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車検・点検・メンテナンス
更新日:2018.02.23 / 掲載日:2018.02.23

ボディリペアの匠 Part2:裏側にアクセスできる部位なら叩き出す

Before

After

凹ましてしまった部位が袋だった場合、鈑金ハンマーとドーリー(当て盤)だけでは太刀打ちできない。しかし、フロントフェンダーやドア中央といったサービスホールからアクセス可能な部位であれば、基本的な鈑金ツールで対処することができる。

Step1>>ドアトリムを外してアクセスルートを確保する

パネル中央のキズなら裏にアクセスできる

  小さく浅い凹みなら最初からパテで埋めて成形してしまってもよい。
 しかし、ドアのように面積の広いパネルに付いたキズだった場合、キズの周辺も大きく歪んでいて、いざパテを盛り始めたら思いもよらなかった広い範囲に盛り付けるはめに陥ることがままある。このため、DIYといえども可能な限り叩き出すに越したことはない。また、モデル車のようにドアパネル中央にできたキズなら、裏にアクセスできるため特別な手法は採らずに済む。
 というわけで、まずはドア裏へのアクセスルートを確保するため、ドアトリムをそっくり取り外す。なお、作業はドアを半開きの状態にして行う必要があるため、自動的に閉まる電動スライドドアの場合、電源をOFFにする必要がある。

【1】電動を解除して作業する

電動スライドドアの電源をOFFにする。スライドドアを開け、ドアトリムの周囲にセットされた固定ネジの有無を確認。スペーシアは前方上端に樹脂クリップがはめ込まれていた。ロックを解除して引き抜く。ドアトリム下部の隅に内装外しを押し込んで軽く引き上げ、クリップ位置を確認。内装外しを誘導して引き抜く。残りを順次引き抜き、トリム下部がフリーになったところで上端部をまっすぐ手前に引き抜く。トリム裏はかなりゴチャゴチャしている。

トリムに組み付けられた樹脂クリップは外周に6個。上端3か所ははめ込み固定だ。ブチルシールをカッターで切りながら防水シートをめくり、サービスホールを開ける。

Step2>>可能な限り凹みを浅くする

ダメで元々。「炙り出し鈑金」を行ってみる

  アクセスルートを確保したところで早々にパネル裏を覗き込んでみたが、キズ位置はパネル中央ながらサービスホールより低い位置にある。しかも、キズ上面にドアビームが被さっている。
 このため、目視すらできない。ドア内の空間もかなり狭く、手を入れ込んでもあと1歩のところで届かない。そこで、ダメで元々。「炙り出し鈑金」を行ってみることにした。
 これは加熱・冷却に伴って膨張・収縮する鉄の性質を利用した鈑金方法で、炙り作業には本来アセチレンバーナーを使用する。が、ガレージにはないため試しにハンドトーチで代用して行ってみた。

【1】ドアビームが邪魔して真裏に手が入らない

上部のキズ裏にはドアビームがあり、内部空間も余裕がなくて手が入らない。そこで、思いついたのが「炙り出し鈑金」。まずは下部の凹みの浅い面で試してみる。

【2】下部の浅い凹みは炙り出ししてみた

凹みの外周部は凸状に盛り上がった状態になっている。この高い部位を稜線と呼び、これの一番凸い所から内側に向かって渦を巻くように、塗膜が変色しない程度の熱で加熱していく。すると凹み中心部が熱膨張で盛り上がってくる。

そのタイミングで濡れたウエスで擦って冷ましてやる。高い面を絞りハンマーで叩いて修正して完了。まだまだ修業が足りないようで、元通り平らにすることはできなかった。が、凹みは確実に浅くなっている。

【3】キズの深い上部は裏を支えて正面から叩く

上部のキズは下部に比べて深くえぐれており、底部には深い傷溝がクッキリ。炙り出しは無理そうなため、力業で叩き出す。キズの丁度真下にプライバーを押し込める穴があったからだ。キズに届く長さのプライバーを挿入し、バー先端をキズ裏に誘導して頂点面を支える。

その状態で凹み外周の凸状に盛り上がっている面を軽くトントンと叩いていく。叩き過ぎると逆に歪みが広がるため深追いは禁物で、表からはこれが限界だった。

【4】ステップヒット面の歪みを補正する

同時に起きた損傷ながら損傷部位は散らばっていて、サイドシルも軽く凹んでいる。最後にこれを修正する。損傷部の近くに組み付けられているラバーモールを、固定クリップを引き抜いて取り外す。損傷は比較的軽微。折り曲がった面の頂点をまっすぐ押されたことで、上下にほぼ均等に軽くめくれ上がっている。このめくれた面を押し戻すべく、上下から交互に叩いていく。めくれがつぶれて平らになるまで、様子を見ながら少しずつ押し戻していく。残った凹みは僅か。この程度ならパテ盛りで容易にカバーできる。

Step3>>パテを盛って成形する

パテで成形して周囲となだらかに繋げる

  可能な限り凹みを叩き出し、「後は削り出してパテ盛りするだけ」と安堵したのもつかの間。パテ盛りのために削り出している最中、ある異変に気付いた。
 仕上がりを確認すべく補修面に手を添え、何気なく押してみたら「ペコ、ペコ」と音がする。押し込むと「ペコ」と凹み、離すと「ペコ」と元に戻るのだ。
 このような現象が起こる原因は1つ。鉄板の張りが緩んだことにある。これはかなり問題。振動で波打つ可能性がある面に固いパテを盛ることになるからで、いずれ確実にヒビ割れ、最後にはポロッと剥がれてしまう。
 このため、パテ盛りを始める前に確実に処理しなければならない。が、これが意外に手間がかかるのだ。

