新車試乗レポート
更新日:2020.08.26 / 掲載日:2020.08.26

新型ハリアー ロングドライブレポート

TOYOTA ハリアー ハイブリッド Z (4WD) ●価格:474万円

国産車屈指の良質ツアラーとして高い資質が与えられた新型ハリアー。その真価を発揮するのは、やはりロングドライブだろう。夏本番直前の房総エリアを走ることで分かった、その実力ぶり。しっかりとお伝えしよう。

宿る穏やかな走り味は 運転支援との相性も抜群

 取材日は早朝から交通量が多く、房総エリアに向かう高速道路の速度変化は頻繁。原因不明の渋滞も発生するし、走り出しからしばらくはストレスを溜めやすい状況だ。もっとも、進化が著しい新型ハリアーの実力を試すにはむしろ好条件、悪状況でも快適に過ごせるか? が今回のテーマである。

 まずはストレス軽減のために高速道路でACCとLKAに活躍してもらう。追従走行時の加減速は、前走車より一呼吸遅れる印象。とはいえACCとしては一般的な制御であり、前走車の加減速が荒ければそれなりの影響を受けるが、加減速制御は穏やかなのでそれほど不快でもない。前走車を注視し、持続的な緊張を強いられないのは大変有り難い。

 トヨタがLTAと呼ぶLKAのライン制御補正操舵はゆったりとしたもので、車線内位置よりも車線と車体軸線を合わせるような制御を行うため違和感が少ない。また、車線認識状況をモニターで認識できることも信頼感を高めている。ちなみに走行区分線が認識できない状況ではレーダーによる前走車追従のライン制御に素早く切り替わり、モニターの前走車アイコンの後方に点線を表示する。各社のLKAと比較しても優れた車線維持機能を備えている。

 東京湾アクアラインで木更津に入ると交通量も減り、流れも落ち着いてきた。程よい速度で巡航している車両に追従走行。稼働中もエンジン騒音は穏やかであり、乗り心地もしっとりとしている。寛ぎのクルージングだ。

モーター駆動が生み出す走りの余裕は、速度変化が頻繁に発生する一般道路でも実感。アクセルの踏み込みに対して、俊敏かつスムーズに反応してくれる。

  • ハリアーのために煮詰められたサスチューンは、硬すぎず、柔らかすぎずで絶妙の乗り心地をもたらす。路面が少々荒れている場面でも段差の当たりも穏やかに乗り越えるような印象だ。

  • 最新ハイブリッドの恩恵は、低速時でも実感。アクセルの僅かな踏み込みにも正確に応えてくれる印象でストレスは皆無。また平均で20km/Lを記録するなど、実燃費の良さも見逃せない。

電動との切り替えもスムーズ 駆動制御の進化ぶりを実感

 撮影スタッフと合流後、パワートレーンとシャシーの地力をチェックすべく一般道へ降りる。高速走行で示した扱いやすさは一般道に入っても変わらない。動力性能については、むしろ一般道のほうが制御の巧みさを感じられるほどだ。

 発進時の動き出しは滑らかで、停止~低速域での加減速もスムーズ。ハイブリッド車ならではの電動の力だが、瞬発力よりもコントロール性を重視した制御に感心させられる。大人っぽいというか良識的であり、ドライバーには扱いやすく、同乗者には安心をもたらしてくれるタイプだ。

 アップダウンが激しい登降坂路での速度維持や、ストップ&ゴーが頻繁に発生する市街地での加減速も、同じような運転感覚を示す。つまり、発進から高速巡航まで操縦感覚の変化が少ない。狭い場所での取り回しは車体サイズなりに苦労することもあるが、走行状況による特性の変化の少なさは、ドライバーはもちろん、同乗者の安心感向上の要点でもある。

 運転ばかりも何なので、途中で後席に移動してみた。SUVとしてはやや低めの座面高で寛ぎの着座姿勢が自然に取れる。乗り心地もSUVとしては良好。ロードノイズを感じるシーンもあるが、ことさら不快なものではない。ルーフ形状の影響で天井の圧迫感も少し気になるが、調光パノラマルーフがそんな閉鎖感の払拭には大いに役立つ。このパノラマルーフは透過時も一般的なガラスルーフに比べると僅かに霞んだ感じになるが、状況に応じて透過/調光を瞬時に選べて便利。遮光は従来通りシェードを使う。

 ちなみに高速4割、一般道6割の約200kmほどの試乗ルートで計測した燃費は約20km/L。これは燃費悪化にの原因になりやすい撮影時の走りや細かな移動も含めての結果。WLTC燃費には及ばないものの、市街地/郊外/高速それぞれのモード燃費に近い実燃費となった。

 街中も高速やワインディング路も緊張少なく操れて、同乗者と一緒に快適に過ごせる。しかも、幅広い道路状況でもクラス最高水準の実用燃費を記録する。この高水準でまとまったウェルバランスは、SUVにさして興味のないユーザーにもオススメできる。

登坂路のようなパワーユニットに瞬発力が求められるシーンでも、難なくこなす。ガソリン車よりも明らかに余裕があり、エンジン音も静か。静粛性向上も新型の美点だが、その恩恵はちょっとしたシーンでも実感することができる。

全幅1855mmと数値だけを抜き出すと、日本で走るにはやや大きいと思ってしまうが、広く取られたステアリングの舵角もあって小回り性能も優秀。4隅の見切りの良さもあって、苦に感じるシーンは皆無だった。

海沿いは風速20m/sを超えるなど、海岸線沿いは砂埃が舞い、海からの横風も激しい状況。だが突風にステアリングが取られることもなく、終始安定した走り。風切り音が気になることもなかった。

前シートは座り心地も、サイドサポートの効き方も良好。前方視界も高めの視線位置もあって問題なし。開口部に広さがあるため乗り降りも容易だ。

前に比べると腰の位置が低めだが、座り心地はこちらの方が好ましい。ただルーフ形状やガラス面積の問題から前方のみならず左右の視界も狭く感じる。開口部は腰の位置が広くなるため、乗り降りは問題なし。

  • スタイリングからして荷室は狭めと思い込みがちだが、通常時でもクラス平均レベル以上は確保。タイヤハウスの張り出しも気にならない。開口部は左右も高さも十分。

  • 前席に比べるとロードノイズの侵入は多めに感じるが、不快感が少ないのは同様。頭上空間に少々の圧迫感を感じるが、これも問題ないレベル。長距離運転にも余裕で対応できるだろう。

●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久

提供元:月刊自家用車

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