新車試乗レポート
更新日:2019.05.22 / 掲載日:2018.01.31

【試乗レポート】ありそうでなかった新種のSUV クロスビーは真面目に作った遊びクルマだ!

文と写真●ユニット・コンパス

 見てすぐにピンときた。これは楽しいクルマに違いない。スズキ クロスビーは、全長わずか3.8m弱の小さな車体にSUV的なルックスを与えたコンパクトカー。扱いやすいコンパクトボディに対し、あらゆるシーンに適応するユーティリティ機能を詰め込み、路面を選ばない4WDメカと最低地上高を与え、思わずハンドルを握って出かけたくなるようなワクワクするルックスで包み込んだ。

 小型車を得意とするスズキでは、全長3.8m級のコンパクトカーセグメントにスイフトソリオ、イグニスなど多数の車種を投入しているが、多人数乗車ができるオフロード系モデルはこれまで存在しなかった。本格オフローダーとしてコアなファンを持つジムニーにも普通車版であるジムニーシエラが存在するが、こちらは3ドアで乗車定員4名。軽自動車ハスラーは5ドアだが、4人乗りであることと、全長が約3.4mであるため多人数乗車時の積載力に不満有り。エンジンもターボ付きとはいえ64馬力9.7kgmのスペックであるため、やっぱり街乗り+αといった使い方が似合う。
 そこで、これまでの軽自動車およびコンパクトワゴンづくりで培ったパッケージング技術を活かして「コンパクトワゴン+SUV」というコンセプトで開発されたのが、ここで紹介するクロスビーなのだ。目標としたのは、大人5人がしっかりと乗れる居住性と積載性に、SUV的な悪路走破能力を両立させること。プロポーションが似ているイグニスと比較すると、室内の幅や高さは同等ながらも室内長は155mmも広く、さらに頭まわりのスペースも前後席ともにゆとりが生まれている。さらに、座面の高さも上がっているため見晴らしがよくなっているのもイグニスとの違いである。キビキビ感を重視するユーザーにはイグニスを、よりユーティリティを重視するユーザーにはクロスビーを用意することで、幅広いユーザーニーズに対応できるというわけだ。

コンパクトワゴンのノウハウを生かしたパッケージング

 緻密で理知的な空間設計が行われているクロスビーだが、そんな理屈は置いておいて、ユーザーの心を射抜くのがSUVテイストのエクステリアデザインだ。
分厚いサイドボディやがっしりとした前後マスクでタフな印象を作り出しつつも、丸みのあるライトで愛嬌のある顔立ちに仕上げているのがにくい。ハスラーに似ているという声も聞くが、確かに目つきに共通点を感じるものの、クロスビーの外板には立体感があるため、実車を前にすると2台の印象はかなり異なる。16インチタイヤを飲み込むふくらんだフェンダーアーチはインパクトが強く、どっしりとしたリヤビューの迫力はなかなかのものだ。
 豊富なボディカラーのバリエーションも注目のポイント。一般的なモノトーンに加えて、ルーフをブラックやホワイトにした2トーンルーフ仕様を多数ラインアップ。さらに、ドアスプラッシュガード(ドア下部)にカラーパネルを組み合わせた3トーンコーディネイトまで用意されている。ボディカラーに合わせてシートのパイピングやカラーアクセントも変化するため、色の選択だけでもじっくりと楽しめそうだ。

ワクワク感のあるインテリアは使い勝手もグッド!

 遊び心はインテリアデザインにも感じられる。パイプフレームを模したインパネ上部やシリンダー形状をしたセンターコンソール、立体的なメーターデザインがメカメカしさで演出。大胆なシルバー加飾もデザインにマッチしていて、たしかに所有欲をくすぐってくる。
では、クロスビーはデザイン重視の遊びクルマかと言えばさにあらず。室内を見渡せば500mlの紙パックが収まるドリンクホルダーやスマホなどの充電に便利なインパネセンタートレーなど、収納スペースはしっかりと作り込まれており、生活に密着した小型車づくりに長けるスズキらしい気配りに嬉しくなる。

