車種別仕様・中古車評価・まとめ
更新日:2018.11.30 / 掲載日:2015.12.24
【気になる中古車試乗判定】フォルクスワーゲン シロッコR
2010 VOLKSWAGEN SCIROCCO R
GooWORLDの掲載物件のなかでも、とくに人気の高い中古車をモータージャーナリストとともに試乗チェック!注目モデルは本当にお買い得なのか!?リアルなレポートをお届けしたいと思います!
文●森野恭行、竹岡圭、GooWORLD 写真●GooWORLD
今月の中古車は フォルクスワーゲン シロッコR
同世代のゴルフを基本に専用品と高級素材を投入
同世代のゴルフを基本に専用品と高級素材を投入
インパネの基本レイアウトはゴルフと共通するが、シートはかなり低めにセットされている。当然のように目線も低く、自然とスポーツカーを意識させる。高い内装の質感を特徴とし、専用メータークラスター、専用レザーステアリング、アルミデコラティブパネルなどの充実のアイテムを備える。
言い訳なしの4シーター 荷室の広さも十分以上
言い訳なしの4シーター 荷室の広さも十分以上
ロングルーフのクーペデザインが高い実用性の秘密。長身の人だと頭上高が不足気味になるが、170cmクラスなら後席でも快適に座ることができるのだから、実力は「フル4シーター」と言っていい。しかも、ラゲッジも実用的。深さがポイントで、定員乗車で310L、2人乗車で1005Lの容量を誇る。
ベース車とは別モノの高性能エンジンを搭載
ベース車とは別モノの高性能エンジンを搭載
「R」の心臓は専用ユニット。高回転・高出力に重きを置いたチューンで、256馬力/33.7kg mの高性能と、興奮を誘う中高回転域の刺激あるサウンドを特徴とする。200馬力のノーマル2.0TSIとはモノが違うのだ。6速DSGのキレもよく、スポーツ走行で本領を発揮するチューンとなっている。
キレ味鋭い走りを支える高度な制御と高性能タイヤ
キレ味鋭い走りを支える高度な制御と高性能タイヤ
コーナーの立ち上がりでスロットルを積極的に開けられるのは、電制デフロックのXDSがトラクションを稼ぐから。そして足は18インチ高性能タイヤとDCC(アクティブシャシーコントロール)のコンビ。「コンフォート」では快適な乗り心地、「スポーツ」ではキレ味鋭いハンドリングを提供する。
フォルクスワーゲン シロッコR 試乗判定レビュー
ベストセラーから派生した辛口のスポーツモデル
編集部●中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回はちょっとレアなクルマが登場します。VW シロッコRの2010年式、走行距離は6万6000kmです。
森野●シロッコと聞いていたけど、シロッコRなのか。これは試乗が楽しみだな!
竹岡●シロッコはゴルフをベースにしたクーペですよね。発表されたときは、「おしゃれだな、いいな」って思ったけど、「R」はさらにワイド感が強調されてカッコイイのよ。
編集部●ええとですね、今回の3代目シロッコが日本で登場したのは2009年5月で、20年ぶりの復活ということも話題になりました。その頃はというと、日本ではゴルフが5月に第6世代の「VI」にフルモデルチェンジしたタイミングで、シロッコRはそこから半年後の2010年1月発表でした。
森野●兄弟車のゴルフRと同時のお披露目だったね。
竹岡●同時にデビューしたゴルフRが「VI」ベースだったのに対して、シロッコRは、「V」世代なの。なんでかっていうと、本国ではゴルフよりもシロッコの方がタイミング的に早くデビューするから。
森野●「VI」は実質的には「V」のマイナーチェンジみたいなものだし。
竹岡●「VI」は「V」よりも生産しやすいように、いろいろと合理化したっていう話もあるから、たしかにそこはあまりマイナスに考えなくていいかもしれない。
編集部●シロッコRの「R」というのは、当時のフォルクスワーゲンが進めていたブランド名で、「Racing」の頭文字と言われています。2001年のニュービートルRSiから始まって、ゴルフR32、パサートR36などが作られていきました。現行型でもゴルフRが存在しますし、スポーティグレードの「Rライン」も人気となっています。
森野●シロッコRの新車当時の価格は515万円。ベースモデルに比べてかなり高価だったこともあって、販売面ではあまり成功したとは言えなかったな。
竹岡●同時に登場したゴルフRが同じエンジンを載っけてて、4WDで5ドアなのにほぼ同価格だったからね。ユーザーサイドとしては、「FFなのになんだかシロッコ割高じゃん!」って思ったのかも。
編集部●ベース車のシロッコは、1.4Lターボの「TSI」が392万円で、2Lターボの「2.0TSI」が447万円でしたから、たしかに割高感はありますね。とにかく、日本ではちょっとマニアックな存在となってしまったシロッコRは、2012年にレカロ製フルバケットシートと19インチホイールを装備した「Rレカロ」を100台限定で販売したほかは、ほとんど仕様変更を受けることなく2014年にフェードアウトしてしまいました。
森野●「2.0TSI」と「R」とでは、エンジンが別モノなんだけどね。
竹岡●500万円オーバーの輸入車としては、ちょっと存在が地味だったかな。新車当時テストしたときも「何だあのクルマは?」って視線が多かったなぁ(笑)
編集部●では、そろそろおふたりには試乗の方をお願い致します。
シロッコRにしかない独自の世界が存在する
編集部●どうやら試乗は終わったようなのですが、いつになくふたりとも笑顔です。これは期待できますよ。
竹岡●シロッコRいいクルマ!
