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更新日:2018.11.12 / 掲載日:2018.11.05

EV/HVが当たり前になる未来!電動化がプレミアムカーの進歩の指標

高額装備などの「高級感」とは異なるプレミアム感があるのが電動化だ。なぜ「電動」が「プレミアム」なのか、手法や効果が様々な電動化を整理しつつ、その価値の本質に目を向けてみよう。

進んだ技術の効果は実利のほかに新鮮な運転体験にもある

電動化技術は様々だが、根幹は電気モーター、バッテリー、制御ユニットだ。

 電源に不確定要素はあるもののクルマの未来がEVになるのはほぼ間違いなく、「電動化」はクルマの進化度を測る目安のひとつ。技術的先進性はクルマにとってイメージ面だけでなく実利を伴う付加価値なのは間違いなく、それをプレミアム性に繋げるのは当然。一昔前の「ツインカム4バルブ」や「ターボ」のように、現代的な視点でパワートレーンの先進性を捉えるならば「電動化」だ。

 ただし、ひと昔前なら電動自動車は電気自動車(EV)を示したが、現在言われる電動化技術は必ずしもEVを示していない。しかも、「電動化」の定義もメーカーや国によって異なる。日本では初代プリウスを皮切りにハイブリッド車(HV)がいち早く普及したため、内燃機と電動の二人三脚こそ電動化というイメージ。そのため回生で得た電力をパワーアシストで使う程度では「電動化」の先進的な印象を覚えるユーザーは少ないだろう。例えば、スズキが分類上はマイルドハイブリッドに相当する技術を用いながら名称を「Sエネチャージ」としたのも、そういったイメージに則した奥ゆかしさとも言える。

 電動化技術の目的は効率向上にある。HVにおける燃費が最も分かりやすい、と言うより燃費の劇的向上を目的に開発されたのがHVである。以前は「何馬力?」がパワートレーンの進化度あるいはプレミアム性だったが、今は「何km/L?」と変わったわけだ。ただし、HVの燃費向上合戦もひと段落、あるいは技術向上に対する燃費の延び代が減ったためか、以前ほど話題にならなくなった。

 もうひとつ「電動化」で見逃せないのはドライブフィールに対する認識の変化だ。これは走りのプレミアム感と考えてもいい。例えばアイドリング・ストップ。停車前のエンジン停止や電動発進など、停車中はエンジンが止まっているのが普通になり、エアコンのコンプレッサーを電動化していれば室温制御のためにエンジンを稼働することもない。電動パワーアシストによるエンジン負荷の低減もあって、静粛性の向上は電動化の進んだクルマの特徴だ。イメージではパワートレーンの進化度、実利ではドライブフィールが「電動化」のプレミアム性なのだ。

電動カーの分類と特徴

今や電動化にノータッチというメーカーはなく、多様な手法が混在。どんな技術があるのか、まずはおさらいだ。

【HV/HEV】ハイブリッド車

「比較検証! 価格差いくら?」ガソリン車とHVは装備内容も異なることがあり、おしなべてHVは高価になるが、スズキのISG式は比較的安価だ。

日本車が世界をリード。「ISG」式の普及が進む

 ハイブリッドシステムはシリーズ式/パラレル式/スプリット式の3タイプに大別される。シリーズ式はエンジンを発電機として用い、走行駆動は電気モーターが行う、いわばEVに発電機を搭載したようなタイプ。市販車ではニッサンがe-POWERとして採用している。ただし、EVと同様に高速域での効率低下が泣き所。この欠点をカバーするため、アコードやアウトランダーPHEV等ではシリーズ式をベースに、高速巡航時のみエンジンで直接駆動するなど、さらに工夫を加えている。

 パラレル式は内燃機/ミッションに電気モーターを組み込み、電動駆動(パワーアシスト)や回生ブレーキ機能を与えたもの。パラレル式はスズキ車や欧州車に多いISG(統合スターター&ジェネレーター)を用いたものから電動走行域を拡大したタイプまで様々だが、エンジンとミッションの効率向上は必須要件だ。ISG式は比較的簡易だが、アクセサリーバッテリーの高電圧化とともに次世代の標準パワートレーンとなる可能性が高い。現行のアイドリングストップ機能の置き換えである。

 スプリット式は2モーター式とも言われ、シリーズ式とパラレル式を融合させたタイプ。燃費をリードするトヨタのTHS-IIがこのタイプである。動力分割機構によりエンジンを発電機として用いたり、エンジン出力を駆動軸に伝えることもできる。ただし、パラレル式のようにエンジン出力のすべてを駆動に振り分けることはできない。最も効率に優れると言われるが、シリーズ式ほどではないものの、高速域で効率が低下しやすい。

