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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.02

CR-Zはスポーツカーの新しいかたちなのか?

ホンダの期待の大きさが感じられるCR-Z

【本記事は2010年4月にベストカーに掲載された記事となります。】待ち望んだ甲斐があったというもんだ。目前に淡路島、右手に紀伊水道、左手に播磨灘を望むここは四国の鳴門。そう、待望のCR-Zの試乗会が四国でも風光明媚な地として名高い鳴門を舞台にして行なわれたのだ。ここはワインディング、高速道路もありで、注目のハイブリッドスポーツにとってはこれ以上なし、というぜいたくな舞台。ホンダがCR-Zにかける期待の大きさが感じられる。

悪天候でもCR-Zを目の前にすれば気分も爽やか

これぞスポーツカー!!楽しさワールドクラス!!

これぞスポーツカー!!楽しさワールドクラス!!

ところが、ワシが試乗した当日は四国の山沿いでも雪が降るほどの悪天候ではないか。冷たい雨だけでなく、視界不良でせっかくの瀬戸内海も霞んでよく見えない。こうなると意気消沈ぎみ。ま、今日は運が悪かった、というしかあるまい。しかしだ、CR-Zを目の前にするとなぜか気分も爽やかになってくる。初対面ではないが、4080mm(全長)、1740mm(全幅)、1395mm(全高)というコンパクトな3ドアクーペながら、それ以上に大きな存在感をアピールしているのだ。「先進的で躍動感にあふれる高密度なデザイン」とはホンダのフレーズだが、まさにそんな感じ。人によってはもっとシンプルでスマートなほうがいい、といった意見もありそうだが、初のハイブリッドスポーツとしてはこれくらいのインパクトはほしいし、デザインのバランスも最近のホンダ車では一番いいと思う。しかも安っぽいイメージはない。未知なる走りのパワーを秘めたオーラみたいなものも感じさせる。ハッキリ言って、ワシは大いに気に入ったぞ。

走るためのコックピット

ステアリング回りに機能が集中して、近未来的なイメージを持つインパネとなっている

ステアリング回りに機能が集中して、近未来的なイメージを持つインパネとなっている

ボディカラーでいえば、ここは無難な白とかシルバー系とかは選ばず冒険したい。ちょっと昔っぽい感じのホライゾンターコイズパールや、ダークピューターメタリックは高級感があった(カラーの詳細は28ページ)。コックピットのデザインもいいではないか。ハイブリッド車にふさわしい、先進性とスポーツ車ならではの機能性が融合されたナイスデザインだ。そして手足と身体のポジションがピッタリとくるドラポジ、小ぶりでタッチもいいステアリングホイール、正面に位置する大型のタコメーターとデジタルスピードメーター、シフトレバー/パドルレバーの位置など、スポーツ車に一番大事な「走るためのコックピット」がキチンと構築されている。これは走りに集中できるだけでなく、アクティブセーフティという面でもきわめて大事な要素。当たり前のことなんだが、改めて評価したい。

動力ユニットはどうなの?

インサイトの1.3L+モーターユニットを、フィット用1.5Lエンジンに換装。システム出力はMTが128ps(114+14ps)/22.8kgm(14.8+8.0kgm)、CVTが127ps(113+14ps)/22.7kgm(14.7+8.0kgm)

インサイトの1.3L+モーターユニットを、フィット用1.5Lエンジンに換装。システム出力はMTが128ps(114+14ps)/22.8kgm(14.8+8.0kgm)、CVTが127ps(113+14ps)/22.7kgm(14.7+8.0kgm)

エンジンとモーターによるハイブリッドのパワーユニットは期待どおりの仕上がりぶり。エンジンはフィットベースの1.5Lをハイブリッド用に改良して114ps/14.8kgm(MT)、113ps/14.7kgm(CVT)を発生させ、これに14ps/8.0kgmのモーターを組み合わせて124ps/17.7kgmのシステムパワーを発生。インサイトのハイブリッドユニットよりはるかにパワフルだが、スペック的には特筆するほどではない。ただしトルクは2L、NAに近いもので、しかもモーターの特性でごく低回転から発生する。ちなみにわずか1500回転でシステムの最大トルクを発生。よって、発進時にアクセルをグイと踏み込めば即、最大トルクを発生する、と思っていい。そんなわけだから、発進時や低速からの加速はかなり強力だ。このあたりは2L、NA以上の力強さ。ちなみに0~100km/h加速はMTで9.7秒、CVTは10.2~3秒とのこと。80~120km/hの追い越し加速になると速いのはCVTのほう。これはCVTのメリットがハッキリと出るケースだが、MTとCVTを走り比べても一般路を普通に走るレベルならやはりCVTのほうが力強さを感じることが多かったのだ。とはいえこのエンジン、高回転もけっこう元気。CVTは6000回転あたりでシフトアップ、MTなら6500回転あたりでリミッター作動だが、ハギレよく吹け上ってしまう。嬉しかったのはサウンドチューンされていたこと。けっこうビートのきいた、にごりのないドライな音で気持ちよかった。聞いて驚いたのは最高速が200km/hに達すること。もちろんリミッター解除してのメーカーテストだが、優れた空力性能の威力が大きいとのことだ。

ハンドリングはどうか?