森野●新車のテストで湯河原の椿ラインを走ったときを思い出したよ。乗り手を本気にさせてくれる本格派スポーツだね。
編集部●いい音してましたね。ここから聴いていても、おふたりがノリノリなのがわかりました(笑)
森野●ゴルフRは同じエンジンでも万人向けで、それに対してシロッコRは走りにキレがある。重心の低さやタイヤの太さも、すべてがコーナリング性能に向かっているんだ。
竹岡●車重もゴルフRより120kgくらい軽いしね。このクルマ、スタートダッシュもかなりいい。A45 AMGと互角ぐらいだったモン。
編集部●オーナーによれば、走行1万kmくらいの中古車を手に入れて、それから約5年間で5万6000kmをほぼノートラブル。一度DSGが調子悪くなった際も、プログラム書き換えでよくなったということです。
森野●DSGの信頼性もOKと。
竹岡●このクルマはとにかくデザインと音がいい!エンジンかけたときの音が普通のシロッコと全然違う。
森野●中古車はいくらで買えるの?
編集部●280万円から400万円なのですが、それよりも物件数が少なくて、ゴルフRの半分くらいです。
竹岡●ちょっと高いけど、コンフォートモードなら乗り心地もいいし、普段からしっかり使えそう。
森野●VW版「羊の皮をかぶった狼」。このクルマならではのよさがあるよ。
シロッコR レビュー評価
人気自動車ジャーナリスト(と編集スタッフ)によるフォルクスワーゲン シロッコR レビュー評価をまとめます。
※各項目に対して10点満点評価。
自動車ジャーナリスト 森野 恭行のコメント
ピュアスポーツの敷居は高いが、実用性も兼ね備えるシロッコRなら、日常生活も十分にこなせる。「本格スポーツ」と呼べる速さ、操る楽しさが光っている!
