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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.02

ベンツのクリーンディーゼル Eクラスステーションワゴン ブルーテックの実力

「日本で2番目」のクリーンディーゼルがデビュー

マフラーからは黒煙など見えるはずもなし。高速道路での走りも快適そのものでした

マフラーからは黒煙など見えるはずもなし。高速道路での走りも快適そのものでした

【本記事は2010年4月にベストカーに掲載された記事となります。】「ガソリンエンジンと同等のクリーン度を達成したディーゼル」を搭載した世界初の市販車となったX-トレイルの発売から1年半。やっと「日本で2番目」のクリーンディーゼルがデビューしてきた。こう書くと「ベンツE320CDIを’06年から売っていたじゃないか」と思うかもしれないが、E320CDIは、残念ながら「輸入車向けの優遇措置」をフルに使ったもの。1世代前の排気ガス規制しかクリアできておらず。現在日本で施行されているのは『ポスト新長期規制』と呼ばれている基準。すでにアメリカで施行されているTier2Bin5に適合や2014年より欧州で義務づけられるユーロ6と同等レベル。この規制をクリアしていれば、黒煙どころか排気ガスのニオイさえしない。E320CDIはひとつ前の「新長期規制」(ユーロ5レベル)対応であって、この基準をクリアしているクルマなら山ほどある。

エンジンは2L直4ディーゼルターボで173ps/36.7kgm。燃費は15.2km/L(MT)

エンジンは2L直4ディーゼルターボで173ps/36.7kgm。燃費は15.2km/L(MT)

しかし輸入車向けの優遇措置は期限切れとなりベンツもX-トレイルと同等の厳しい日本の排気ガス規制を乗り越えなくちゃならなくなったワケです。その手段として選んだのが「尿素SCR」。排気ガスに尿素水吹いてNOX(窒素酸化物)を還元しようというもの。すでにUDトラックス(旧日産ディーゼル)が実用化しており、触媒式より技術レベルそのものは低い。ちなみにX-トレイルとアメリカのBin5をクリアしたVWジェッタって触媒式。尿素SCRのメリットは、低い技術レベルでクリーンな排気ガスを実現できるうえ、安価な簡易型触媒を使えるためコストダウン可能なこと。デメリットが、少なくない量の尿素水タンク(E350CDIで24.5L)を積まなければならず、しかも切らしてしまえばエンジン始動不能になる点です。ただEクラス級のボディサイズを持っていれば尿素水タンクの搭載に困らないし(E350CDIはスペアタイヤのスペースに搭載している)、補給も2万km以上不要。「メルセデスケア」に入っていれば、定期点検の時に無償で補給してくれるそうな(1.89Lで1120円)。大型トラック用の尿素水スタンドが普及している日本ではデメリットを考えなくていい。

もはや遅い、うるさい、汚いは過去のモノ?

ポスト新長期規制、ユーロ6適合の3L V6ターボエンジンは最高出力=211ps/3400rpm 最大トルク=55.1kgm/1600~2400rpm 10・15モード燃費=13.4km/L

ポスト新長期規制、ユーロ6適合の3L V6ターボエンジンは最高出力=211ps/3400rpm 最大トルク=55.1kgm/1600~2400rpm 10・15モード燃費=13.4km/L

前置きはこのあたりにして試乗といきましょう! エンジンを始動すると、E320CDIより若干ディーゼルっぽい感じ。「カリカリカリ」というノッキング音も聞こえます。もちろん気になるレベルじゃありませんけど。Dレンジをセレクトしてアクセル踏むと、若干のターボラグを感じた後、トルクフルな加速が始まる。やはりガソリンの3.5L V6と比べ、動き出しの一瞬のみカッタるい感じでございます。ただ走り出してしまえば充分パワフル! フルに過給されていれば、1600rpmで55.1kgmという5Lガソリン車に匹敵するトルクを発生。高回転まで引っ張ることのない通常の交通モードなら「パワフル」。おそらくE350CDIのハンドルを握って「もっとパワーくれぃ!」と思う人は少数派だろう。エンジンの騒音/振動レベルも不満のないレベル。数少ない弱点を挙げるなら、「7速1200rpmくらいで巡航している状態からアクセルを少し踏んだ時のレスポンス」としておく。ベンツも充分認識しているらしく、間髪入れずロックアップ解除して回転を上げにいくのだが、やはりガソリンよりモッサリしてます。こらもうクリーンディーゼル+トルコンATの宿命みたいなもの。X-トレイルのATも味つけに苦労していると思う。

