車種別仕様・中古車評価・まとめ
更新日:2018.11.08 / 掲載日:2015.06.25
【徹底紹介】ポルシェ ボクスター
ポルシェファンも納得のオープンミッドスポーツ
911の下に位置するエントリー・ポルシェ。最初の例は914で、次のトライは75年登場の924だった。この924は、のちに944、968へと発展して一定の成功を収めたが、最後までつきまとったのは・・・ポルシェとしての純血性。
スポーツカーとしての完成度は抜群だったが、直列4気筒をフロントに積むモデルを「真のポルシェ」と認めない頑固なファンも少なからず存在した。また、設計やパーツの共用化の面でも、FRスポーツの生産は合理的戦略とは言えなかった。
そうした歴史を知れば、新世代のエントリー・ポルシェとして企画されたボクスターが、なぜボクサーユニットをミッドに積むオープン2シーターになったのかがおのずとわかる。911と基本を共有する水冷ボクサーを採用することは、ポルシェの純血性をアピールするだけでなく、設計や生産の合理化の面でも有利に働く。それでいて、駆動方式はMR(ミッドシップ・リヤドライブ)、ボディはオープン2シーターなのだから、RR&4WDの構成で、2+2を基本とする911との明確な差別化も図れるというわけだ。
かくしてボクスターは、これまでにない魅力を持つポルシェのピュアスポーツとして、多くのファンに愛されるモデルとなった。もはやなくてはならぬ存在で、2012年投入の981型は第3世代にあたる。初代986型から987型への世代交代はプラットフォームを流用してのものだったが、そこから981型への進化は土台からの一新だ。
最大の見どころは、軽量化と高剛性化を両立するために約46%の部位にアルミを使った新開発のボディシェルの採用。加えて、ホイールベース(+60mm)や前後トレッドの拡大、タイヤ&ホイールの大径化も見逃せない点で、スポーツカーとしての資質を根本から引き上げている。
そしてスタイル。プロポーションを整え、デザインをより研ぎ澄ますことでスポーツカーらしい躍動感や精悍なイメージを大きく進化させた。
文●森野恭行 写真●GooWORLD
お問い合わせ●ポルシェ カスタマーケアセンター TEL:0120-846-911
Detail
ポルシェ ボクスターS(6速MT)
全長×全幅×全高 | 4380×1800×1280mm |
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ホイールベース | 2475mm |
トレッド前/後 | 1526/1540mm |
エンジン | 水平対向6DOHC |
総排気量 | 3436cc |
最高出力 | 315ps/6700rpm |
最大トルク | 36.7kg m/4500-5800rpm |
サスペンション前/後 | ストラット/ストラット |
ブレーキ前後 | Vディスク |
タイヤサイズ前 | 235/40ZR19 |
タイヤサイズ後 | 265/40ZR19 |
新車価格
ボクスター(6速MT/7速AT・PDK) | 634万円/687万円 |
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ボクスターS(6速MT/7速AT・PDK) | 790万円/843万円 |
ボクスターGTS(6速MT/7速AT・PDK) | 902万円/966万円 |
ボクスタースパイダー(6速MT) | 1012万円 |
モデル主要変遷
2012.06 | ボクスター/ボクスターSの受注を開始 新型ボクスターの受注をスタート。ホイールベースの延長とワイドトレッド化を図った。標準車と「S」の2モデル構成。 |
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2014.04 | ボクスターGTSの受注を開始 ボクスターSの3.4Lエンジンをベースに、15馬力出力アップを果たした最上級モデル。前後デザインも専用となる。 |
2015.04 | ボクスタースパイダーの受注を開始 手動式ルーフ、MT仕様のみで、最高時速290kmを誇る生粋のスポーツカー「ボクスター スパイダー」が登場する。 |
質感が大幅に向上したことでプレミアム感を表現
スポーツカーの世界に浸れるのがボクスターのコックピット。低く構えたドラポジ、キャビンの適度な囲まれ感、そして最適な位置にレイアウトされたステアリングやペダル類が、自然とドライビングへの集中を高めてくれる。そこに、背後から伝わるボクサーサウンドが加われば、心の昂ぶりはもう止められないだろう。
ドイツ製ロードスターらしくソフトトップの耐候性や遮音性は優秀だが、とことんボクスターの気持ちよさを味わいたいなら、トップは積極的に開けるべき。フロントスクリーンやリヤのウインドーディフレクターの形状は完璧と言ってよく、高めの速度域まで心地よいオープンエアモータリングを楽しませてくれる。
