう。
どのベルトも安全運転に不可欠なパーツであり、不具合や故障は、重大な事故につながる可能性があります。
タイミングベルトが切れると、エンジンに深刻なダメージを与えてしまい、最悪の場合、エンジン自体を交換しなければいけません。
ファンベルトや補機ベルトも、発電や冷却といった重要な機能を担っているため、異常があれば速やかに点検・修理が必要です。
繰り返しになりますが、これらのベルトは安全運転に大きな影響を与えます。自分では交換せずに、専門業者に依頼しましょう。
7. 車のベルトに関することはグーネットピットにお任せください
車の種類や年式によって異なりますが、車に使われているベルトは、主にタイミングベルト、ファンベルト、補機ベルトの3種類です。
これらのベルトは、車の安全走行を支える重要な役割を担っており、定期的な点検と交換が欠かせません。
ベルトが劣化すると、エンジン不調や異音、最悪の場合は走行不能につながります。
もし、走行中に上記の症状が発生した場合は、安全な場所に停車し、ロードサービスを呼ぶか、専門業者に連絡して指示を仰ぎましょう。
グーネットピットは、全国各地の整備工場を検索できるサイトです。
下記のWebサイトから、お近くの信頼できる業者を簡単に見つけられますのでぜひご利用ください。