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更新日:2021.07.20 / 掲載日:2021.07.17

【GR 86・スバル BRZ】似ているようでかなり違う。プロトタイプ試乗で判明した事実とは

文●岡本幸一郎 写真●トヨタ、スバル

 新型GR86とBRZのプロトタイプの試乗会が、千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイで実施された。

新型は違わないようでけっこう違う

新型BRZ(プロトタイプ)、新型86(プロトタイプ)

新型BRZ(プロトタイプ)、新型86(プロトタイプ)

 新旧では基本フォルムを踏襲しながらも外観デザインが全面的に変わっており、見てのとおりGR86とBRZではフロントの表情がだいぶ異なる。リアまわりの形状変更により全長が25mm長くなるとともに、全高が10mm(ルーフアンテナ含)低められたことで、ボディサイズは4265mm×1775mm×1310mmとなった。

 低いシートに収まると、これまでよりもホールド感が増してガタつきも解消していることがわかる。さらにはダッシュの形状変更により囲まれ感も増すとともに、全体的に質感が大幅に高められていること直感する。デジタルを駆使した先進的なメーターにはより多くの情報が表示できるようになったのも新しい。コクピットの雰囲気は大きく変わっている。ただし、レバー式のサイドブレーキがちゃんと残されていたのにはホッとした(笑)。

 ボクサーエンジンは、初代は86.0mm×86.0mmとスクエアだったボア×ストロークが94.0mm×86.0mmとなり、排気量は2.4リッターに拡大。最高出力は235ps/7000rpm、最大トルクは250Nm/3700rpm(※いずれも開発目標値)を発生する。初代はMTとATでスペックが異なっていたところ新型では同一となり、MT同士では28ps/38Nm、AT同士では35ps/45Nmの向上となる。

 プラットフォームは初代のキャリーオーバーとなるが、内容的にはインナーフレーム構造の採用をはじめ別物といえるほど変わっている。シャシーまわりについても、初代の後期型では86もBRZも足まわりが近い仕様となっており、スプリング等は共通でダンパーの減衰特性ぐらいの差だったのに対し、新型はかなり細かく作り分けられている。

新型86(プロトタイプ)

新型BRZ(プロトタイプ)

GR86とBRZで走りが違う

新型BRZ(プロトタイプ)、新型86(プロトタイプ)

新型BRZ(プロトタイプ)、新型86(プロトタイプ)

 いざドライブすると、いずれも初代に比べて大幅に洗練されていたことはもとより、GR86とBRZでは走りの性格がだいぶ違っていたことに驚いた。思えば初代が出た当初は、「アジリティ(=俊敏性)の86とスタビリティのBRZ」というニュアンスでよく表現されていたとおり対照的な走り味で、しかもどちらも未完成な印象がありあまり褒められたものではなかった。

 ところが、その後に毎年のように改良を繰り返すうちにお互いが歩み寄り、2017年のマイナーチェンジで後期型になった際に、かなり似通った乗り味になったのも興味深かった。それぞれよいものを目指した結果、近いところに行きついたことが印象的だったものだ。ところが新型車では、再びお互いが異なる「味」を追求したことが、乗り比べるとすぐにわかる。しかも、これまでは同じだったエンジンフィールまでもが最高出力と最大トルクのスペックは共通ながら差別化されていることにも驚いた。

 新しいエンジンは、いずれも初代に比べると全体的に瞬発力が増すとともに、高回転での吹け上がりも伸びやかになったように感じられた点では共通し、その上で、86は車名に新たに「GR」と付くとおり、GRの一員となる。それに合わせて、よりエキサイディングさを訴求する味付けとされている。それはアクセルワークに対する反応もよりゲインが高く、ハンドリングも俊敏で、積極的に挙動を起こしてコントロールしていける。

 対するBRZはリニアなスロットル特性で、足まわりの味付けとあいまってアクセルのオンオフでの挙動も安定している。その上で、操作に対してセオリー通りに素直に反応してくれるので、86とは違ったニュアンスでコントロール性は高い。

 MTのシフトフィールも向上していて、より節度感が高まり操作しやすくなっている。初代では軽すぎると評されることの多かったクラッチペダルの踏力もちょうどよくなった。ATの制御も両車で異なり、BRZは全体的にスムーズであるのに対し、GR86は多少ショックが出てもダイレクト感を優先した味付けとされている。

予想を超える完成度と巧みな差別化

新型BRZ(プロトタイプ)、新型86(プロトタイプ)

新型BRZ(プロトタイプ)、新型86(プロトタイプ)

 このとおり予想を超えるほど初代とは変わっていて、両車とも完成度が高い中で、よりキャラクターの違いがより明確になっていた。スクープ情報を見た限りでは、エンジンがパワーアップして速くなることには違いないが、あまり新旧で変わり映えしないのではと予想していたのだが、ぜんぜんそんなものではなかった。

 現オーナーである人はなおのこと、新型がどのようなクルマなのか気になっていると思うが、予想を超える完成度と巧みな差別化とその作り込みに感心した次第である。トヨタとスバルの開発陣にとっても、おそらく初代ではこれが精一杯という状況が続いていたように思うが、新型では本当はこれがやりたかったということが、そのとおり実現できているように感じられた。より刺激的な走りを楽しめるGR86に対し、BRZには洗練された上質な味わいがある。

 かつてスポーツカーを乗り継いでいた筆者も、初代の登場当初から両車には接する機会に恵まれ、ずっと深く興味を持って接してきた。近年は家庭の事情でスポーツカーは所有できずにいるのだが、もしも手に入れられる状況が整ったら、GR86とBRZの両車とも非常に魅力的なので、どちらを選ぶか本気で迷ってしまいそうだ。発売を心待ちにしている人には、大いに期待して大丈夫だとお伝えしておきたい。

執筆者プロフィール:岡本幸一郎(おかもと こういちろう)

 1968年、富山県生まれ。幼少期に早くもクルマに目覚め、学習院大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの企画制作や自動車専門誌の編集に携わったのち1998年にフリーランスへ。軽自動車から高級輸入車まで幅広くニューモデルの情報を網羅し、近年はWEBメディアを中心に寄稿。ドライビングスクール等のインストラクターも務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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