自動車ジャーナリスト 森野 恭行
●関東版創刊時より健筆をふるう自動車ジャーナリスト。スポーツカーに目がなく、タイプ964のポルシェ911を新車から23年所有している。
ポジショニング 8点
ゴルフとの関係は深く、久々に復活した3代目のシロッコも、ゴルフVを母体として開発された。歴代モデルと同様に純粋なスポーツカーではなく、スペシャルティクーペの位置づけとなる。しかし、「R」は別格の存在。2Lでは最速クラスの1台で、ニュルブルクリンク24時間でクラス優勝を遂げるなど、速さと強さをサーキットでも実証している。
装備 9点
新車価格500万円を越えるモデルだけに、Cセグメントとしては豪華な装備内容を持つ。レザー張りスポーツシートは、運転席に8ウェイパワー調整機構を採用。さらに、キセノンヘッドライトやHDDナビ、オプティカルパーキングシステムまでが標準なのだから、満足度は高い。気になるのは、テールゲートのロック解除が車外ではできないことぐらい。
走り 9点
「万能」を求める人には4駆のゴルフRが向いている。だが、キレの鋭さや刺激性を望む人には、FFのシロッコRを強力にプッシュしたい。鋭い加速は120kg軽い車重が要因。「ビシッ」と決まったコーナリングのカギは、軽さと低重心に加えて、ひとサイズ太いタイヤが握っている。6800回転までエンジンをブンまわし、峠を攻める行為は「快感」の一語。
自動車ジャーナリスト 竹岡 圭のコメント
シロッコRは、この顔付きがいいですよね! ワイドなスタンスもカッコイイ。普段は快適な移動手段なのに、踏めば本格スポーツカーというのも素敵です。
自動車ジャーナリスト 竹岡 圭
●人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2015-2016日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
ポジショニング 8点
ゴルフVベースの2ドアFFスポーツカー。しかもほぼ同時期に発売されたゴルフVIベースのゴルフRとほぼ同価格ということで、なかなか手を出しにくい存在だったのは確か。いわゆるツウが乗るニッチな存在だったのは否めないところ。スタイリングも独特なので賛否両論。好き嫌いがハッキリ分かれるモデルでありました。でもハマルひとにはハマル1台。
装備 10点
ゴルフのクーペというだけのことはあり、後部座席も中に入ってしまえば十分広いし、ラゲッジも深さ奥行共に十分。装備はゴルフのフラッグシップ・ゴルフRと同等なので、内容も質感も文句ナシの豪華さ。バケットタイプのレザーシートも、パワーシートなので、大体の体格のひとはOK。難点はドアが長いので、狭いところで乗り降りしにくいことくらい。
走り 10点
FFということで、AWDのゴルフRに比べて約120kg軽いので、スタートダッシュからしてピカイチ。その後のパワフルなトルク感、加速感、6速DSGのダイレクト感も言うことナシ。FFらしからぬハンドリングで、ヒラヒラと走る様は本物のスポーツカー。DCCが装着されているので、コンフォートを選択すれば、街中での乗り心地も許せるレベルです。
GooWORLD編集部
こういったクルマはVWからだけでなく、今後なかなか出てこないでしょう。興味があるなら早めに決断して良質車を手に入れるべき。現状ならまだ選べる状況です。
ポジショニング 8点
このクルマを選べるひとは、かなりクルマ好きとしてピュアだと思います。イタリア製クーペのようなわかりやすい流麗さもなく、ベースとなったシロッコよりだいぶ高価。つまり、見せびらかすためのクルマではないということ。それでも、高いユーティリティとFFスポーツとして非常に高いレベルに到達しているキャラクターは唯一無二。お好きならぜひ!
装備 9点
コックピットはいまのレベルで見ても十分クオリティが高くて、HDDナビやパワーシートなど装備もハイレベル。パーソナルな高級車としても通用するほどです。深さがあって実用的なラゲッジルームを備えながら、後席についても、十二分な空間を両立させたパッケージ性能は、さすがVWと思わせてくれます。ただ、重くて長いドアはマイナス要素かな。
走り 10点
シロッコRの走りの世界は、日常域では快適さを維持しながら、ハイスピード域では高いパフォーマンスを披露するというもの。まさに「ジキルとハイド」ですね。登場から5年経ったいまでも、その性能は十分以上に現役。中古車は台数こそ少ないものの、走行距離もそれほど多くない良質車が見受けられるのは好印象。メンテナンス記録は要チェックです。
フォルクスワーゲン シロッコR DETAIL CHECK
2010年式 フォルクスワーゲン シロッコR(6速AT・DSG)
全長×全幅×全高 | 4255×1820×1420mm |
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ホイールベース | 2575mm |
車両重量 | 1410kg |
エンジン | 直4DOHCターボ |
総排気量 | 1984cc |
最高出力 | 256ps/6000rpm |
最大トルク | 33.7kg m/2400-5200rpm |
サスペンション前/後 | ストラット/4リンク |
ブレーキ前/後 | Vディスク/ディスク |
中古車参考価格帯
280万円~400万円(2010年~2013年 ※Rのみ) |
モデル主要変遷
2009.05 | シロッコを発売開始 |
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2009.09 | 一部改良 |
2010.01 | 「2.0TSI」を追加 |
2010.02 | シロッコRを追加 ←今回の中古車 |
2010.09 | 一部改良 |
2011.08 | 「Rライン」を追加 |
2012.02 | 特別仕様車「Rレカロ」発売 |
2013.04 | 特別仕様車「Rライン ディナミッシュ」 |
2013.05 | 「R」の価格を改定 |