新車試乗レポート
更新日:2021.05.26 / 掲載日:2021.05.26

【試乗レポート ホンダ 新型ヴェゼル】今度のヴェゼルはみんなが快適!

ホンダ 新型ヴェゼル

ホンダ 新型ヴェゼル

文●大音安弘 写真●ユニット・コンパス

 たった1世代でホンダの看板商品へと成長を遂げたヴェゼルが、8年の時を経てフルモデルチェンジされた。その実車の第一印象は、「ヴェゼル、お前も変わっちまったなぁ」が本音。その意見に、賛同してくれる人もきっといるはずだ。しかし、2世代に渡り開発に携わるMr.ヴェゼルこと、開発責任者の岡部 宏二郎氏は、「ヴェゼルの本質は、何も変わっていない」という。そう変わったのは、ヴェゼルのスピリットではなく、このクルマを取り巻く環境なのだ。

新型ヴェゼル誕生の背景にあったマーケットの変化

新型ヴェゼルはSUVらしい力強さとクーペのようなスタイリッシュさを追求した

新型ヴェゼルのデザインはSUVらしい力強さとクーペのようなスタイリッシュさを追求した

 初代が登場した2013年、既にSUV市場は盛り上がりを見せていたが、BセグメントのSUVは、シティクロスオーバーが中心。ヴェゼルはSUVを意識しながらも、クーペライクなデザインとした新感覚のスペシャルティカーとして送り出された。この狙いは、見事に当たり、コンパクトSUVとして大ヒットを記録した。ただSUV市場の拡大は、小さなSUVたちへの要求を高めることに。その結果、ヴェゼルにも、パーソナルからファミリーや仲間と時間を共有できるモデルへの転身を迫ったのである。つまり、私のヴェゼルからみんなのヴェゼルへと進化することが必然だったのだ。

 皆の期待を一心に受けて生まれた新デザインは、SUVらしい力強さをフロントマスクで表現しながらも、クーペライクなフォルムを継承。しかし、後席の快適性を高めるべく、リヤサイドガラスはフロント同様に大きくしたのが大きな特徴。これが前席主役のパッケージングをアピールする。そのフォルムはボリューミーな印象でもあるが、全長4330mm×全幅1790mmとボディサイズ自体は思ったほど拡大されておらず、Bセグメントカーの特徴である扱いやすさには影響がない様に配慮している。大きく見せることも重要な要素といえ、近年、BセグメントSUVのサイズアップがトレンドとなっており、小ささを重視しつつも、実用的なサイズの最適化が図られている。このバランス感は、世界戦略車でもあるヴェゼルとしては、決して無視できないところなのだ。しかし、ビジュアル的なサイズ感よりも実車は小さくまとめられている点は評価すべきだろう。

  • 新型ヴェゼル

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明るさがあり居心地のいいインテリア。後席の居住性も大きく改善

新型ヴェゼル インテリア

新型ヴェゼル インテリア

 個人的には、より驚かされたのが、インテリアの変化だ。先代は、スポーティとスタイリッシュを前面に打ち出し、やや派手な印象であったが、同時に子供っぽくも映ったのも正直なところだ。しかし、新型では、シックさと上質さを重視した大人な空間に仕上げてきた。先代のようなインパクトはないが、広いガラスエリアとの相乗効果による寛ぎを感じ、ちょっと良いクルマ感も漂う。場の雰囲気でいうならば、リゾートホテルのプールサイドかもしれない。

 くつろげる空間とは、雑音がないこと。だから、ダッシュボードに収まるメーターやディスプレイも主張は少なめ。ただメーターやスイッチなどの質感に拘ったことで、ムードを壊さぬように配慮しているのも好印象だ。またシートの進化も、快適度への貢献は大きい。フラットな座面は乗降がし易いだけでなく、僅かに沈み込むことで、体を優しく支えてくれる。これはリヤシートでも同様。ヴェゼル伝統の座面が持ち上がり、収納スペースとなるチップアップ機構が備わるので、前席ほどの快適さは望んでいなかったが、良い意味で裏切ってくれた。さらに後席ではスペースが拡大され、座面角度も見直されたことで、快適な姿勢が取りやすくなった。ここでもサイドガラスの拡大による視界の良さが大きな価値として表れている。何より先代のような押し込まれ感が無くなったことで前席がより身近なエリアとなっており、乗員同士の繋がりを強めてくれる。

