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更新日:2019.01.27 / 掲載日:2017.11.28
レクサス最新のRC / RC Fの愉悦
スポーツラインに与えられるFコード。
レクサス史上最高のデザインと誉れ高いRC RCを前にすれば、BMW、メルセデス、アウディのドイツ御三家もかすむ。RCのデザインは独創的でカッコいい!
【本記事は2014年10月にベストカーに掲載された記事となります。】レクサスのスポーツラインに与えられるFコード。そのヒエラルキーはすでに販売を終了しているLFAを象徴的なアイコンとしながら、各車に設定される“Fスポーツ”、そしてIS Fが担ってきた“F”のふたつに分類されることは周知のこと。ライバルになぞらえれば、BMWにおけるMスポーツとM、メルセデスにおけるAMGパッケージとAMGの違いと同義とみて間違いはない。つまり、Fは動力性能からして明確にレギュラーモデルと別格のパフォーマンスを与えられるモデルとなるわけだが、前述のとおり、従来それはIS Fが孤軍奮闘で担ってきたカテゴリーだ。そのIS Fも5月には受注を、7月には生産を終了。今、この時点では空席となっている。が、レクサスはこのカテゴリーを諦めているわけではない。それどころか、選択肢を増やすのではという噂も巷間囁かれている。日本では10月下旬発表予定のRC Fが、どうやらその先兵となるのだろう。
2ドアスペシャリティクーペの空席を埋める
RC Fとモータースポーツ RC FはすでにスーパーGTに投入されていて活躍中。すでに発表ずみのRC F GT3は来年3月までにはデリバリーが開始されるハズでGT-Rに次ぐ国産2番目のGT3
RC Fの詳細を知るには、まずベースとなるRCの立ち位置と内容を把握することが先決だ。リトラクタブルハードトップを持つSCの販売終了以降、レクサスのラインアップでは途絶えていた専用デザインの2ドアスペシャリティクーペ、その空席を埋めるべくRCは企画された。と同時に、それはレクサスのスポーツイメージ、ひいてはレースフィールドでのイメージリーダーとしても活躍することが求められている。メカニズムに直接の関連はないものの、すでにスーパーGTでもRCFの名が浸透しつつあることをみても、その思惑は明らかだ。
パワートレーン
カーボンパッケージはノーマルRC Fより約10kg軽量化
RCのパワートレーンは車格的に類似するISに倣い3.5L、V6ユニットを搭載するRC350と2.5L、直4+2モーターユニットを搭載するRC300hの2つで構成される。いっぽう、スペシャルティという性格から、廉価な2.5L、V6の設定は見送られた。その各々にバージョンLやFスポーツなど、足回りや加飾を違えたグレード展開がなされるのは他のレクサス銘柄と同様だ。が、RCのシャシー構成はISのそれとは異なる仕立てになっている。エンジンコンパートメントを含めたフロント周りは現行GSのそれ、センターセクションには先代ISをベースとするオープンモデルであるISCのそれを用い、リアサスは現行ISのマルチリンクを用いるという混成型で構築される理由は、大きなエンジンを積むRCFへの発展性も前提にしたスポーツモデルとしてのサスペンション容量とボディ剛性の確保にあるといえるだろう。胴体部に用いたIS Cは、オープンボディゆえロッカー断面積がISの約2倍とクローズドクーペにはあり余るほどの基礎剛性を備えている。そこにレクサスの開発陣は着目したわけだ。
珠玉のV8ユニット 5L、V8は477ps/54.0kgmをマーク。IS Fよりも54ps/2.5kgmアップ
そのシャシーをベースに、RC Fはサスペンション周りの70%近くを専用設計として最適ジオメトリーと容量を確保、ボディにもブレースなどによる補強を加え、大入力に対応するボディを作り上げた。搭載されるエンジンは5L、V8の2UR-GSE型と型式こそIS Fと同様ながら、チタンバルブや鍛造クランクシャフトなど部材の軽量・高剛性化を推し進めた結果、そのほとんどが新設計の部品で構成。結果、レッドゾーンはIS Fに対して500rpm高い7100rpmとされ、54ps高い477psを7100rpmで発するスーパーカーにも比するほどの高回転型ユニットに仕立てられた。いっぽうで低負荷時にはアトキンソンサイクルを用いることで4.2L相当の燃費性能を実現するなど、環境性能にも進化の跡はみられる。
日常域での乗り心地や扱いやすさもリファイン
タイヤサイズはフロント255/35ZR19、リア275/35ZR19でフロントブレーキは380mm径を採用!
