NEW 911GT3RSは最新が最良か？

【本記事は2015年12月にベストカーに掲載された記事となります。】多岐にわたる911のグレード展開の中、サーキットでのスポーツドライビングを視野に運動性能を際立てたモデルといえば「GT3」系。環境性能向上の策として、標準的位置づけの「カレラ」系も小排気量＆ターボの新エンジンが搭載される中、GT3系は高回転・高出力のNAユニットを搭載するRRという伝統的な911の成り立ちを維持し続けてもいる。

そのGT3系の中でも、最もサーキットスペックを重視したカリッカリのグレードとなるのがGT3RSだ。RSとはレンシュポルト＝レーシングスポーツの意味で、ポルシェがお歴々の強烈なスポーツモデルにのみ与えてきた称号。言い換えれば便宜上ナンバーも付くしエアコンも用意するけど、サーキットを走ること以外はオマケのようなもんですからとメーカー自ら言い放っているようなブツだ。それゆえ、写真のカーボンシェルの軽量フルバケットや幾重にも斜行したロールケージは標準装備。走りの性能面においても標準状態でほぼすべての機能が盛り込まれている。

搭載されるエンジンはGT3の3.8Lフラット6をベースに4Lへと拡大。パワーは500psを8250rpmで発揮する。組み合わせるミッションは7速PDK（DCT）のみ。ルーフパネルをマグネシウムに、リアウインドウをアクリルに置き換えるなど材料置換による軽量化も高所を中心に行われ、足回りもタイヤ幅含め徹底的に手を入れることにより、ニュル北コースのラップタイムは7分20秒とGT3に対して5秒強の向上をみている。

正直、現行型GT3の時点でパワーもハンドリングも凄まじすぎて公道無理の感があったが、そこにRSの称号が加えられたことで何が一番大きく変わったかといえば、それは間違いなくハンドリングだ。ダウンフォースの大幅向上もあって路面とのコンタクト感は明確に上乗せされており、動きの無駄がギリギリまで省かれたサス設定も相まって、GT3RSはRRの独特な重量配分をまるで感じさせぬままスパッと鼻先をイン側に寄せていく。進入時の姿勢作りやブレーキやアクセルでの荷重移動が操縦の情感である911にあって、このRSはあまりに速度域が高く、もはや素人レベルではDCTですらABペダルの操作に必死だ。アクセルを踏み込めばフラット6がバイクのような吹け感で9000rpm直前まで息継ぎ知らずの底なし加速を披露する、そんな速度域でも踏んでいくこと自体に安心感があるのは、メカニカル4WSによる補正の存在も大きい。

ともあれ、マシン側のカミソリレスポンスに追いつくことが操縦の第一関門となる911GT3RSは、ポルシェのなんたるかを最も端的に示すモデルだ。ちなみに小耳に挟んだ富士スピードウェイでのラップタイムはNA＆RRにして、GTRとまったく遜色がないほどの速さである。

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