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更新日:2018.12.02 / 掲載日:2017.12.26

最新パワートレーン大研究

将来の動力源は、エンジンか?それともEVか?あるいは両者の共存なのか?? 日産は世界初のVCRエンジン搭載車を2018年にリリース。トヨタはEV化の可能な電動化技術を大公開。どちらも20年以上の挑戦があった!

20年の執念で夢の可変圧縮比エンジンを実現! インフィニティQX50でデビューの日産VC-TURBOエンジン

エンジン技術の夢とされていた可変圧縮比エンジンが、世界で初めて日産の手によって実用化され、2018年から市販されることが発表された。ユニークなマルチリンクを備えたVCRエンジンとは、どんな技術なのだろう?

将来の発電専用エンジンとしても高いポテンシャル!

 日産で20年以上に渡って地道に研究開発を進めてきたVCRエンジンが、ついに北米でデビューすることがアナウンスされた。
 VCRとは、可変圧縮比(Variable Compression Ratio)でのこと。圧縮比はある程度までは高いほど熱効率が高くなる(=燃費が良くなる)という特徴を持つ。それは、混合気をギューギューに押し縮めてから点火し膨張させたほうが、狭い空間で燃焼ガスを膨張させることになり、それだけ圧力が高く、ピストンを強く押し下げることになるためだ。しかし、ガソリンエンジンでは、圧縮比を高くするとノッキングという異常燃焼の壁が立ちはだかるため、自然吸気エンジンでは10~14:1、ターボなどの過給器付きで、9~10・5:1前後に設定されている。最近は、ダウンサイジングターボが定着しつつあるが、ターボの過給が要らないアイドリング付近や巡航走行などでは、圧縮比が低い分だけ効率が悪くなってしまう。VCRでは、小パワー領域では高圧縮比で燃費効率を良くして、加速や登坂のように大パワーが必要なときは低圧縮比にして、ノッキングを防ぎながらギンギラ過給をする。
 VCRの方法は色々あるが、日産が採用したのは、3つのリンク(これは気筒数分付く)と1つのアクチュエーターリンク(エンジンに1つ)でピストンのストローク自体を上下させる方式。
 この機構は、将来の超ロングストローク化と超リーンバーンも視野に入れており、熱効率をさらに引き上げて発電専用エンジンとして活用することも検討している。
 エンジンは横浜工場で生産しているが、残念ながら日本仕様車への導入は未定。しかし現在ダイムラー製を採用するスカイラインの2Lターボなどは、置き換えやすいし、他のV6搭載車も十分対象になりうるだろう。

  • 内燃機関のトランスフォーマーついに誕生
    新しい可変圧縮比エンジンは型式がMR20DDTで、2リッター4気筒インタークーラー付きターボ。従来のV6-3リッタークラスの動力性能と30%以上の燃費低減を実現する。エンジンの軽量化と小型化によるパッケージデザインや重量配分の適切化を図れる。FR搭載も可能か?

  • 世界初の可変圧縮比エンジン
    リンク機構を動かすハーモニックドライブは、シンプルながら大きな減速比が得られ、モーターの回転を約240:1に減速してアクチュエーターアームに伝達する。膨張行程でアッパーリンクが垂直に近く、ピストンを素直に動かせるため摩擦抵抗が激減している。

  • 従来のコンロッドは、マルチリンクに置き変わり、エンジン下部にあるコントロールシャフトを動かすと、それにつながるマルチリンクの角度が変わり、ピストンのストローク位置が上下する。前例がないので、リンクの長さや作動の基礎を固め、量産実現までに幾星霜を経た。

  • 圧縮比(Compression Ratio)=燃焼室容積+行程容積:燃焼室容積
    圧縮比は、燃焼室の容積とピストンが下死点にあるときのシリンダー容積の合計と燃焼室容積の比。圧縮比が高いほどギュッと小さい容積に押し縮められる。ガソリンエンジンでは、自然吸気で10~14(:1)、過給ガソリンエンジンで10:1前後となっている。

  • 緑線がストローク量と位置

  • ピンク線がストローク量と位置

圧縮比を8:1から14:1まで可変マルチリンクでピストンストローク全体がスライド
右は低圧縮比で、ストローク量は下へ下がり、燃焼室容積が大きくなるので圧縮比は低くなるのでターボで過給してもノッキングしにくくなる。左は高圧縮比で、燃焼室容積は最も小さくなる。圧縮比は中間も含めてシームレスに変えられる。