ハイブリッドで最高レベル!

ハイブリッドで最高レベル!

これぞCR-Z、といった走りをみせたのはやっぱりハンドリング。低重心、ワイドトレッドでコンパクトなボディだから、それなりの予想はできたが、実際に乗ってみると実に「味深し」だったのだ。箱根のワインディングでチョイ乗りした時も絶妙なハンドリングに感心したものだが、今回、低温のウェット路を一般路、ワインディング、そして高速道路とたっぷり走らせてさらに実感した。軽快でキビキビしたハンドリング、そんなイメージも確かに正しいが、懐が深く、上質な走り、といった要素がかなり強いのだ。四輪各々のグリップ変化が少なく、かつ前後輪のグリップバランスも優れていて軽快ながら安心感の高い走り。さらに195/55R16サイズのタイヤも低燃費特化タイプでなく、ウェットグリップも充分に高い。ハイペースでワインディングを思いどおりにトレースしてくれるハンドリングはとても気持ちよかった。荒れた路面でも挙動は終始穏やか。EPSのフィールも気に入った。乗り心地はカッチリしているし、直進性を高めるセルフアライニングトルクの制御も投入されて、ダイレクトかつリニアなフィール。聞けばレジェンドクラスの大容量ブラシレスモーターを採用とのことだ。ブレーキのフィールもごきげんだ。ペダル剛性がとても高く、しかも踏力に応じてリニアにきいてくれる。スポーツドライビングの要であるブレーキングテクニックも、これなら十二分に発揮してくれる。ハイブリッドカーで最高レベルといえる。予想を上回るCR-Zのハンドリングの仕上がりぶりはごきげんのひと言だったぞ。「特に凝ったモノは採用していません。しっかりしたボディができたことと、バッテリーの搭載位置の関係で低重心化とほぼ6対4のFFとしてバランスのいい重量配分となったことがいい結果となりました」と、実験担当者の話。ちなみにダンパーもインサイトと同じ構造のショーワ製とのこと。走りのいいクルマ作りは「まず土台ありき」というワケだ。言うまでもないが、CR-Zは乗り心地も意外なほどいい。インサイトやプリウスとは比較にならないレベル。比較的ソフトなサスチューンもあるが、かなりしっかりした土台になるところが大きい。またタイヤの空気圧も燃費を重視する高めの設定とするが、CR-Zはタイヤ本来の性能が発揮できるF2.1kg/cm2、R2.0kg/cm2に設定。インサイトはFRとも2.3kg/cm2と高めだ。

CR-Zは「スポーツカー」?

では、CR-Zをスポーツカーと呼んでいいのか。これはもうれっきとしたスポーツカーではないか。まずはこのスタイル、どこから見てもスポーツカーそのもののデザインだし、コクピットもしかり。そしてぴたりと収まるドラポジ、操作しやすいステアリングやペダル類、シフトレバー、視認性重視のメーター類など、走り最優先の仕上げだ。さらに走らせてみれば、ダイレクトでリニアリティに富んだハンドリングが味わえ、コーナリング性能も不足なし。ブレーキ能力、フィールもOKだ。さらに6速のMTモデルも設定されている。気になるとしたらエンジンパワーがもの足りないことだが、サーキットでタイムを追求するのでなければ充分満足レベル。それより何より、CR-Zは走らせて楽しい。スポーツカーはやっぱり楽しくなくちゃあ。欲をいえば確かにもっとパワーがほしいが、ワシはハッキリとスポーツカーだと言いたい。

この先どう進化するのか?

CR-Zは今後の進化も楽しみではあるが、おそらく、6~7年間はモデルチェンジしないだろうから、その間に数回はモデル進化しても不思議はない。一番可能性の高い進化は一段とスポーティなサスを装備したモデルの設定だろう。乗り心地は若干固くなろうが、強化サスとハイグリップタイヤをセットし、ブレーキもより強化してあればベスト。素性のいいCR-Zだけにその気になれば簡単。スパルタン方向に振ったモデルも考えられる。要は快適装備を取り除いた軽量モデルで、先に記した強化サス仕様とセットも考えられる。軽量化により走りのポテンシャルもアップし、走りを本格的に楽しめるはず。さらにはCR-Zでモータースポーツに参加したいといったユーザーにも喜ばれるだろう。本格的な進化となればやっぱりパワーアップ。エンジンか、モーターか、燃費を悪化させずに価格も上げないでパワーアップするには高いハードルとなるが、その時は必ずやってくる。

そして価格は?

デザインと質感の高さ、プレミアムな走りながら226万8000円(β)、249万8000円(α)の価格は、お買い得。これなら若者でも頑張れば買える。実際、若者にもけっこう売れている。そのワケはハイブリッドというゲーム的、バーチャル的なイメージもあろうが、誰が見ても「カッコいい!」と思わせる、新感覚のデザインにある。ワゴンやミニバンが氾濫してしまった今の時代、ひときわキラリと輝いているCR-Zの存在は若者にだって魅力的なのだろう。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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