新車試乗レポート
更新日:2019.05.22 / 掲載日:2018.02.21

【試乗レポート】街中でも楽しい! トゥインゴGTが教えてくれる「使い切れる速さ」の魅力

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

 3世代目となるルノー・トゥインゴに高性能モデル「GT」が追加された。このGTが一般的なトゥインゴと異なるのはまずエンジンだ。通常モデルが71馬力の自然吸気エンジン(MT車)もしくは90馬力のターボエンジン(EDC車)を搭載するのに対し、GTは109馬力に強化されている。
 じつは「トゥインゴGT」は2017年9月にも限定車として発売されたのだが、その際には用意された200台が即完売。そのときに購入できなかったファンからの「ほしい」という声に応え、限定ではない通常モデルとしてラインナップに追加されたというわけだ。
 そこで気になるのが、200台の限定車と今回のカタログモデルとで違いがあるのか? という部分。答えは「ある」。まず「ボディカラーはオレンジ(オランジュ ブレイズ メタリック)でトランスミッションはマニュアル」に限定されていた仕様が、ボディカラーにはグレー(グリ リュネール メタリック)も選べるようになり、トランスミッションではEDCと呼ぶAT(デュアルクラッチ式)も選択可能になったのが大きな違い。「オレンジ+MTがもっとも直球的なチョイス」と思う人も多いとは思うが、選択肢が増えたことは喜ぶべきことだ。
 また、限定車時代に用意されていたボンネットとルーフのデカールによるストライプは、カタログモデルでは装備されなくなった。そして限定車で224万円だった価格についても、今回は229万円(MTモデル)と少し値上げされたのは残念に思うかもしれない。いっぽうで、今回からセンターパネルにスッキリとインストールできるオーディオ一体型のカーナビ(アルパイン製)がオプションで装着できるようになったのはうれしいトピック(ただし、ナビを装着するとスマホの専用アプリを接続できなくなる影響で、スマホにタコメーターが表示できなくなる)。価格に関しては「限定車はギリギリまで頑張ったのですが今回はカタログモデルなので……」とルノー・ジャポンは説明(言い訳?)するが、ここは若干の価格差よりも「いつでも買える状態」にしてくれたことを感謝したい。

 さて、トゥインゴを改めて説明すると、「Aセグメント」と呼ばれる欧州でもっとも小さな車体クラスに属するコンパクトカー。日本でいうと軽自動車のような感覚の車両だ。
一般的なコンパクトカーは、エンジンを車体の前部に置いて前輪を駆動する「FF(フロントエンジン・フロントドライブ)」だが、3世代目となる現行モデルのトゥインゴは居住スペースを広くするためにエンジンを車体後部に置いて後輪を駆動する「RR(リヤエンジン・リヤドライブ)なのが特徴。車両前部にエンジンを積まないことでタイヤの切れ角が大きくとれ、短いホイールベースと相まって、わずか4.3mという軽自動車トップ水準に匹敵する最小回転半径を実現しているのも大きなトピックである。ちなみにスマート フォーフォーとは基本メカニズムを共用する兄弟車で、フォーフォーの生産もルノーが担当している。

 今回発売されたGTはその高性能バージョンで、エンジンを出力アップしているほかサスペンションもひときわスポーティな味付けに変更。エンジンとサスペンションを鍛えたことによるスポーティな走りが最大の魅力だ。もしトゥインゴのスタイルや実用性だけを気に入っているなら標準車を選べばいいし、スポーティな走りまで求める人はこのGTが積極的に選ぶべきグレードである。