  • トヨタのTHS-II。動力分割機構を用いた洗練された機構は特許の固まりであり、独占的地位を占める。

  • ホンダのi-MMD。EV走行からエンジン直動走行まで状況に応じた制御を行う。

【PHV/PHEV】プラグインハイブリッド車

電動走行を主眼とし、大容量のバッテリーを搭載する。必要に応じて内燃機も回せるが、給油よりも充電が基本だ。

充電して走るのがポイント実用性が高いが高価になる

「プラグイン・ハイブリッド車」の略で、外部からの充電機構を備えたHVを指す。PHVあるいはPHEVと表される。「E」の有無は電動走行域拡大でEV度を示していたりするのだが、明確な基準があるわけではない。ベースとなるハイブリッドシステムに制限はないが、機構的にはシリーズ式やスプリット式と相性がいい。

 また、外部充電機構だけでなく、電動駆動力の強化とバッテリー容量の拡大で満充電からしばらくはEV走行とするのが一般的。短距離日常用途では充電だけで走れるというのが設計要点のひとつ。最近は急速充電対応が標準になりつつある。EVの走行フィールや使い勝手を航続距離のハンデなしで楽しめるのが見所だが、HVでは最も高価なタイプであり、費用対効果の面では一般性が低い。

【EV/BEV】電気自動車

急速充電ポイントが増えてきてはいるが、ガソリン給油に比べて気を使う。

BEVのBはバッテリー、電気のみでエンジンなし

 外部から充電された電力だけで走るクルマ。駆動はすべて電気モーターで行う。内燃機系の最高効率も求められるHVと比べるとシステムは単純だが、高効率の大容量電池は必須。電池の能力で性能が制限され、ICEV(内燃機車)やHVに比べると航続距離が短い

 この欠点を解消するためにエンジン発電機を搭載したレンジエクステンダーもあるが、エンジン発電走行は緊急用である。また、低速と高速の効率を両立することが難しい。

 EVの主要用途となる低中速域に合わせたパワートレーン設計を採用するため、高速巡航航続距離はカタログ航続距離より短くなるのが一般的である。加えて充電インフラ、とくに急速充電器の普及もEVのウイークポイント。ICEVやHVのような感覚ではドライブできない。

  • 電動化の基本であるモーター、バッテリー、制御ユニットのみのシンプルな構成。

  • 制御がポイントとなる。

【FCV】燃料電池車

水素ステーションは充電スタンドほどには普及が進んでいない。地方となればなおさらだ。

長い航続距離が長所だが水素充填が泣き所

 駆動/回生に用いるハードやシステムはEVと同じ。電力供給源に燃料電池(FC)を用いているのが特徴である。走行性能は長短含めてほぼEVと同様。FCは急加速時に酸素供給の初期応答のため発電タイムラグもあるのだが、走行用バッテリーからの電力供給で補うため、実際にはEVと変わらない性能を発揮できる。

 ICEVに近い航続距離が得られるのが長所だが、充電スタンド以上に普及していない水素インフラが大きなウイークポイント。ちょっとした遠出でも水素ステーションのチェックは必須だ。また、将来性も不明である。

 バッテリー性能の向上や走行給電も含めた充電インフラの進捗があれば、構造的にもシンプルなEVに一気に移行する可能性もあり、今後の展開が予想しにくい。

関連ワードひとこと解説

【ISG】【エネチャージ】

 インテグレーテッド(統合)・スターター・ジェネレーターは言わばセルモーターの発展形。電気を流せば回り、外からの力で回せば発電するので、駆動力を生んだり回生充電したりできる。上は48V電気システムで効率を高めたメルセデスのISG、左はエネチャージと呼ぶスズキのシステム。

【マイルドハイブリッド】【ストロングハイブリッド】

 明確な定義はないが、一般にモーターのみで走行できないものが「マイルド」。逆は「ストロング」。

【プレミアムのツボ】電動モーターがもたらす独自の世界

 電動か否かは本来パワートレーンの話。それがどうプレミアムに結び付くのか、ポイントを絞って解説する。

【プレミアムポイント】機敏な加速性能

トヨタのTHS-IIの例。電気モーターがトルクの立ち上がりをアシスト。車格をはるかに上回るパワーフィールが得られる。

回転上昇を待たず一瞬でトルクを発生、内燃機のアシストとしても適する

 電気モーターの特徴として遅れのほとんどない応答性がある。内燃機の場合、最も早く点火するシリンダーでもスロットルを開き、吸入/圧縮/爆発の行程を経てパワーが増加。一方、電動は電気の速さで反応するので体感的には応答遅れゼロが可能。あまりに反応が良すぎると扱いが神経質になったり、ICEVからの乗り換えの違和感が甚だしくなるので、初期のHVやEVでは応答性を内燃機に近い特性に制御していたほど。加速応答もエンブレ回生もプログラム次第なので、ICEVよりドライブフィールの味付けの自由度も高い。

