クルマのお役立ち情報[2017.01.05 UP]

アウディミュージアム現地取材!
AUDI CHRONICLE アウディクロニクル

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アウディミュージアム

アウディの本拠地インゴルシュタットには、同社の歩みが刻まれたミュージアムがある。今回はドイツ現地取材を行い、プレミアムブランドならではの歴史的な重みを体感した。また、いま買い時のユーズドモデルに触れつつ、アウディヒストリーを振り返ってみよう。

文と写真●GooWORLD

戦前のクルマから未来のクルマまで幅広く展示

 アウディ本社(本拠地インゴルシュタット)には、アウディミュージアムが併設されている。建物は円形でガラス張り。アウディのブランドイメージらしく、インテリジェンスを感じさせる佇まいである。今回はこのミュージアムを現地訪問した。

 同ミュージアムでは定期的にテーマを変更し、展示車両の入れ替えを行っているが、我々が訪れたときはクーペがテーマとなっていた。将来登場を示唆する高級クーペ「アウディ・プロローグ」、WRCでも活躍した「クワトロ」など名車が並んでいたのが印象的。また、アウディの前身となる4つのブランド(下記参照)や、戦後傘下になったNSUなど、なかなか目にすることができないクルマも数多く展示。ジャズの演奏会など、文化活動も盛んだ。

 ここでは、そんなアウディの歴史に触れつつ、いま買い時のユーズドカーもチェックしていく。

アウディミュージアム

アウディミュージアム

アウディは4つの会社が統合して誕生した

4つのメーカーでももっとも古いのが1901年に自動車生産を開始したホルヒ。創業者のホルヒ氏はのちにホルヒを離れ、新メーカー「アウディ」を創立する。その後アウディは二輪車メーカーのDKWに買収されるが、アメリカの巨大資本に対抗するべく、ホルヒ、ヴァンダラーを含めた4社を合同し、アウトウニオンを結成。現在まで続くアウディエンブレムの4つの輪は、4社の共同体であることを示しているのだ。

1938 Audi Type 920 1938 Audi Type 920

1960 DKW Junior 1960 DKW Junior

1938 Wanderer W25K 1938 Wanderer W25K

1932 Horch 670 1932 Horch 670

アウトバーンの追い越し車線にアウディが多い理由
クワトロの威力

Special column

涼しい顔して200km/hオーバーのアウディが続々!! 涼しい顔して200km/hオーバーのアウディが続々!!

アウディエンジニアリングの象徴ともいえるテクノロジー「クワトロ」。理知的でエレガントなデザインで魅了するアウディに、あらゆる場面でハイレベルなトラクションを維持する高度な4WDシステムは、長い試行錯誤やラリーでの輝かしい成功の末、他の追随を許さない孤高の境地に達した。

文●沢村慎太朗 写真●GooWORLD

最強伝説に至るまでの苦悩と葛藤の物語

 アウディといえばクワトロ。だが、その中身の仕掛けは、何種類も存在するのだ。

 それまでのアウディは前輪駆動だった。それを後輪まで駆動して4WDにするにはどうしたらいいか。

 だれでも考えつくのは変速機の出口に、前輪へ行くルートと別の歯車セットを取りつけて、その歯車を経由して後ろへ伸びるプロペラシャフトをまわす方法だ。ところが、そのままだと問題が出る。クルマが真っ直ぐ走っているときはいいのだが、曲がるときには各輪の回転速度は少しだが違ってくる。このとき前述のような仕組みで前輪と後輪が歯車で機械的に結ばれていると、各輪がまちまちの回転速度で回ることができない。速く回ろうとした旋回外側の前輪が、遅く回ってるほかの輪に規制されて、あたかもブレーキをかけたような状態に陥ってしまうのだ。

 これでは古臭いし、つねに四輪駆動で走る真のフルタイム4WDにはなれない。そこで登場するのがディファレンシャルという機構だ。デフは両脇から伸びるふたつの軸に共にトルクを伝えながらも、ふたつの軸が違う回転速度でまわりたがったときはそれを許す。いまから二百年前にフランス人が歯車を複雑に組み合わせて発明したその仕掛けは、まず駆動輪の左右の間に仕込まれた。左右の間でも旋回時には回転速度の違いが出るから必要だったのだ。そしてデフはFFでもFRでも必須のメカになった。そのデフを左右だけでなく前後のトルク伝達経路に仕込めばいいわけだ。

