新車試乗レポート
更新日:2018.10.19 / 掲載日:2018.02.28

SUBARU XV スノードライブ in 八甲田

クルマの真価は長距離を走ってこそはっきり分かるもの。昨年春の発売から初めての冬を迎えたスバルXVで真冬のみちのくをロングドライブ。スバル伝統のシンメトリカルAWDと新世代シャシー&サスペンションだからこそ実現できた、信頼の走りをレポートしよう。
●文/川島茂夫

走ったのは真冬の「安比高原~十和田湖~ 八甲田山~新青森駅間」約190km

岩手県の安比高原スキー場をスタートし、小坂IC近くの小坂鉄道レールパーク、小坂鉱山事務所、康楽館に立ち寄り、十和田湖の南~東岸を走行。奥入瀬渓流を経由して八甲田山の麓を走り、蔦温泉や酸ヶ湯温泉を通って新青森駅に向かうルート。約190km、約5時間の旅だった。

icon 旅の途中で立ち寄った観光SPOT

  • 鉱山の隆盛を物語る「小坂鉱山事務所」

    日本一の銅山のシンボルとして、明治38年に建築されたルネッサンス風の木造3階建て。総天然秋田杉の豪壮華麗な造りが当時の繁栄を物語っている。国重要文化財。

  • 鉄道マニア必見!「小坂鉄道レールパーク」

    明治41年に発展を続ける鉱山の輸送力向上のため、小坂と大館間に専用鉄道として開通した小坂鉄道。パーク内にはスバル(富士重工業)製の車両なども保管されている。

  • 明治時代の芝居小屋「康楽館」

    小坂鉱山の発展に伴って厚生施設として創建された。外観はモダンな洋風だが、館内は江戸期の伝統的な歌舞伎小屋の様式を踏襲。今なお現役の芝居小屋として活躍。国重要文化財。

  • 世界的に有名な自然遺産「奥入瀬渓流」

    十和田湖の湖畔、子の口から焼山まで続く清流が奥入瀬渓流。特別名勝や天然記念物として名高い景勝地は、クルマの中からでも大自然を感じられる。氷結した滝が芸術的。

SUBARU XV 2.0i-Sアイサイト ●発売日:2018年4月6日 ●価 格:267万8400円 ●販売店:スバル店 ●問い合わせ先:0120-052215

