新車試乗レポート
更新日:2019.05.22 / 掲載日:2018.04.09
【試乗レポート】スタイリッシュでも中身は真面目。三菱らしいコンパクトSUVエクリプスクロス
文●ユニット・コンパス 写真●川崎泰輝
2017年3月に公開され、その後1年にわたるロングティザー活動を行ってきた三菱の新型コンパクトSUVエクリプスクロスであったが、ようやくそのステアリングを握ることができた。
躍動感のあるクーペスタイルは注目を集める
前傾したリヤウインドウや切り詰めたリヤオーバーハングで、まるでクーペのようなスタイリッシュなフォルムとなったエクリプスクロス。三菱はSUVらしい見晴らしのよさを両立させたというが、実際はどうだろう。
ドアを開け、シートに腰を下ろす。真横から見たときにフロントガラスの角度は寝ているが、前席では頭上空間にゆとりがあり、サイドウインドウも立っているため、圧迫感はない。さらにダッシュボードのデザインが横方向に広々としているため、たしかにSUVらしい見晴らしのよさを感じられた。
一方で後席はガラスの面積が狭く、頭上スペースにもあまりゆとりはない。これは外観から見てのとおりだ。見てのとおりといえば、運転席からの後方視界もセパレートしたリヤガラスや、斜め後方の視界などに若干スタイル優先の影響は感じられた。だが、たとえば駐車場などでの取りまわしで言えば、バードアイビュー機能付きのマルチアラウンドモニターが用意されているため、実用上困ることは少ないだろう。
充実したデジタルデバイスを導入。操作性も良好
そう、このような充実したデジタルデバイスもエクリプスクロスの売りだ。その中心となるのが、ダッシュボード上方に設置されたスマートフォン連携ディスプレイオーディオ(Gプラスパッケージに標準装備)で、オーディオ操作はもちろんのこと、スマートフォンとの連携によって、ナビ画面をここに表示することも可能。
操作についても、画面への直接タッチに加えて、シフトレバー隣に用意されたタッチパッドコントローラーを活用すれば、ドライブ中にもコントロールできるようになっている。タッチパッドは操作へのレスポンスもよく、メニュー画面もタッチパッドでの操作を前提としたUIとなっているため、使いやすかった。ホームやアプリ、オーディオといった、よく使う機能をハードキーとして用意しているのも嬉しい。さらに、スマートフォンの音声操作にも対応しており、これを活用すれば、より一層運転に集中しながら各種機能にアクセスできる。
ブランドの底力を感じさせる高度な制御システム
そして、目に見えないデバイスにも注目したい。これまでパジェロを筆頭に本格的な4輪駆動車を発売してきた三菱だけに、4WDシステムにもこだわりがあるのだ。
4WD仕様に備わる「S-AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)」は、4輪の駆動力と制動力を走行状態に応じて制御する三菱独自のテクノロジー。これは、1987年のギャランVR-4からスタートした車両運動制御技術のなかで、もっとも高度なものに与えられる名称。
4輪のすべてに駆動力が伝わる4WDだが、「S-AWC」では、タイヤ1輪ずつに、走行状況を車両が判断しながら、最適な駆動力を伝達する。搭載されるモデルによってそれを実現するためのメカニズム内容は異なるが、技術の目的としては、安全性と走りの楽しさを高次元で両立させるというところにある。
エクリプスクロスでは、コンパクトSUVとして競争力ある価格と、本格4WDとしての走行性能を両立させるべく、ブレーキ制御によってヨーコントロールを行うという発想による、シンプルかつ軽量なメカニズムを開発した。ブレーキを4輪個別にかけることで、車両の向きや運動エネルギーをコントロールするというシステムだ。
また、制御ロジックにも三菱の独自技術が注入されている。一般的な車両制御システムでは、走行条件によって、優先する性能(トラクション、ハンドリング、レスポンスなど)を最大化するロジックで、システムとしてはシンプルであるものの、結果的な走行性能に限界があったという。そこで三菱では、制御するデバイスのデータをすべてミックスして、中央集権的なコンピューターが状況判断を行なったうえで、各デバイスを制御するロジックを開発したのだ。
これを実現するためには、システム開発はもちろんのこと、リアルワールドでの車両実験による検証作業に多くの手間暇がかかったという。ある意味でクルマの知能化であり、SUVのようなあらゆる路面条件でそれを確かめるのは確かに時間のかかる作業だっただろう。
開発での走り込みを感じさせる完成度の高いフットワーク
今回は、晴天の山間路を中心に、市街地など一般的な用途に準じた試乗コースであったため、悪路走破性についてのコメントはできないが、それでも実力の片鱗は感じられた。
まず好感が持てたのが、全体的な扱いやすさ。とくにステアリング操作に対する反応はおだやかでありながらつねに正確で、ワインディングロードを走らせてもまったく不安なし。晴天のアスファルトだけでなく、すべりやすい雪道や不整路を走るSUVということを考えれば、このチューニングは納得だ。
そして見晴らしがよく、平衡感覚が取りやすいコックピットのおかげで、路面状況や周囲の障害物も確認しやすいこと、車内の騒音レベルも低く抑えられていることで、リラックスして運転できるのもエクリプスクロスの美点。18インチという比較的大きなタイヤを履かせているにも関わらず、乗り心地も快適だった。
1.5L直4ターボのパワーユニットは、パワフルというほどではないが、CVTとのマッチングがいいため、その走りはリズミカルで気持ちがいい。ターボに由来する応答遅れが少ないことも気持ちよさを後押しする。また、アイドリングストップからの再発進も上手でストレスがない。全体的に、細かい部分にまでしっかりと気配りが行き届いており、真面目でしっかりとしたクルマといった印象を受けた。
スタイリッシュであっても、中身は真面目。目に見えるもの以上に、目に見えないところにこだわっている。エクリプスクロスは、いい意味で三菱らしいコンパクトSUVだった。
三菱 エクリプスクロス G(4WD・CVT)
全長×全幅×全高 4405×1805×1685mm
ホイールベース 2670mm
トレッド前/後 1545/1545mm
車両重量 1550kg
エンジン 直列4気筒DOHCターボ
総排気量 1498cc
最高出力 150ps/5500rpm
最大トルク 24.5kgm/2000-3500rpm
サスペンション前/後 ストラット/マルチリンク
ブレーキ前/後 Vディスク/ディスク
タイヤ前後 225/55R18
販売価格 253万2600円~309万5280円(全グレード)