 ところがそうは問屋が卸さなかった。デフは左右が違う回転をしているときにはトルクが伝わらないという弱点がある。二輪駆動ならば「回転差が収まるまでアクセル踏むのを待ってください安全第一です」で済むのだが、四輪駆動車は滑りやすい路面で地面を蹴ってこそ価値がある。そこでデフが回転差を許す(専門用語で差動と呼ぶ)動作を止める仕掛けを追加することにした(そちらを差動制限という)。

アウトバーンの追い越し車線にアウディが多い理由

 初代のアウディ・クワトロのとき、その差動制限装置は単なるオンオフ(いわゆるデフロック)で、これを室内のスイッチで作動させるものだった。だが、いちいちその仕掛けを動かすのは面倒臭い。と思っていたらアメリカのグリーソンという機械屋がトルセンという仕掛けを発明した。これはデフと同じように歯車の組み合わせで差動の仕事をしつつ、しかもその組み合わせを工夫して、伝えるトルクが少ないときは差動を許し、トルクが大きくなればなるほど差動を制限してくれるという何とも有難い機能を持っていた。そこでアウディはトルセンを買い込んで前後のトルク経路に仕込んだ。これで面倒な切り替えなんぞいらない真のフルタイム4WDとなれた。めでたい。めでたいついでにアウディは、遊星ギヤまで仕込んで前後に割り振るトルクを不等分にした。歯車仕掛けで前後を機械的に結びつつ、つねに四輪を駆動できる・・・これがアウディの4WDの柱になった。先代A4のとき彼らはクラウンギヤを使う仕掛けを投入したが、システムの原理としては同じものである。

 しかしアウディの4WDはじつはそれだけじゃなかった。彼らのCセグメントとBセグメントはVWの小型モデルの兄弟である。エンジンを縦置きするアウディと違って横置きするVWは、仕掛けがややこしくなるから、もっと簡単な4WD機構を使っていた。それは変速機から後輪に伸びるプロペラシャフトの前に多板クラッチを仕込んだもの。普段はクラッチを離して2WD。直進のときはクラッチをつないで4WD。回転差が出たらクラッチを滑らせて吸収する。これだと必要なときだけのチョットだけ4駆である。だがアウディだけ設計変更できないからA1やA3はこの方式になった。またランボルギーニの兄弟車として設計した先代R8では、彼らが得意だった前後をビスカスカップリングで結ぶ方式を採用していた。このように、ひとくちにアウディのクワトロと言ってもじつはいろいろあったのだ。

 そして今年また新たな方式が加わった。ディーター・ワイデマン技師が開発した仕掛けは、トルセンもビスカスも使わず、発表されたイラストを見るかぎりは前後を結ぶデフも存在しない。前後が多板クラッチで結ばれるだけ。それじゃあVWと一緒じゃないかと思うだろうが、アウディのそれはリヤにも別の断続装置が仕込まれている。リヤにはデフが存在する(じゃないと走れない)のだが、その歯車仕掛けの一部を空まわりさせる機構が盛り込まれる。

 その目的は燃費。多板クラッチを切って後ろへ向かうプロペラシャフトを回さずに済めば、その摩擦のぶん加速時にトルクが損をしない。しかもVW式だと、地面によって後輪が回されるとき後ろのデフの中身とプロペラシャフトまで回してしまうので、そのぶんが走行抵抗になるが、アウディ式だと回るのはデフ内の一部の歯車だけだから損が少ない。

 ちなみに、この断続機構は電子制御によって稼働し、FFじゃなくて4WDのほうがよさそうなシークエンスを察知して先読みで変わるように仕立てられている。VWベースのA3クワトロあたりは、FFから4WDに切り替わるまでに一瞬の遅れがあって、「後輪の駆動が助けに入る」感じだったが、こっちはドライバーがそうあってほしいときは既に4WDになっているわけだ。つまりこれは仕掛け的にはチョットだけ4駆のようで、実際の走行時はチョットだけ4駆ではないのだ。

 A4オールロードで日本に初見参したこの新機構についてアウディは52kgmまでのトルクしか流せないとしているから、大トルクのRS系高性能モデルには従来のトルセン式を使うのだろう。

 じつは中身はいろいろあるアウディのクワトロ。さらにそのバリエーションが広がったわけだ。

PROFILE
自動車ジャーナリスト
沢村慎太朗
●研ぎ澄まされた感性と鋭い観察力、さらに徹底的なメカニズム分析によりクルマを論理的に、そしてときに叙情的に語る自動車ジャーナリスト。

From Germany
ドイツ本国取材で見かけたアウディたち

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