 よく「端っこに正解はない」というフレーズを使う。現実は中庸にありという意味なのだが、按配とか加減の妙味なので、それを的確に説明するのは難しい。XVはそんなクルマの代表である。
 インプレッサスポーツをベースに最低地上高を200mmに拡大した専用サスを採用。樹脂製オーバーフェンダーなどでSUV的なドレスアップが施されるが、基本内外装も共通している。
 インプレッサとのルーフ高の差は70mmであり、これはそのままアイポイントの違いとなるが、本格SUVほどあからさまな高アイポイント感はない。ちなみにルーフ高は1550mmであり、高全高傾向の強い現代のクルマでは標準設定の範疇である。また、スバル車でもさらにSUVに振ればフォレスターも存在し、SUVらしさを求めれば些か中途半端である。
 この「中途半端」が実は現実的な最適値なのを実感したのが今回の試乗。岩手県の安比高原を出発点に、奥入瀬渓流を経由して新青森駅に抜ける。高速道路や山岳路、ドライ&ウェットに圧雪、アイスと多様な表情のルート設定だ。
スタッドレスを履いてさえいれば走行は難しくない。だがXVは1ランク上の安心感がある。ひとつは最低地上高の余裕。一般的な乗用車が走る道では例え轍(わだち)が深くても、XVには余裕。鼻擦りも腹擦りもせずに走り抜けられる。轍や路側に固まった雪の深さや段差を計算しつつ、走らせるのは意外と精神的ストレスが溜まる。XVだからといって、油断は禁物なのだが、選択できる走行ラインが拡大する分だけ、ストレスも減る。同時にインプレッサも試乗したが、やはり下回りに気を遣う。ラフロード側にシフトした設計は雪国の実用性能でもある。
 もうひとつ、これはインプレッサにも共通するが、4WDの駆動力配分とサスのコンビネーションのよさも見逃せない。
 一言で済ませれば、速度管理以外は普段の運転の延長上でいい。当たり前のように思えるかもしれないが、普通に走らせていても滑ってしまうことも多々ある。ABSやESC(横滑り防止装置)が標準の昨今のクルマなら大事には至らないが、そこで「ドキッ」とするかが評価の分かれ目。
 程よく滑ると言うか、前抜けや後抜けのアンバランスに陥らないと言うか、滑りも含めて操舵方向に姿勢を維持してくれる。コーナリングラインを絞るためにアクセルオフから切り増し。ちょっとリヤが滑って、前抜けのアンダーステアにもならず程よく回り込む。そこから踏み締めるようにアクセルを開ければ、安定してラインが維持される。
 高速道路では4WDツアラーらしい信頼感ある走りを示すし、ドライ&ウェットのワインディングも軽快に捌く。厳密に言えば重心の低いインプレッサのほうが有利だが、実際の操安性はXVも同等。個人的にはストローク制御に粘り腰感の強いXVのほうがオンロード走行でも好みなくらいだ。
 なお、今回の試乗では荒れた雪路が試乗ルートになかったため試せなかったが、インプレッサには搭載されていない4WD機能としてXVには降坂速度制御機能も含むXモードが採用される。これは後輪駆動用カップリングの締結力を高めると共にブレーキLSD機能を強化。各輪の接地バランスや摩擦係数が大きく異なる状況下での確実なトラクション制御を行うのが特徴。例えばノーマルモードで走行していてスタックしそうになったら、Xモードを選択して脱出できる。奥の手があるのも悪路や氷雪路の安心感のひとつだ。
 オフロード向けではなく、荒れていても一応道路の体をなすラフロード向けの踏破性能がXVの見所。インプレッサも雪道には強いが、もう少し高い安心感と広い行動半径を求めるとXVは最適な解。とても現実的な考え方であり、そこで求められる性能を過不足なくパッケージしたのがXVなのだ。

ここが頼れる!XVの注目メカニズム

 インプレッサに対して70mm増加した最低地上高は大径タイヤとサス設計変更によるもの。サスは高最低地上高に応じてジオメトリーの最適化を図った専用設計。4WDシステムのハードウェアはインプレッサと共通だが、差動制限力を高めるなど悪路走行に特化したXモードを採用。パワートレーンでは変速制御が変更され中庸域の加速性が向上。なお、アイサイトはクルマや歩行者等の認識精度を向上させたバージョン3を採用する。

  • シンメトリカルAWD

    水平対向エンジンに4WDシステムを組み合わせたスバル独自の駆動系。スタビリティの高さと運動性能を高次元で両立。XVでは、前後輪の動力配分をアクティブトルクスプリットAWDで行う。

  • X-MODE

    雪道での発進や荒れた山道を登る時など、タイヤが空転する場合に有効な機能。四輪の駆動力やブレーキなどを制御することでスムーズに走れる。ベースグレード以外に標準装備。

  • アクティブトルクベクタリング

    コーナリング時にVDCを利用することで内輪側にブレーキをかけ、相対的に外輪側の駆動力を高める機能。旋回性能を高めることでドライバーの意思通りのラインをトレースする。

  • 進化した足回り

    スバルグローバルプラットフォームの採用に加え、足回りもXV専用にチューニング。高速走行時の上下動やピッチングを抑えて乗り心地を向上させたほか、フロントのロールセンター高やリヤのロールステアも改良されている。

  • アイサイトVER.3

    クルマや歩行者はもちろん、バイクや自転車までプリクラッシュブレーキでカバーするアイサイトバージョン3を採用。作動速度域も幅広く、優れた安全性能を発揮する。

icon 似ているけれど実は結構違う!インプレッサスポーツとSUBARU XVの違い

  • インプレッサスポーツ

  • SUBARU XV

 樹脂性オーバーフェンダーや大径タイヤによりSUV感覚を強化しているが、基本ボディはインプレッサと共通である。ただし、インプレッサには設定のないルーフレールがOP設定される。最低地上高及び重心高の増加に伴いサスチューニングも変更され、インプレッサと比べるとしなやかで腰のあるストローク感覚を示す。




提供元:月刊自家用車


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