電光石火！！　『トヨタとはひと味違う？』スバルBRZはひと味どころじゃないぞ

【本記事は2012年1月にベストカーに掲載された記事となります。】スバルとトヨタが共同開発した期待のFRスポーツは、富士スピードウェイのGazooレーシングフェスティバルでトヨタ86の市販車がひと足早く公開された。そして、11月30日に開催された東京モーターショーのプレスカンファレンスで、スバルバージョンのBRZの市販車が姿を現わした。

スバルブースの一段高いところに置かれたBRZは、スバルならではのWRブルーに塗装され、インプレッサと同様に強いスポーツ性を醸し出した。トヨタとの共同開発とはいえ、その心臓に水平対向エンジンを宿している以上、スバル車であるとアピールしているようにも見えてくる。スバルの吉永社長が、「手軽に楽しんでいただける、敷居の高くないスポーツカー」と表現したBRZ（う～ん、アルファベットが泣き別れ、困った名前や）。ベーシックな骨格はトヨタ86と共通とはいえ、BRZはフロントマスクなどで86と差別化が図られている。ヘッドライトの形状は共通だが、ランプ内に配置されるLEDポジションランプの形状が変更され、86は内側に一直線に並んでいるが、BRZはランプを取り囲むようにコの字形に配置されている。下部バンパーもオリジナルな形状に変更され、センターグリルはスバルならではの“ヘキサゴンデザイン”を採用している。大きな変更ではないが、それでもスバルらしい表情が与えられ、六連星のバッジとWRブルーのボディカラーは、さらに個性を引き立てている。

■新たな水平対向エンジンBRZに搭載されるのは、新開発のFAエンジン。2L、水平対向4気筒の自然吸気だが、フォレスターに搭載されてデビューした、同じ2LのFB型と異なり、ボア86×ストローク86mmのスクエアなエンジン（FBはロングストローク型）となっている。高回転まで気持ちよく回りながら、低中速のトルクに優れたエンジンだ。トヨタが開発した次世代の直噴技術、D4-Sが組み合わされて、操る楽しさと環境性能を両立するものとなっている。エンジンサウンドも、気持ちいい音にチューニングされているという。ベストカースクープ班が入手した情報によると、JC08モードで6MT車が12.4～13.4km／L、6AT車で12.4～12.8km／Lを達成しているという。これは開発中の数値なので、’12年春の正式な発売までには、さらに向上するはずだ。

■図面を引いたのはスバルスバルサイド、BRZの開発主査は、増田年男氏にトヨタとの共同開発で完成したトヨタ86／スバルBRZの完成度について尋ねたところ、「ディメンションからきちっと作っていったので、いいクルマができた」と、満足げに語った。「水平対向エンジン、それもターボのないNAのメリットを生かすために、最大限低く、ボディの真ん中寄りにエンジンを搭載。FRとしては、少し前が重め（フロント53：リア47）ですが、4輪が地面をとらえる感覚の、4WDメーカーであるスバルらしいFRができました」2Lターボで300馬力を超える4WDのインプレッサを開発したノウハウが、FRの開発にも役に立っているという。「FRらしい走りもでき、楽しんでもらえる領域が広くなっています。4WDの味がわかっているスバルファンには理解してもらえると思います」

トヨタとの共同開発で生まれたFRということで、両社の役割分担について聞いた。「こういうFRクーペは、スバルだけではなかなかプロジェクトになりにくいです。マーケットも小さいですし。トヨタさんと一緒だったからできました。しかし、図面を引いたのはスバルですし、生産する工場もスバルのものです。ボクサーエンジンのパッケージングを最大限生かしています。スバルの味で、いいクルマを作ろうと思ってできたFRなのです」一番気になるのは、トヨタ86とスバルBRZの違いだが、「エクステリアにも違いがありますが、乗り味も86とBRZでは異なるものになっています。サスセッティングやダンパーの減衰力を変えて、味を変えているのです」と、増田主査は語った。

どっちがいいのか早くテストしたいもんだが、東京モーターショーの会場で、関係者などに取材したところ、86に比べてBRZはロールを制限して、コーナリング時の安定性をより重視したセッティングになっているという。これは、増田主査が「4WDメーカーが作るFR」とコメントしたハンドリングを生むセッティングなのではないだろうか。なにしろ、リア駆動乗用車を久しく（スバル360以来42年ぶり）作っていないスバルだけに興味津々の仕上がりだ。

比べてわかった！！　BRZと86の違い実際にショー会場に並べられたBRZと86を見比べて、両車の違いをチェックした。前述したとおり、フロントマスクでは、ライト内のLED配置やバンパー下のグリルやフォグランプ周囲の形状が異なっている。フロントフェンダーのガーニッシュも86は「86」の数値を使ったマークが入るが、BRZはシンプルな造形となっている。17インチホイールは共通のデザインで、中央にそれぞれのメーカーのマークが入る。BRZのリアには、BRZのエンブレムが入るが、86には特にエンブレムは見あたらなかった。

BRZにはリアスポイラーが取り付けられているが、これは上級グレードに装着されるオプション装備で、ボディ下を整流するアンダーパネルとのセットなっている。これによってCD値0.27を達成する

WRブルーのカラーリングはBRZ専用色。その代わり、86で採用しているオレンジ系の色は設定されない。

インテリアに目を向けると、ダッシュボードやセンターコンソールの形状は共通だが、86がツートーンのスポーティなデザインを採用してるのに対して、BRZは落ち着いたブラックを基調とした内装として差別化を図っている。さらにメーターパネルも異なるデザインを採用。スバルはシルバーの専用加飾パネルやデジタル速度計、アナログの回転数計が組み合わされる。走りに重要なダンパーはショーワ製を採用。これは86と同じだが、減衰力の設定が異なるため、サスセッティングとの組み合わせで異なるハンドリングを生み出しているという。スバルは’12年よりスーパーGTのGT300クラスにBRZで出場することを発表しているが、その開発車両も公開された。BRZが加わって白熱するGTが楽しみだ。

Powered by ベストカー