見て、触って、乗りまくってわかった！！　JUKE　日産ジュークに似合う人はどんな人？

【本記事は2010年8月にベストカーに掲載された記事となります。】ジュークというクルマは普通に要約すれば「日産の新しいコンパクトSUV」ということになるんだろうが、そんな簡単に片づけられないユニークなキャラクターを持っている。そもそも、SUVというのはオフロード4WDから派生した多目的車ということになっているが、最近はそれに“クロスオーバー”なんて修飾語がついて、ますますなんだかわからなくなってきてる。現実にはクロスオーバーSUVというジャンルに「なんかフツーとは違った面白そうなクルマ」を全部いっしょくたに入れているのが現状。

まずはもう見た目がモノスゴく個性的。丸型ヘッドライトと高い位置に付いたキレ長のコンビランプがつくりだすフロントマスクは、そのへんの通行人がギョッとして振り返るほどのアイキャッチだし、16インチの大きなタイヤを履いて力強く張り出したフェンダーラインやストンと切り落とされたリアのブーメラン型テールランプのイメージも強烈。「フツーとは違う！」オーラを強く発信している。寸法的にもジュークは面白い。全幅は1765mm、全高は1565mmとたっぷり確保しているが、全長はキュッと切り詰めて4135mm。SUVというと「デカい！」という先入観があるが、この全長は同じBプラットフォームを使うティーダ並み。おまけに、ホイールベースも2530mmとティーダより70mm短い。

実車を見ると、デザインとあいまってこのパッケージングがギュッと詰まった凝縮感を醸し出している。なんだか、ボールがバット（やラケット）に当たった瞬間のエネルギーが蓄えられた状態という感じで、次の瞬間にシュパーッと動き出すような躍動感があるのだ。この感覚はスポーツカーとはまったく別の意味ですっごくスポーティな魅力がある。フェアレディZなどに代表される従来型スポーツカーは高価なこともあって、すっかり団塊世代のオモチャと化した。そのアンチテーゼとして、169万円から買えるジュークは大いに心強い。

業界の人は「若者のクルマ離れ」を嘆くけど、このくらいの価格でないといくら面白そうなクルマでもイマドキの若者は振り向かない。「価格はフツーなのに面白そう！」と期待させてくれるところこそ、ジュークの魅力の神髄なんじゃないだろか。室内に入っても、ジュークは退屈させない。誰もが「オッ！」と思うのは光沢塗装で仕上げられたセンターコンソールの存在感。デザイナーはこれを“タンク”と呼んでるそうだけど、イメージはまさにバイクのガソリンタンクがセンターにドーンと置かれている感じで、これとカラーコーディネイトされたシートやドアトリムがあいまって、「コイツはフツーとは違う！」という楽しさがある。

また、インパネでは“インテリジェントコントロールディスプレイ”が電子ガジェット好きの若者にウケそうな装備として注目。中央のディスプレイと2つのダイヤルが、スイッチひとつで走りの設定とエアコン調節にガラリと表示モードが変わる。それぞれ別に設定するよりディスプレイもダイヤルもずっとひろびろ使えるし、「ケータイはらくらくホンでないとダメ」という人でなければ楽しめると思う。

さて、まだ走りについてひとつも言及してないこの段階でも、ジュークは「価格のわりにはスゴク楽しめるよ」とおすすめできるんだけど、それじゃ走りが平凡かというと、さにあらず。コレがもうひとつのサプライズなんだけど、エンジン、ミッション、シャシーにそれぞれブランニューといっていいほどの改良が施されていて、走ってもそれをしっかり実感できるのだ。

まず、エンジンはHR15DEとティーダなどに搭載されるものと型式名こそ同一ながら、デュアルインジェクターやツインCVTCなどほとんどフルチェンジ並みの改良。実際に走ってみても、ティーダ＋5ps／0.2kgmというスペック以上のアドバンテージを感じるし、中速のトルク感、トップエンド付近のスムーズネスなど、しっかりと「あ、よくなってるなぁ」ということが実感できる。さらに、このエンジンと組み合わされる副変速機付きCVTは、ワイドな変速レンジが自慢の完全新設計。しかも、ジュークの場合ただ効率がいいだけではなく、走行モードを“エコ”に設定すれば高いギアで粘っていかにも燃費がよさそうな変速プログラムで走らせるし、“スポーツ”ではアクセル操作に機敏に反応してシフトダウンするアグレッシブな変速プログラムに変身。いろんなドライバビリティを体感できるところも面白い。

そのほかシャシーは前述のとおりBプラットフォームながら、フロントに井桁型サブフレームを入れたことに注目。安いクルマは乗り心地や操舵フィールがヘコヘコしがちだが、ジュークはここがかなりズシッと落ち着いた印象。205／60R16という大きなタイヤを履きながら、変なバタバタがなく、かなり上質な乗り心地を提供してくれる。そんなわけでこのジューク、デザインも走りもかなりの力作であるうえにお値段もお買い得という、売れ筋商品のツボをきっちり押さえたニューモデルであることは間違いない。現時点では2WDしかないけど、老若男女を問わず「ちょっと面白いクルマがほしい」という人に幅広く受けるんじゃないかと思いますねぇ。

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