KOENIGSEGG AGERA RSR 試乗インプレッション

構造はレーシングカーライク右足裏には1200馬力が

　ケーニグセグはスウェーデンに本拠を置く新興スーパーカーブランドだ。クリスチャン・フォン・ケーニグセグが’94年に設立した。その名を一躍有名にしたのが、’05年に発売され市販車世界最高速記録を更新したＣＣＲシリーズで、アゲーラはその後継モデルである。
　驚くべきことに、ケーニグセグ社はタイヤを除き、ほぼ全てのパーツを、クリスチャンと優秀なエンジニア集団が自社で設計・開発し、生産もする。ＣＦＲＰ製ボディパネル＆モノコックはもちろん、千馬力オーバーのＶ８ツインターボやマネージメントシステム、ＣＦＲＰ製ホイールまで、自社の製品で賄っているのだ。
　’11年にデビューしたアゲーラ。その進化の過程において、特筆すべき存在はＯｎｅ：１だろう。その名の意味は最高出力１メガワットパワー＝１３６０PSで、パワーウエイトレシオ１。ＲＳはＯｎｅ：１の知見を基に改良されたアゲーラ最終シリーズで、なかでもＲＳＲは空力的にほとんどＯｎｅ：１に近い仕様となった、世界限定３台のスペシャルモデルだ。
　右足裏に１２００馬力が潜んでいるという想像が、得体の知れぬ緊張感を先に生む。２ペダル故、動かすこと自体は容易いが、パワートレーンの動作をひとつひとつ確認しつつ、ゆっくり走り出す。
　低速域での変速にスムースさがやや欠けるものの、車体の動きや、乗り心地は十分、街乗りに耐えうる。むしろ、このカタチを見た周りの人たちのほうが、非日常感におそわれていることだろう！
　恐る恐る右足を踏み込む。みるみる身体が轟音に包まれた。加速しながらクルマが引き締まっていくのが分かる。しまいには弾丸のように一塊に収束して、かっ飛んだ。メーターはアッという間に３００キロ。迫りくるコースエンド。ハンドルをゆるく握ったままにフル制動するも、車体は微塵もぶれず路面を豪快に噛んで停止した…。
　というのは、本社近くの滑走路を使った彼らのテストコースでの、めくるめく試乗体験であった。

全長×全幅×全高（mm）：4293×2050×1120、駆動方式：MR、エンジンタイプ：5.0Lトルク：130.5kg・m/4100rpm、トランスミッション：7DCT、車両重量：1395kg

　異様なスタイリングで、しかもタイヤと一部のパーツ以外は自社で設計開発、生産までする、と聞くと、マトモに動くのだろうかと逆に心配になってしまう。自分たちの理想を実現するために、無い物（仕様や規格など）は自分たちで造るという姿勢をもっと評価しなければならない。有名サプライヤーのブランドネームだけを信頼しがちなのは現代人の悪いクセだ。有名ブランド品の性能もまたピンキリなのである。美しいカーボンファイバー製ボディには、一台一台、スペシャルな塗装が施された。ボディペイントのオプション代だけでメルセデス・ベンツのＳクラスくらいは買えそう。新車時価格は３億円弱だったが、現在ではその倍程度で取引されることもあるという。

提供元：月刊自家用車