スポーティな味付けのルックスは性能アップにも貢献

 エクステリアは、専用デザインの17インチアルミホイール、フェンダーのワイド感を強調するサイドストライプ、ブラックアウトしたドアミラー、フェンダーモール、サイドステップ、リヤスポイラー、リヤディフューザー、そしてデュアルエキゾーストパイプやサイドインテークが高性能を主張。なかでも助手席側リヤフェンダーに備わるインテークは特徴的で、競技車両のような雰囲気を演出するだけでなくエアインテークへ新鮮な空気を送ることでターボチャージャーに入る空気の温度を12%下げ、空気流量を23%増やす(=燃焼室に送る空気の量を増やすことで爆発力を高める)のに貢献。見た目だけではなくしっかりと機能パーツになっているのが見逃せない。
 また、増えた空気にあわせて容量を高めた燃料ポンプがさらに多くの燃料をエンジンへ送ってパワーアップに貢献し、それに伴う発熱量増加に対応するためにウォーターポンプを強化して冷却性を上げている。もちろんエンジン制御や排気系も専用設定だ。
 排気系とエンジン制御プログラムの変更だけでエンジンを高出力化しているスポーツモデルが少なくないなか、トゥインゴGTではエンジン周辺の部品もしっかり手をかけていることからも開発を担当した「ルノースポール」の本気度が伝わってくる。
 ルノースポールは、モータースポーツ車両の開発や製造とともに市販車の高性能仕様も手掛けるルノー内の専門組織で、日本メーカーに例えると日産でいう「ニスモ」やスバルの「STI」のような存在。ルノースポールが手掛ける市販車は、製造まで専用ファクトリーでおこなう「R.S.」シリーズが頂点に君臨するが、今回のGTは開発をルノースポールがおこなって製造はルノー本体が手掛けるモデルである。

ミッドシップのスポーツカーみたいな軽快で楽しいコーナリング

 そんなルノースポールが味付けをおこなっているだけに、走りが楽しくないわけがない。109馬力に強化されたエンジンのおかげで大幅に加速力がアップ。しかもその動力性能は「速すぎて一瞬しかアクセル全開にできない」という過剰なものではなく、気軽にアクセル全開を楽しめる“適度な速さ”なのがいい。決して遅くなく、そして速すぎもしない、性能を引き出して走る楽しみがトゥインゴGTには詰まっているのだ。
 そして、足まわりも絶妙。「バネもダンパーも標準車に対して約40%締め上げている。スタビライザーも太くなっている」と聞くと、硬い足まわりをイメージしそうになるが、ルノースポールの味付けは絶妙で適度なしなやかさが好印象。乗り心地に粗さはまったくなく、軽量モデルらしくヒラリヒラリと軽快に曲がる感覚がとても気持ちいい。
 まるでミッドシップ(エンジンを車体中央に置くパッケージング)のスポーツカーと同様に車両前部が軽いから、スーッと曲がり始める動きが素直で、交差点をひとつ曲がるだけで楽しくなれるのは誇張でもなんでもなく本当だ。峠道などでペースを上げて走らなくても、タウンスピードで普通に交差点を曲がるだけで運転が楽しいと感じられる「日常のスポーツ性」がトゥインゴGTの魅力だと感じた。
 ちなみにコーナリングの感覚は標準車と意外なほどに違っている。標準車ではRR本来の特性を抑えており、安定性を重視してまったりと曲がる感覚。それに対してGTでは、標準車よりも反応がシャープで「これ以上曲がりすぎると機敏過ぎる」となる直前のスイートスポットに仕立ててある。この絶妙なさじ加減に、ルノースポールの仕事を感じた。
 合わせてエンジン出力やブレーキを制御してスピンなどを防ぐ機能を持つESC(スタビリティコントロール)の味付けも変更されている。安定性を最優先している標準車に対し、GTはわずかなリヤの滑りを許容して、スピードを損なうことなく曲がるスポーツモデルならではの設定になっているのだ。今回の試乗ではそこまで試せなかったが、サーキット走行などではその恩恵を感じられるはずだ。ちなみにESCのオフはできない。

 トゥインゴGTはあくまで高性能仕様であり、尖ったスポーツモデルではない。車体が小さいから扱いやすく、乗り心地もいい。一部をレザー調として上質に仕立てたインテリアによる快適性があるから日常使いに最適で、そのうえで“凄すぎない”気軽なスポーティ性能が魅力なのだ。さりげなく運転を楽しめるクルマがほしいと考えているひとに、ぜひ選んで欲しい選択肢である。

ルノー トゥインゴGT(5速MT)

全長×全幅×全高 3630×1660×1545mm
ホイールベース 2490mm
トレッド前/後 1460/1435mm
車両重量 1010kg
エンジン 直列3気筒DOHCターボ
総排気量 897cc
最高出力 109ps/5750rpm
最大トルク 17.3kgm/2000rpm
サスペンション前/後 ストラット/トレーリングアーム
ブレーキ前/後 Vディスク/ドラム
タイヤ前後 185/45R17・205/40R17

販売価格 229万円~239万円(全グレード)

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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