車の歴史
更新日:2021.05.24 / 掲載日:2021.05.22

Zの魂 フェアレディZ年代記 ~北米でブレークした初代~

初代フェアレディZ(S30) ・販売期間:1969~1978年

ベーシック車の北米価格は3596ドル。エキセントリックなスタイルで、瞬く間に人気者となったZ。

綿密な市場調査で生まれたスマッシュヒット

 今も昔も、スポーツカーは実用セダンや商用バンと較べれば売れる商品ではない。フェアレディも初代の1.2Lから’61年にブルーバードベースで1.5LのSP310型となって国内販売も本格化。’65年に1.6LのSP311型へと進化し、’67年には2Lに5速MTを備えて国産車初の200km/hオーバーの最高速を誇るSR311型へと発展するが、フレームを備えたオープンボディは半ば手作りの少量生産車だった。
 正式な開発計画がないままに、日産社内では主に特殊車両を担当する第三設計課で細々とコンセプトが煮詰められていた次期フェアレディの企画を前進させたきっかけは、’66年に日産と合併したプリンス自動車が中心となって開発した、直列6気筒4バルブDOHCの2Lエンジンだった。スカイラインGT-Rにも積まれてレースを席巻する、かのS20型エンジンだ。
 それはワークスレーシングカーのR380用として当初V8で開発が進んでいたが、コストがかさみすぎてお蔵入り寸前だったものを、日産の量産技術を導入することで完成にこぎつけたという。そうして、せっかく実現させた高性能を活かせる商品企画として浮上したのが、かさばる直列6気筒エンジンを長いノーズに収めることができる、スポーツカーのフェアレディの後継車だったのである。
 一方、そのころ片山豊氏は北米日産の社長となり、綿密な市場調査を元に、彼の地で売れる商品の開発を本社に要望していた。モータリゼーション先進国の北米では、ビッグ3と競合する商品では勝負にならない。日産ならではのモデルとして、手ごろな価格で手に入る、スタイリッシュで高性能なスポーツカーが欲しい。新型フェアレディはその願いにも応える企画だったのだ。
 彼は開発陣に「皇国の興廃此の一戦に在り、各員一層奮励努力せよ」を意味する旧海軍の「Z旗」を送り、開発記号でもあったそれは車名にもなったのだった。

○初代フェアレディZ変遷
1969年
S30型発売。
Z、Z-L、Z432のほかレース仕様の432-Rを設定。
北米で240Zを発表。
1970年
Z-Lに3速AT追加。L20型、S20型ともに
レギュラーガソリン仕様追加
(出力/トルクは125PS/16.5kg・mと
155PS/17.6kg・m)。
1971年
標準仕様「Z」にも3速AT追加、マイナーチェンジ。
240Z国内販売開始
(240Z、240Z-L、オーバーフェンダーと
Gノーズの付いた240Z-Gの3タイプ)。
1973年
2Lモデルマイナーチェンジ。
Z432シリーズ、240Zシリーズの国内販売終了。
1974年
2by2を追加。
輸出モデルは240から260Zへ。
1975年
50年排ガス規制を受け、
2L車はSUツインキャブからEGIへ変更。
輸出モデルは260から280Zへ。
1976年
パワーウインドウやアルミホイール標準装備の
最上級Z-Tを追加。
1978年
S130型へフルモデルチェンジ。

・ミスターKこと片山豊氏

Zの父として米国自動車殿堂入りを果たしたは片山豊氏(左から3人目)は、東京モーターショーの前身「全日本自動車ショー」の開催にも尽力。写真は2004年の全日本GT選手権でのスナップ。

視認性を配慮してフードの奥深くに配置された432の5連メーター。右から240km/hマキシマムの速度計、1万回転まで刻まれたエンジン回転計、水温/油温計、電流/燃料計、油圧計の順。シフトの後方はチョークとスロットルのレバー。

ヘッドレスト一体型のバケットシートはリクライニングも可能。

当初から2by2も検討されていたため、2人乗り432の荷室は広い。

前ヒンジ式のボンネットを採用。

リヤゲートの右下に取り付けられた「432」のエンブレム。

レーシングカーR380のG8型エンジンのノウハウが採り入れられた国産初の量産型4バルブDOHCエンジンがS20型。燃料供給は三國工業(当時)製ソレックスの3連キャブレター。

レースで競いあった432と240

 スカイラインGT-RのS20型エンジンを積む高価な432に対し、輸出専用から国内販売となった240Z-Gは独自のG(グランド)ノーズと比較的安価なこともあってZの人気モデルとなる。当初432-Rで内外のレースを戦っていたZだが、次第にレースの主力も240へと移っていった。

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グーネットマガジン編集部

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