5人乗車でさらに荷物も積めるラゲッジスペース

 使い勝手への配慮は荷室にも感じられた。リヤシートがそれぞれ独立してスライドすることでひとと物とのバランスに応じて使い勝手を調整できるし、荷室の床下には水洗い可能な大容量のラゲッジアンダーボックス(2WD:81L、4WD:37L)も完備。汚れ物や非常時への備えを入れておくのにも便利だし、ボックスそのものを外してしまえば、背の高い荷物をらくらくと飲み込んでしまう。スズキでは使用例としてベビーカーの収納にも便利だと説明していた。
 また、防汚タイプラゲッジフロア(HYBRID MZ)やフックなどの装着に使えるユーティリティナットが備わるなど、実用的な装備が充実しているのも嬉しい。純正アクセサリーとして、ラゲッジスペースを活用するための用品も多数用意されており、それらを組み合わせて使うことで利便性はさらに高まる。シートは、後席だけでなく前席まで簡単操作でフラットに。隙間を上手に埋めてくれる専用のベッドクッションを組み合わせることで、車中泊をしながらの旅行だって夢じゃない。

スムーズな加速が気持ちいい1Lターボ+6速AT

 では、走りのフィーリングはどうだろう。
 試乗コースは市街地が中心で、日常生活をイメージしたストップ&ゴーと、流れが早い郊外のバイパス路のようなシチュエーションを試すことができた。1L直噴ターボエンジンには発進をアシストし、アイドリングストップからの再始動を静かにするというマイルドハイブリッドが搭載されているのがトピック。自然吸気エンジンで言えば1.5L級という説明のとおり、走り出しからの加速はスムーズで気持ちのいいもの。アクセル操作に対しての加速感が自然なのはトランスミッションが6速ATであるおかげだろう。これだけでもハスラーとの違いは明確だ。
 一般道では余裕綽々といった印象で、これなら高速道路でロングドライブとなっても疲労は少ないはず。ステアリングから伝わる手応えがしっかりとしているのも、クルマに対する信頼を後押しする。試乗車は4WD仕様だったが、それでも車重は1000kgに抑えられていた。これも軽快な印象の要因だろう。スズキが現行世代のモデルに採用しているプラットフォーム「ハーテクト」は、軽量化と高剛性という相反する性能を上手に両立したというのがウリだが、その効能がクロスビーの走りにも感じられた。
 悪路走破性を高める取り組みとしては、SUVスタイルの利点である大きなアプローチアングルとデパーチャーアングル、180mmの最低地上高といった基本性能に加え、滑りやすい路面や急な下り坂に対応する走行モードを用意。4WDモデルにはさらに、雪道やアイスバーンでの発進をサポートする「スノー」も加わる。そのほか、危険を予測し、安全運転を支援する「スズキ セーフティ サポート」も採用(HYBRID MXにメーカーオプション)。
 いまや当たり前となった自動ブレーキに加え、駐車場などでの事故を未然に防ぐ「後退時ブレーキサポート」も装備。安全技術が充実したクルマに与えられる「サポカー S ワイド」に該当する。

4WD性能に安全技術にと盛りだくさん

 まさに内容盛りだくさんといったクロスビー。価格は176万5800円からで、4WD仕様の価格差も15万円ほどとリーズナブルに抑えられているのも好印象。SUVのイメージさせるアクティブなライフスタイルが手頃なサイズと価格で手に入るとくれば、人気モデルの仲間入りは間違いないだろう。

スズキ クロスビー HYBRID MZ(6速AT・4WD)
全長×全幅×全高  3760×1670×1705mm
ホイールベース  2435mm
トレッド前後  1460mm
車両重量  1000kg
エンジン  直列3気筒DOHCターボ+モーター
総排気量  996cc
エンジン最高出力  99ps/5500rpm
エンジン最大トルク  15.3kgm/1700-4000rpm
モーター最高出力  3.1ps
モーター最大トルク  5.1kgm
JC08モード燃費  20.6km/L
サスペンション前/後  ストラット/トーションビーム
ブレーキ前/後  Vディスク/ドラム
タイヤ前後  175/60R16

販売価格  176万5800円~214万5960円(全グレード)

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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