【1】パテ盛りする面の塗装を削り落とす

凹んでいる面をサインペンで囲って、削り出す範囲を確認する。粗目の♯120をサンダーにセット。パテ盛りする面を研磨して塗膜を削り落とす。真っ先に削れ落ちるのが凸部、塗膜が残っているのが凹部でパテ盛りの中心部となる。その範囲を目に焼き付けたところで、凹みに残った塗料を残さず削り落としてしまう。

【2】伸びてしまった鉄板を叩いて絞り込む

周辺部を掌で軽く押し込むと「ペコ」と凹み、離すと「ペコ」と元に戻る。こんな状態でパテを盛っても密着面に生じた歪みでいずれポロッと剥がれてしまう。伸びた鉄板を絞り込むべく、歪みの基点を探りつつ絞りハンマーで叩いて絞っていく。収まったかと思うと、振動ポイントが移動。かなり厄介だ。

【3】鉄板の張りが回復するまでキッチリ絞り込む

単に表から叩くだけではらちがあかないため、サービスホールからプライバーを押し込んで歪みの基点と思わしきポイントを支えることにした。疑わしきポイントにバー先端を誘導して裏から支え、トントンと叩いて絞り込んでいく。収まった途端に振動ポイントが移動という追いかけっこがしばらく続いたものの、なんとか収まった。これでようやくパテ盛り作業を始められる。

【4】下部とステップ面はパテ盛りだけでOK

まだ研磨してなかった下部のキズ面を研磨して塗膜を削り落とす。残っている凹みはこの程度。上部に比べれば軽微だ。サイドシル部に残った凹みはさらに少ない。この程度ならラッカーパテでも対処できる。

【5】色見本の色合いになるまで硬化剤を混ぜる

周囲となだらかに繋げるため、さらに周囲も2~3回りほど広めに削り出し、シリコンオフで削れカスを拭き取りつつ脱脂する。「マジックパテ」を盛板に適量、取り出し、2%に相当する分量の「ソーラー硬化剤」を絞り出してよく混ぜ合わせる。なお、缶側面には適量混合時の色見本が表示されており、混ぜ上がったパテを比較してみることで硬化剤が適量かどうか目で判断することができる。

【6】凹の底までムラなく確実に塗り込む

凹みの底までムラなくパテが入り込むようヘラ先に力を入れてしごく感じに塗り付けていく。凹みが埋まったら幅広のヘラに切り替え周囲となだらかに繋がるよう形を整える。

【7】おおまか埋まったら細地のパテで仕上げる

#120で荒削りしておおまか形を整え、周囲となだらかに繋がるよう形を整える。「マジックパテ」はおおまか形を整える下地用で、この上にキメの細かい細地タイプの「極み180」を塗り重ねることで目的の形状となるよう形作る。硬化剤の混合率は「マジックパテ」と同じく2%で、缶側面に適量混合時の色見本も表示されてる。ムラなく混ぜ合わせたところで比較してみる。パテを盛った面全体にムラなく均一に、目的の高さまで盛り付ける。サイドシルの凹みは浅いため「極み180」のみ。一発で埋まった。

Step4>>メーカーによっては上塗りが3種類ある

ホルツのパール色は3層に塗り重ねる!?

  カラースプレーは一般に、メタリックはもとよりパール系でも色付きクリアにメタリックやパールの粒子を混ぜられていて、仕上げの上塗りクリアが別途必要なものの色ベースは1本で完結している。
 ところが、今回チョイスしたホルツのスズキ用ホワイトパールは、ベースとなる白色の下塗りと、クリアにパール粒子が混合された上塗りの2本構成で、最終仕上げにはクリアによる上塗りも必要となる。つまり、3層に塗り重ねていく必要があるのだ。

【1】プラサフを吹き、研磨して平らに均す

パテが硬化したら#400による空研ぎで面を整え、プレスラインをキッチリ削り出す。「プラサフ」を塗布し、完全に乾燥したところで#600で空研ぎして平らに均す。ピンホールや細かな段差が残っていたらラッカーパテで処理し、微調整で削れた面に再度「プラサフ」を塗布。乾燥したら再度#600で空研ぎして平らに均して下地の完成だ。

【2】ボカシ吹きで塗料が飛ぶ面をコンパウンドがけする

パテ盛りに伴って研磨した塗装面以外の全塗装面をノンシリコンのコンパウンドでムラなく磨く。下準備が完了したところで、飛び散った塗料が付着しては困る面をマスキングする。なお、飛び散った塗料はドアの周囲の隙間にも入り込むため、開口面も確実にマスキング。そして、補修面のドアの塗装面以外の部分をそっくり覆ってしまう。

【3】ホルツのパール色は3層に塗り重ねる

まず、ホワイトベースの下塗りを塗装する。補修面を中心に薄く塗り重ね、全体に色付いたら十分乾かす。これを数回繰り返すことで少しずつ、かつ端をぼかして色目を周囲になじませる。ムラなく色が乗ったらよく乾かし、上塗りのパールマイカを下塗りより一回り広めに、パール粒子に覆われてキラキラ輝きだすまで数回に分けて塗り重ねる。これである程度は艶が出るが、仕上げのクリアが必須。上塗りよりさらに一回り広めに、艶が出るまで塗布する。

上塗りのクリアが半乾きになったところで、マスキングを取り除いて一段落、そのままよく乾かす。なお、クリアはウレタンではないため1週間経過してクリアが完全に乾燥したところで、仕上げの磨きを行って完成だ。

提供元:オートメカニック

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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