車の歴史
更新日:2021.07.27 / 掲載日:2021.07.27

昭和・平成を彩ったオープンカーの誘惑【VOL.2】古き良きオープンエアスポーツ

 DC-3やフェアレディ、国産オープンスポーツカーの歴史は日産が牽引役となり、他社が追随していった。

はじめにフレームありき

 黎明期の国産車には、意外と多くのオープンカーが存在していた。庶民にはマイカーが高嶺の花だった当時は、富裕層に付加価値の高いオープンカーを売りたいというメーカーの目論見もあったし、まだフレーム付きのモデルが多く、ボディさえ載せ替えれば比較的簡単にオープンカーが作れるという事情もあった。

 310型ブルーバードがベースの日産フェアレディや、商用バンのフレームを使ったダイハツコンパーノスパイダーもそうした成り立ちのモデル。一方、4輪市場に打って出たホンダの看板モデルとなったS500(発表時はS360)は、ハシゴ型の専用フレームを抱えていた。

 それらは国内市場では、決して商業的に成功したとは言えないモデルたちだったが、海外では手ごろな価格や個性で一定の評価を得た。先に2輪車とF1で名を轟かせたホンダのSは凝りまくったDOHCエンジンとともに「時計のように精密」と言われ、同社の世界進出の基礎を固めたし、フェアレディはダットサン(日産)の名を北米で広く知らしめ、続くZの成功への地ならしとなった。

 ただし、のちにカローラを開発するトヨタの長谷川龍雄主査は、パブリカベースのコンセプトカーの好評から市販化された自身の手になるモノコックボディのスポーツ800を「海外では通用しない」と輸出させなかったという。

icon TOYOTA スポーツ800(1965年)

トヨタ流国民車「パブリカ」のコンポーネンツを使って造られた小型スポーツカー。トヨタが他社に先駆けて研究を進めていた空力ボディや軽量設計で、プアなエンジンパワーを補ってあまりある俊敏な走りを実現。国内ツーリングカーレースでも活躍した。軽量の屋根は6個のネジで固定され、簡単に取り外しが可能。リヤ部が残るタルガ風オープンエアを楽しめた。

トヨタスポーツ800(1965年式)主要諸元 ○全長×全幅×全高:3580mm×1465mm×1175mm ○ホイールベース:2000mm ○車両重量:580kg ○乗車定員:2名 ○エンジン(2U型):水平対向2気筒790ccツインキャブ ○最高出力:45PS/5400rpm ○最大トルク:6.8kg・m/3800rpm ○最高速度:155km/h ○0~400m加速(2名乗車):18.4秒 ○燃料消費率(平坦舗装路):31.0km/L ○最小回転半径:4.3m ○燃料タンク容量:30L ○トランスミッション:前進4段、後進1段 ○サスペンション(前/後):ダブルウィッシュボーン式独立/半楕円非対称板ばね ○タイヤ:6.00-12 4PR ○価格(東京地区):59.5万円 

icon DATSUN フェアレディSP310(1963年)

本格ハイウェイ時代を意識し、高速安定性を重視して開発されたフェアレディの第二世代。当初は1.5Lエンジンが積まれたが、1.6L、2.0Lへとパワーアップ。フェアレディ2000は国産初の最高速200km/hモデルとなる。初期型では横向きに座るリヤシートを備えた3人乗りだったが、すぐに2シーターとなった。

icon DATSUN フェアレデー1200(1960年)

DC-3に変わり、本格的スポーツカーらしい流線型ボディとなった新時代のダットサンスポーツには、新たに「フェアレデー」のペットネームが与えられた。

icon HONDA S500/S600/S800(1964年)

スーパー軽トラックのT360とともに、ホンダ四輪進出のトップランナーとして発売された小型オープンスポーツ。高性能バイク譲りの超高回転型のDOHCエンジンは、音も走りも自動車ファンを虜にした。折りたたみ幌は、国内に良質なものがなく、英国から輸入されたとも。1965年にはクローズドボディのハッチバッククーペも追加された。

icon CHEVROLET コルベット(1953年)

戦後に起こった米国でのスポーツカーブームを牽引したC1型初代コルベット。米国でも人気となった英国MGを意識し、小型軽量の2シーターオープンスポーツとして誕生した。初期モデルは直6OHV+2速ATのみだったが、平凡な性能に不満を持つユーザーが多く、後期型ではアメ車らしくV8エンジンが主力に変わった。

icon NISSAN 70型フェートン

初の日産ブランドとなった70型は1937年に誕生。2座の補助席がある7人乗りのセダンのほか、主に軍用として幌を持つフェートンもラインナップした。

いろいろある!オープンカーの呼称

フェートン

馬車の時代から使われてきた呼称で「開閉式の幌をもつ2列シート車」に誓われた。T型フォードもこのタイプ。1950年代以降ほぼ使われなくなった。

コンバーチブル

カブリオレと同じく、屋根を閉めれば4人乗りセダンのように使えるオープンカーの呼称。主にアメリカ車、イギリス車に使われる。

スパイダー

ロードスターと意味は近く、2人乗りのスポーツタイプのオープンカーに使われる。アルファロメオやアバルトなど主にイタリア車に多く見られる。

ロードスター

通常はオープン専用に設計されたオープンタイプのスポーツカーに使われる呼称。セダンなどの屋根を取ったタイプではなく、始めから屋根なしで設計されるため、剛性面などでも優利。

カブリオレ

セダンと同等のユーティリティや快適性を持つ4人乗りのオープンカー。コンバーチブルとほとんど同じ意味だが、カブリオレ(カブリオ)は主にフランス車やドイツ車で使われる。

タルガトップ

天井部のみが外れ、リヤウインドウ回りなどは存在するセミオープンタイプ。タルガはポルシェが使う固有名詞だが、Tバールーフなどを含め、タルガトップとしてくくられることも多い。

  • PRINCE スカイラインスポーツ(1961年)
    初代スカイラインのシャシーにミケロッティが手がけたクーペボディを換装した超高級スポーツ。写真はそのコンバーチブルモデル。

  • MG MGA(1956年)
    とくに米国で大ヒット、軽量オープンスポーツの歴史を切り拓いた記念碑的モデル。1.6LのDOHCエンジン搭載車もラインナップした。

  • ALFAROMEO スパイダー
    初代は1966年に登場。イタリアン軽量オープンスポーツ伝統の一台。写真はブレラをベースに開発された2006年モデル。現在は日本でのスパイダー販売はない。

  • PORSCHE 911タルガ
    側面とリヤ部が残されたタルガトップはフルオープンに比べて堅牢で安全性も高い。ちなみにタルガはイタリア語で盾を意味する。写真は現行のポルシェ911タルガ4。

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