新車試乗レポート
更新日:2019.05.23 / 掲載日:2017.07.27

すべてを白紙から設計! 生まれ変わったカムリは、世界に誇るべき良質なミッドサイズセダンだ

文●ユニット・コンパス 写真●川崎泰輝

 ああ、これは実力の高いクルマだ。カムリを乗り出してすぐに感じたのは、停止状態からの動き出しが自然で操作への応答に遅れがないこと、そしてステアリングから伝わってくる滑らかな感触だった。これは、ただ単にパワーがあるとか、ハンドルが軽いとかいう大雑把な話ではなく、もっと繊細な、それでいて確実に感じられるフィーリングのよさである。駐車場のような速度域の低い場所でクルマを動かした際にいい印象を受けるクルマというのは、えてしてその後の試乗でもいい印象を受けることが多い。何故ならば、質感の高い動きというのは、開発側が意図し、仕上げるところまで突き詰めなければ決して生まれないものだからだ。

トヨタ カムリ G レザーパッケージ

 1980年に初代が誕生したカムリは、2代目以降、主に北米市場をメインとしたグローバルモデルへと成長。前輪駆動によるゆとりのある室内を備えた上質なセダンとして、幅広いユーザーに受け入れられてきた。
 とくに北米市場での人気は高く、15年間ベストセラーとして君臨、いまでも月販約3万5000台もの台数を販売し、総生産台数1800万台と貢献している。そんなカムリは、まさにトヨタにとっての戦略モデルであり、フルモデルチェンジした新型の開発にあたっても特別な役割が与えられた。それは、すべての部品をゼロベースで設計し直すことで、今後のトヨタにおけるミドル級車種のパイロット版となることだ。新型カムリにはトヨタの新プラットフォームであるTNGAが採用されているのはよく知られているが、アンダーボディだけでなく、足まわりやパワートレイン、電気系なども新世代のものを開発し採用している。つまり、新型カムリには莫大な開発費が投入されているのだが、それは、カムリが北米市場におけるメイン車種であるのと同時に、ここで培われた技術を今後のトヨタ車へと水平展開することにより多額のコストをケアするという考え方に基づいている。

  • 試乗車のボディカラーはエモーショナルレッド(全7色)。

美しくなったプロポーションと一新されたパッケージング

 改めて新型カムリのプロファイルを示すと、スリーサイズは4885mm×1840mm×1445mmで車重は1570kg(グレード:G)、搭載されるエンジンは2.5L直4エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド(THSII)で、システム最高出力は211馬力。2011年から2017年まで生産されていた先代モデルに比べると、全長全幅でわずかに大型化した一方で屋根が低くなり、車重は「G」と先代「ハイブリッドGパッケージ」とで比較し30kg増。システム最高出力は、数字的にはわずか6馬力ほどの強化となるが、燃焼効率41%を達成したという新型パワートレーンによって環境性能は大幅に向上し、JC08モード走行燃費は、従来型25.4km/Lに対して「X」では33.4km/L、装備の充実した「Gレザーパッケージ」および「G」でも28.4km/Lと進化している。一方、室内のパッケージングについては、室内長および室内高がそれぞれ小さくなった代わりに、ラゲッジ容量が524Lと従来比で84Lも拡大している。これは、HVバッテリーの搭載位置をトランクから後席座面下へと移動したことが大きい。
 装備関係では、「トヨタ セーフティ センス P」を全車に標準装備、コックピットにはカラーヘッドアップディスプレイや7インチのマルチインフォメーションディスプレイを搭載、電動パーキングブレーキ(ブレーキホールド機能付き)やエンジンを停止して走行可能な「EVドライブモード」を備えるなど、先進化、電動化が進んだ。

 カムリのコックピットに乗り込むと、ソフトパッドが多用されたしっとりとした上質さを感じさせるインテリアが強い印象を与える。形状が立体的で仕上げにも新鮮味があるウッド調パネルなど、落ち着きはあるのに、退屈ではないところに好感が持てる。ドアを閉めた際の空間のいい意味での密閉感は、荷室とキャビンとがしっかりとセパレートされたセダンならでは。ミニバンが、空間が広々としている代わりにざわつきがあるロビーだとすると、カムリの室内はまるでプライベートルーム。この程よい密室感は、ミニバン的なカジュアルさに慣れた世代には、逆に新鮮に感じるかもしれない。
 

セダンに期待される上質さを高次元で実現

 走り出しの印象が滑らかで上質だというのはすでに述べたが、路上に出てその印象はさらに強くなる。乗り心地がよく、段差や荒れた路面を通過した際の衝撃を上手にいなしているのだ。同じTNGAを採用するプリウスも乗り心地のいいクルマだが、比べてもカムリは一枚上手で、静粛性についてはカムリの方が明らかに高い。とくに地面から伝わる騒音や振動については上手に抑えられていて、ライバルに比べてもトップレベルと言えるだろう。その印象を後押しするのがハイブリットによるパワーユニットで、エンジンがかからないような低速域での走りは非常に快適だ。
 今回の試乗は街中が中心だったが、ハイペースでのコーナリングやそこからのブレーキングを試したところ、重心の低さとそこからくる車体バランスのよさが確認できた。ハンドル操作に対する応答性もよく、旋回姿勢へのつながりがスムーズであるため、安心感してドライビングが楽しめる。高剛性ボディと白紙から設計したというサスペンションの効果は絶大だ。
 もうひとつ感心したのが運転環境。新型カムリではドライバーの座る位置を低く、さらに後方へ下げているが、それでも前方およびコーナー出口を見るような斜め方向の視界が自然でとても運転しやすいのだ。これはピラーを細くするといったわかりやすい努力のほか、エアコンユニットなどを小型化することでダッシュボード全体を小さく、低くできたことが大きく貢献している。「すべてを一新した」というエンジニアの言葉どおりあらゆる要素を進化させ、まさに生まれ変わったカムリは、世界に誇るべき良質なミッドサイズセダンだ。

【トヨタ カムリ G レザーパッケージ(CVT)】
全長         4885mm
全幅         1840mm
全高         1445mm
ホイールベース    2825mm
重量         1600kg
エンジン       直列4気筒DOHC+モーター
総排気量       2487cc
エンジン最高出力   178ps/5700rpm
エンジン最大トルク   22.5kgm/3600-5200rpm
モーター最高出力   120ps
モーター最大トルク  20.6kgm
サスペンション前/後 ストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ前/後    Vディスク/ディスク
タイヤ前後      235/45R18
販売価格       329万4000円~419万5800円(全グレード)

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グーネットマガジン編集部

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