で、3代目の981型となり、大きく進化したのは質感。素材の質、各部の建て付けともレベルの向上が図られ、ポルシェに相応しいプレミアム感を表現している。また、カラー液晶ディスプレイを使うオンボードコンピューターや電動パーキングブレーキも自慢で、コックピットのモダン化を確実に進めている。また、レッグルームやチルト&テレスコピックステアの調整範囲が拡大されたこともうれしい改良点と言える。
気になるのは、ホイールベースの延長などに伴って、立ち上がり位置が約100mm前方に移動したフロントスクリーンだが、視界に与える影響はごく小さなもの。むしろ左右フェンダーの峰が強調された印象で、ポルシェらしいムードが高まった。
レブカウンターを中央に置く3眼メーターがボクスターの伝統。
販売の主力はPDKだが、当然のように6速MTも選べる。
電動トップの開閉スイッチをセンターに配置。速度50km/hまでなら操作が可能だ。
ラゲッジ容量は前が150L、後ろが130L。意外なほどの積載能力を持つ。
格納式スポイラーは高速走行時のリフトを低減。
LEDを使うリヤコンビランプもシャープな造形。
エキパイはセンター配置。「S」と「GTS」は2本出しだ。
タイヤ&ホイールは18~20インチの設定。撮影車の「S」はオプションの20インチを装着(標準は19インチ)。
俊敏なレスポンスを実現した水平対向6気筒ユニット
ポルシェのピュアスポーツを象徴するのはボクサーエンジン。鋭敏なレスポンスと鋭い吹け上がりは、回転バランスに優れた水平対向6気筒ならではで、刺激的サウンドもスポーツカーの心臓に相応しいものだ。組み合わせられるミッションは、6速MTと7速PDK。いわゆるDCTのPDKは987後期型で導入された。
987後期型で導入された第2世代の水冷ボクサーは、DFI(直噴ガソリン)を採用する高性能&高効率エンジン。「素」のユニットは2.9Lから2.7Lの小排気量化を図りつつパワーを向上させた。
前後ストラット式のサスも981型で設計を一新。軽量化と高剛性化を両立させた。また、電動式に変わったパワステも注目点。ポルシェらしい自然なフィールは特筆に値する。
991型911と同様に、アルミを積極的に導入して軽量化を図ったのが進化のポイント。ボディ剛性や安全性を強化しつつ、981型ボクスターは約35kgの減量に成功した。
引き上げられた実力は基本モデルでも味わえる
オープンエアの爽快感は言葉では言い表せないほどのもの。わずか9秒ほどで開閉できる電動トップを持つボクスターなら、いつでも気の向くままにオープン走行を楽しむことができる。
ホイールベースおよびトレッドの拡大と、ボディの軽量&高剛性化がもたらしたものは・・・走りのバランス点のさらなる向上だ。乗ってすぐにわかるのは、ゴツつき感やロードノイズの軽減により乗り心地の快適度が大きく向上したことだが、操縦安定性の能力も987型のレベルから確実に一段引き上げられている。
シャープな回頭性や、理想の前後バランスを保つコーナリング感覚はよく調教されたミッドシップスポーツでしか味わえない快感で、流すペースの走りでも平凡なスポーツカーとの才能の違いを教えてくれる。でも、ポルシェの本領はその先。
飛ばしてみれば、エンジンの回転フィールやサウンド、ステアリングのフィールや応答性、ブレーキの効きやペダルタッチ・・・すべてが一流であることがわかる。981型には3.4Lを積む「GTS」(330馬力)や「S」(315馬力)も用意されるが、265馬力の2.7Lモデルでも「基本」は変わらない。「素」のモデルでも「基本」で手を抜かないのが、ポルシェの流儀であり伝統だ。
それはモデル体系にもあてはまる。ボクスターはけっして911カブリオレの廉価版ではない。ミッドシップスポーツならではの個性と独自の走りの魅力を持つからこそ、ファンに深く愛され続けているのだ。
上級グレードの意義はあるがベースモデルでも十分に魅力的
速さと刺激性を求めるひとに向くのは、ハイチューン版3.4Lを積む「GTS」。パワー感だけでなく、サウンドやフットワークも「S」以上に刺激的だ。でも、速さとハンドリングにおいては、優位にあるのはより高剛性なクローズドボディを持つケイマンなのだから、ボクスターはフィーリング重視で選ぶのがお薦め。となると、パワーフィールやサウンドだけでなく、フットワークも軽快な「素」の2.7Lモデルはじつに魅力的な存在。電制サスのPASMや19&20インチタイヤなど、高価なオプションを追加しなくても、十分に楽しめる仕様となっている。
中古車市場データ
中古車市場データ
登場から3年が経過したが、Goo-netに登録される中古車は30台前後と少なめ。500万円台の車両も存在するが、その数は非常に少ない。全体の相場はおよそ650万円ほどである。