その動力性能をFRのドライブトレーンでいかにして支え、かつIS Fが叶えてきた安心して楽しく走れるという間口の広さと度量の深さを備えるか。そのためにRC Fは、スロットル開度や変速マネジメント、TRCやVSCの介入などを走行状況に応じて最適化する車両統合制御技術「VDIM」の更なる洗練に加え、これと連携するトルクベクタリングデフの採用や、上下Gでの荷重推移を織り込むABS制御など、各種デバイスをニュルを中心とした開発テストで磨きこんできた。’07年の発売当初は、剛性不足やリアサスのジオメトリー変化から操縦性に癖があるとされてきたIS Fは、その後たゆまぬ年次改良によって限界域のパフォーマンスだけでなく、日常域での乗り心地や扱いやすさもしっかりとリファインされてきた。特にザックスのダンパーを用いるようになってからの’11年型以降は、BMW M3やメルセデスC63AMGといった直接的なライバルとも伍する総合力を有していたといっても過言ではない。
スポーティネスを際立たせた象徴的存在
アクティブリアウイングで高速安定性が向上
RC Fはあくまでレクサスのスポーティネスを際立たせた象徴的存在であり、IS Fの後継というには立ち位置が違うというのがレクサスの見解だ。が、エンジンやミッションはもとより、車格に至るまでIS Fと類似しているのは確か。そしてその走りは、熟成極まったIS Fに対してもさらにひと回りは速く快適で、コントロール性にも長けたものとなっている。
アクティブリアウイングは80km/hでアップして40km/h未満でボディに自動格納。マニュアル操作も可能
VDIMの設定はより実戦向きとなり、サーキット走行に適したスポーツプラスモードにおいては滑り出す程度のリアスライドを許容、そこに至るまでのロール推移や制動バランス、タイヤの接地感も比例的に推移するなど、限界特性は確実に向上しているのがみてとれた。さらにVSCをカットすればハーフスピンの状態までデバイス介入を抑える隠しモードも用意されるが、その効果を3段階で独立設定できるトルクベクタリングデフを最もサーキット寄りに合わせても、その旋回感に唐突な巻き込みはみられない。振り回しの応答性はIS Fより確実に軽やかさを増しながらも、電子デバイスによる意図的なゲインは極力抑えられている。深みのある大人のチューニングがもたらされたのは、骨格からの限界能力が向上した点も大きいのだろう。
特筆すべきところ
エキゾーストは片側上下2本の左右4本出し
特筆すべきはいっそう磨きがかけられた5L、V8のフィーリング、サウンドだ。回転のシャープネス、トップエンドに至るまでの力の漲りようはISFを確実に上回り、高回転域へとパワーをぐんぐん伸びやかに乗せていく特性に合わせて、若干ハイトーンとなったエキゾーストサウンドがスポーツドライブに高揚感を添えてくれる。
速さのみではない気持ちよさという大きなアドバンテージ
Fのイメージカラーといえばブルーで、RC FではIS Fのエクシードブルーメタリックよりも濁りのない純度の高いヒートブルーコントラストレイヤリングを新規採用。
ライバルがターボを用いてのダウンサイジングを余儀なくされるなか、RC Fが大排気量NAでしか叶えられない官能性を継承できたのは、トヨタが主力市場でハイブリッド車を多数販売する=トータルのCO2排出量が抑えられているがゆえのことだろう。鍛えられたシャシーにこのエンジンが収められるRC Fは、ライバルに対して速さのみではない気持ちよさという大きなアドバンテージを築いたといえそうだ。