 また、内燃機の応答遅れ解消や初期アクセル踏み込み量の抑制を狙った電動パワーアシストはマイルドハイブリッド車でもドライブフィールと余力感を高める効果がある。

【プレミアムポイント】先進感

先進性は姿にも表れてこそ楽しいし、メーターなどの未来感も所有欲を満たすポイント。

機能面の要不要だけでなくデザインを含めて「らしさ」を楽しむ

 表示系や操作系は従来と同じでも電動化は進められるので、先進性はいわば演出。ただ、演出は要らないとなれば内外装デザインから機能まで実質本位でよしとなるが、それではつまらない。先進的な走行ハードには先進的な表示系と操作系や内外装を採用するのが基本である。

 電動化を進めたモデルがバリエーションとして存在する場合は機能的にはエネルギーフローや蓄電量表示が付加されるくらいだが、内外装に専用の加飾を用いるのも一般的。一歩先行く雰囲気はプレミアム性の要点になる。

 また、電動コンプレッサー式のエアコンや装備面でも内燃機専用車より先進的な物を採用することが多い。電動化の進化度は他の部分の先進性とも連携しているわけだ。

【プレミアムポイント】静粛性

電動なら無音、モーターアシストでエンジンの静粛性もアップしやすい

 アイドリングストップと電動発進はエンジン音ゼロ。マイルドハイブリッドでもエンジンの回転上昇を抑えやすいので静粛性は向上する。電動化の進んだHVなら内燃機は燃費優先の設計となり、エンジン本体の静粛性も向上しやすい。静粛性は電動化のモノサシのひとつでもある。

 ただ、騒音は相対的な要素も大きく、エンジン音がなくなればロードノイズや車外騒音が目立ちやすくなる。ISG式は標準化の傾向にあるので、現在のラインナップ同様にスポーティな排気音など演出として内燃機の存在感を強調するモデルがあっても不思議ではない。

 パワートレーンの静粛性向上が車体側の静粛性に影響しやすくなるわけで、ICEV以上に静粛性の差が目立ちやすいともいえる。

【これがオススメ!】「プレミアム」で選ぶ電動カーセレクション

 電動ならではのアドバンテージやプレミアム感を得るのに最適なモデルを、様々なタイプから選んでみた。

【お手軽】SUZUKI ソリオ

ベストグレード:ハイブリッドZ ●価格帯:217万9440円(FF)

簡易な電動化技術でライバルと差別化

 次世代標準となるISG式ハイブリッドを採用。ハイブリッドでは簡易型ともいえ動力性能や燃費面のメリットは程々だが、ドライブフィールも含めてスモールカーでは最先端。ACCも装備されていて、同クラス他車に対して「一歩先行く感」はたっぷり。

【実用的】MITSUBISHI アウトランダーPHEV

ベストグレード:G プラスパッケージ ●価格帯:447万9840円

SUVとしての実力をそのままに電動化

 満充電走行距離が長く、急速充電を上手く使えばEV近似というのがひとつの魅力。もうひとつはSUVらしい駆動制御とキャビンユーティリティ。レジャー用途向けのSUVとしても選べるモデルであり、未来感と実践力のバランスの取れたモデルである。

【安心EV】NISSAN ノート e-POWER

ベストグレード:e-POWER X ●価格帯:202万1760円

ガソリン給油でEV走行を楽しめる

 EVのドライブフィールを航続距離の問題なしで楽しむには最適。低中速域のダッシュ力や強力なエンブレ回生が独特。油圧回生協調ブレーキ非採用など、電動の進化度はそれほどでもなく、高速域での燃費などの難点もあるが、未来を日常に組み込む感が楽しい。

【最先端】TOYOTA ミライ

ベストグレード:標準仕様 ●価格帯:723万6000円

HVが一般化した今その先の「未来」を体験

 水素インフラが最大のウイークポイントだが、デザインも走りも乗った瞬間から「違う!」と思わせる。ドライブフィールはEVそのものであり、静かで力強いパワーフィールと重質な乗り味などプレミアムセダンの要件を高水準で満たしたモデルでもある。

電動の効果は様々ながら 「先進性」は共通の価値だ

 次世代のクルマにおいてエコ性能が重要なのは言うまでもなく、それを最も分かりやすいイメージで伝えられるのが「電動化」である。実利としては燃費と静粛性、動力性能が上げられるが、電動化の効果の多寡は様々。それを一様にまとめて先進的プレミアムで一括するのも少々乱暴な話ではある。したがって「電動化」のプレミアム性で共通するのは先進イメージということになる。

 「電動化」の深度はクルマの進化度を示し、5年先を見越すか、10年後か20年後か、あるいはさらに遠いかはあっても、ひと足先に未来を体験できるのは楽しく、それは間違いなくプレミアム性である。実用性とうまくバランスしていれば時代に先行した分だけ長く使い続けることもでき、長期所有では実利的なメリットもある。

 「電動化」とプレミアム性を結びつけるにはユーザー自身が実利とイメージの按配を納得するのも肝要だ。電動化を進めたモデルは価格も高くなり、ヘビーユーザー以外は実利面としてかかるコストを回収するのは不可能。そこを埋めるのが先進的イメージなのである。

提供元:月刊自家用車

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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