主力の「e:HEV」は後席でも快適さが確保されていて好印象

新型ヴェゼルの主力となるのはハイブリッド車「e:HEV」

新型ヴェゼルの主力となるのはハイブリッド車「e:HEV」

 もちろん、快適な移動空間の実現には走りの質も重要だ。その点も新型ヴェゼルに抜かりはない。既に先代のブラッシュアップから走りの質の追求を続けており、とくに「ヴェゼル ツーリング」開発の知見は、大いに役立ったようだ。その恩恵のひとつとして、ミシュラン製タイヤプライマシー4が、新型車にも受け継がれている。

 主力となるハイブリッド車「e:HEV」は、1.5Lエンジン+2モーターシステムで、モーター最高出力131馬力、モーター最大トルク253Nmを発揮する。高スペックではないが、モーター主体の走りを活かし、力強く安定感ある走りを見せる。素直なハンドリングとしなやかな足まわりのコンビネーションが路面追従性も見せ、嫌な突き上げもない。

 後席も試したが、前席同様の快適性が与えられている点に嬉しくなった。前後席ともに静粛性にも気を配ったようで、先代との走行中の音の差もかなり大きい。メインとなる試乗車は、主力となる「e:HEV」の「Z」グレード。ただFFでなく、4WD仕様であったが、これは当たりであった。この四駆が、新型にとって重要な走りのスパイスとして効いていたからだ。その理由は、積極的に後輪駆動を活用するセッティングであること。安定性と加速感、そして気持ちの良いコーナリングを生み、ちょっとFRぽさも味わえるからだ。ヴェゼルの四駆は、初代より既にスタンバイ式の簡易型ではなく、リアルタイムAWDと呼ぶもの。常に後輪側にトルクを伝達しているので、必要な状況で瞬時に駆動力を伝える。だから、走りの質にも4WDシステムが貢献できるというわけだ。

 それでは、エントリーとなるガソリン車「G」は、どうなのか。こちらも短時間、FF車に試乗したが、全体の完成度は高め。ノンハイブリッドの軽さを活かした軽快な走りが持ち味だ。パワートレインや足まわりも含め、しっかりと作り込まれている。もちろん、静粛性や乗り心地の良さなどは、ハイブリッドに譲る部分もあるが、価格差を考えるとコスパは良いと思う。カスタムベースにも良さそうだ。

大きく変化した新型だが、初代のスピリットは受け継がれている

新型ヴェゼル

新型ヴェゼル

 確かに新型ヴェゼルの見た目は、激変した。しかし、それはヴェゼルの成長の証。しかも、ヴェゼルのある生活の楽しさという提案は、パーソナルから多人数へと拡大されている。これは時間と共に、変化したオーナーたちのライフスタイルもしっかりと追っていたことを意味している。確かに、ちょっと大人になったヴェゼルだが、ワクワクや愉しさといったヴェゼルスピリットはしっかりと受け継がれていると、試乗で確信できた。

 新ヴェゼルも、初代同様に世界に羽ばたく。これからも世界で愛されるヴェゼルであることを願う。その資格は十分あるはずだ。

ホンダ ヴェゼル e:HEV Z(電気式CVT・4WD)

■全長×全幅×全高:4330×1790×1590mm
■ホイールベース:2610mm
■車両重量:1450kg
■エンジン:直4DOHC
■総排気量:1496cc
■エンジン最高出力:106ps/6000-6400rpm
■エンジン最大トルク:13.0kgm/4500-5000rpm
■モーター最高出力:131ps/4000-8000rpm
■モーター最大トルク:25.8kgm/0-3500rpm
■サスペンション前/後:ストラット/ド・ディオン
■ブレーキ前/後:Vディスク/ディスク
■タイヤ前後:225/50R18
■新車価格帯:227万9200円-329万8900円(全グレード)

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