可変圧縮比以外にも多くの特徴が!
●鋳鉄ライナーを廃止したミラーボア●従来V6より18kg軽量化●膨張行程のアッパーリンクが垂直に なり、ピストンの摩擦抵抗を大幅減●従来の10分の1の低振動となり、4気筒エンジンで必要となるバランサーシャフトが不要に●ルノースポールF1との技術開発で、耐久性を確認●製造は横浜工場

米国向けSUV、QX50で2018デビュー

新エンジンは、CVTとのコンビで北米用のインフィニティQX50に搭載。V6-3.7リットルを搭載する先代に比べ2WDで35%、4WDで30%の燃費削減効果。エンジン自体の振動が小さく、アクティブトルクロッドなどの新機構も加わって低振動で静粛性が高い。

QX50&VC-TURBOのスペック(北米仕様)
車両諸元
全長×全幅×全高(mm) 4,693×1,903×1,679(サイドミラーを除く)
ホイールベース(mm) 2,800
乗車定員(mm) 5名
駆動方式 2WD/4WD
2リッターVCターボガソリンエンジン諸元
種類・シリンダー数 シングルターボチャージャー付可変圧縮比4気筒16バルブ
総排気量(cc) 1,997(8:1CR)~1,970(14:1CR)
ボア×ストローク 84.0×90.1mm(8:1CR)~84.0×88.9mm(14:1CR)
圧縮比 8:1~14:1(可変)
最高出力(HP/rpm) 268(200kW)/5,600
最大トルク(lb/ft/rpm) 280(380N・m)/4400
エンジン装備 ミラーボアコーティングシリンダー、可変バルブタイミング(吸気電動可変/排気油圧可変)、マルチフロー電子制御水路切り替え、2段可変容量オイルポンプ、シングルスクロールターボチャージャー&一体型排気マニホールド、電子制御ウエストゲートバルブ、アクティブトルクロッド(ATR)、ミラーサイクル
燃料供給装置 筒内直接噴射+ポート噴射
トランスミッション マニュアルシフトモード付エクストロニックトランスミッション
燃費(MPG,複合モード) 2WD:27(11.5km/L) 4WD:26(11.1km/L)


20年で電動化技術はここまで進んでいる! 「トヨタはEVを出せないのか?」の疑問に答える

EVへの対応がカーメーカーの命運を左右しそうな雰囲気の中、トヨタはプリウスで20年以上育ててきた技術の歴史を膨大とも言える実物とともに報道陣へ公開した。HVやFCVに続くピュアEVは出せるのか?

EVの要素は全てある。必要なのはニーズだ!?

 トヨタは11月の下旬に、同社の電動化技術の説明会をメガウェブのライドスタジオで開催した。昨今、ディーゼル排ガス不正で大揺れした欧州、あるいは中国では大気汚染を食い止めるため、電動化へ傾倒しているが、日産以外の日本メーカーはこれについていけるのか?という懸念もある。トヨタも、HVやFCVは積極的だが、ことEVになると明確なプランが見えず、どちらかというと消極的にすら思われるフシがあった。
 今回の説明会は、トヨタでもEVを作る要素は全て備えていることを改めてアピールするもの。初代から現行プリウスの20年に亘るメカニズムの進化をエンジンやHVトランスアクスル、バッテリーなどの主要コンポーネントをはじめ、内部パーツまで展示して伝えている。
 トヨタでは、初代プリウスの開発時から、将来は車両の電動化技術がキモになると考えて、コア技術の開発に取り組んできた。それには、モーター、バッテリー、PCU(パワーコントロールユニット)の3つの神器があるが、その技術開発と製造技術の「手の内化」を続けてきた。つまり自前主義を貫くことで、小型軽量で高性能なのはもちろん、低コストで高品質な製品づくりの基礎を築いてきた。例えば、PCUのパワー素子を切り出すシリコンウェハーは、初代より工場を立ち上げ内製化している。
 ピュアEVでも3要素はHVで使われているものと同じで、現にeQやFCVのミライは既存品を流用したところからも、EVをいつでも作れるだけの技術と部品はある。ただし、大量のバッテリーを搭載して高価で重くなるのでは、ユーザーのニーズから離れてしまい成功しないのでは?というところでベストではないと考えている。折しもパナソニックとの車載用電池事業での提携が発表。いよいよ本気になってきた。