7速ATは、ステアリング内側シフト操作をステアリング裏に配置されたレバーとパドルによって行なうダイレクトセレクト、アームレスト前方のコマンドコントローラーによってHDDナビやオーディオを操作できるCOMANDシステムを装備

7速ATは、ステアリング内側シフト操作をステアリング裏に配置されたレバーとパドルによって行なうダイレクトセレクト、アームレスト前方のコマンドコントローラーによってHDDナビやオーディオを操作できるCOMANDシステムを装備

100km/hの高速巡航なら「かったるい回転域」を脱出しているため、快適至極。個人的にはロングドライブした場合、ガソリンよりディーゼルの音や振動のほうが疲れないと考えてます。長距離移動の多い使い方だとすばらしい相棒になってくれるんじゃなかろうか。驚くことにモード燃費はE320CDIより10%向上しているとか。ロングドライブなら15km/L以上走るということ。文句なしにECOでしょう。相変わらず「すばらしい!」と感心しきりだったのが、乗り心地の質感。Eクラスは右ハンドル仕様もドイツの工場で生産している。ガッシリ組み付けられたボディに、滑らかな動きをするショックアブソーバを組み合わせるというクルマ作りの王道を歩む。今回、E350の4MATIC(4WD)と、E250にも試乗したが、いずれも乗り心地フェチの私を深く深く満足させてくれました。1.8L直4ターボ(204ps/31.6kgm)を組み合わせたE250も相当好印象。E350CDIと同じくターボラグを感じるが、目の玉を三角にして追い越し車線かっ飛ぶような走り方をしなければなんら不満なし! 日本の自動車メーカーもこのくらいダイナミックなことをやらんとアカンでしょう!

マフラー出口はガソリン車よりきれい、かも?

排ガスは無味無臭。ペットボトルに排ガスを入れてももちろん無色透明。マフラー出口はガソリン車よりきれいかも。そんな感じがするほどキレイ

排ガスは無味無臭。ペットボトルに排ガスを入れてももちろん無色透明。マフラー出口はガソリン車よりきれいかも。そんな感じがするほどキレイ

最後に「絶対にニオイなんかしないって!」と言い張る私に、編集担当が「読者にわかりやすく、マフラーから出る排気ガスの確認をしている写真が欲しいんです」。テールパイプから出てるのは、人間の臭気判断能力に達しない5rpm以下のHC(炭化水素)と、無臭の窒素、二酸化炭素のみ。空ぶかししても同じ。クリーンです。気になる価格は、ワゴンが833万円、セダンが798万円。ワゴン同士の価格比較をすると、同じ3.5L V6のガソリン、E350ワゴン(272ps/35.7kgm)が885万円。3.5L V6のガソリンに比べ、52万円安く、ほぼ同等の動力性能を持つE300ワゴン(3L V6、231ps/30.6kgm)の68万円高。走行1万kmあたり燃料コストが6万円程度違うため10万km走ると60万円浮く計算。E250より164万円の割高ながら、絶対的な動力性能でE350CDI優勢。なかなか上手な価格設定だと思う。気になる人はぜひとも試乗してみてほしい。

X-トレイルディーゼルとどう違うの?

尿素水溶液(アドブルー)で、NOX触媒の直前でこれを噴射し、触媒内でNOXを窒素と水に分解するベンツのブルーテックに対し、X-トレイルディーゼルは、NOXを一時的に吸着するトラップ触媒を使い、燃料が濃い燃焼を瞬間的に行なうことで、排ガスの成分とNOXを化合させ、窒素、二酸化炭素、水を生成する違いがある。AT仕様は今夏に発売予定。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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