  • 1997年初代プリウス
    世界初の量産HVとして歴史の1ページを作った初代プリウスのカットモデル。10・15モード28.0km/L(最終型は31.0km/L)。キャビンはゆったり目だが、リヤシート背面にHVバッテリーがあり、トランクも狭め。

  • 2015年4代目プリウス
    現行プリウスはJC08で37.7~40.8km/L。HVバッテリーはリヤシート座面下へ。トランスアクスルの平行軸化やパワーコントロールユニットなどの小型化で、12V補機バッテリーもエンジンルームに配置。

  • HVもFCVもEVと共通技術がある
    EVに必要な3要素の、モーター、パワーコントロールユニット(パワー半導体)、バッテリーは、HVをはじめPHVやFCVでも使用されていて、設計や製造の技術は整っている。

  • 性能向上とコスト低減を同時に
    HV化で圧倒的な燃費性能を実現した上で、モデルチェンジごとに着実に数値を更新してきた一方で、コストは2代目で半減させ、4代目で初代比1/4に。普及させてこその環境技術を実現。
    プリウスの18年間にみる主要コンポーネントの進化

プリウス18年間にみる主要コンポーネントの進化

パワーコントロールユニット
18年で出力密度は2.5倍体積は48%に

PCUはHVの直流高電圧を三相交流にしてモーターの制御を行う部品。初代のTHSはシステム電圧が288Vで体積が17.4L。2代目ではTHS-2となり昇圧機能が加わった。現行は、600Vで体積8.4L。

バッテリー
体積、質量ともには3割前後へ

初代後期~3代目ではラゲッジスペース下に配置され、現行ではリヤシート座面下へと移り、荷室容量を拡大。現行のリチウムイオンは体積30.5L、質量24.5kgで3代目と比べても体積24%、質量40%の小型軽量化を達成。

モーター
出力密度4倍、容積半分回転数は3倍

初代は駆動電圧が低いため電流が大きく、モーターも大きめ。放熱対策にも苦労の跡が見られる。THS-2からは駆動電圧アップと減速駆動で小型高回転化へ。初代比での出力密度は現行で4倍。質量や体積は約半分。

バッテリーの技術進化とコストが最大の課題に
初代前期は筒型で後期は角型に。2代目では、アルミラミネートを設置して放熱性能を向上し、内部抵抗低減も行っている。また、4代目では入力の性能が大きく向上し、リチウムも用意。今後も性能向上とコスト削減が課題。

  • 初代

  • 初代MC後

  • 2代目

  • 現行リチウム

シリコンウェハーは初期から内製で開発
SiC化は2020年を予定
パワーコントロールユニット内にある、パワー半導体の元になるのがシリコンウェハー。こちらもハイブリッド用に特化したものをトヨタで内製している。より効率の高いSiC型は2020年の実用化を目指している。

トヨタには、EVを作るためのコンポーネントと技術は揃っている

  • FCVのミライはRX450hのモーターを使用
    ミライはバッテリーが水素燃料電池+ニッケル水素で、動力部に関して言えばEVと同じ。RX450hの4JMモーターとパワーコントロールユニットを使っており、出力とトルクは113kW(154PS)、335N・m(34.2kgf・m)。これで1.8トンのボディを走らせている。

  • eQ(2012年)プリウスの初代PHV用バッテリーとクラウンシリーズのクラウンHV用モーターを使う
    iQベースのEV。バッテリーはプリウスPHV(30型)のリチウムイオンバッテリーでセル数を3倍に増量して搭載。モーターはクラウンHV、PCUはプリウスから。航続距離は100km(JC08)。トヨタのEVは現在コムスとiRoadのみ。

将来の住み分けは?

EVはニーズや規制をみながらHVやFCVと共存
パワーソース別の住み分けイメージでは、EVはコミューターや近距離用途に限られると考えられる。一航続距離が伸びても充電時間を考慮すると連続走行は難しい。長距離、大型では、FCVを推していく考え。HVやPHVもまだまだ主力の座をキープしそうだ。


提供元:月刊自家用車


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