新車試乗レポート[2017.11.20 UP]

【試乗レポート】新型ジープ コンパスが大変身を遂げてコンパクトSUV戦線に参入!

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

 今日、アメリカ車の販売台数は日本では多いとは言えないが、そんななか堅調にセールスを伸ばしているブランドがあることをご存じだろうか。日本でも知名度抜群の「ジープ」だ。
 2016年は前年比131.7%となる9392台を売り上げてブランド別登録台数で9位につけている(ちなみに1位はメルセデス・ベンツで6万7386台、2位はBMWで5万571台)。2017年は10月までの統計で7779台を販売。このままいけば昨年の記録を超えることになるのは間違いない。
 そんなジープのラインアップの中でも稼ぎ頭になっているのは、「ジープ・オブ・ジープ」と呼ばれるラングラー。本国ではもうすぐ新型が公開される予定となっているが、日本では年々販売台数が増えている息の長いモデルだ。
 しかし、ジープ販売台数拡大の立役者はそれだけではない。時代の流れに従ってFF乗用車系のモノコックボディで作られた“コンパクトなジープ”も登場しておりその存在感はますます大きくなっている。2015年に日本で発売された、全長わずか4.2m強の小型モデル「レネゲード」は大ヒットを記録している。今回、フルモデルチェンジを受けて2代目がデビューした「コンパス」はそれよりもひとまわり大きいものの、「チェロキー」よりは小さな全長4.4mm(先代より75mm短くなった)のコンパクトなジープである。

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 実車に触れてよくわかったこと。それはちょうどいい車体サイズだということだ。3サイズは全長4400mm×全幅1810mm×全高1640mm。弟分のレネゲードは確かに運転しやすいけれど、ファミリーでキャンプに出掛けるなどアクティブに使おうとすると後席や荷室の広さに若干物足りない印象を受けるかもしれない。しかしひとまわり大きなコンパスなら、全幅こそ1800mmを超えるものの扱いにくいというほどボディは大きくなく、運転にそれほど気を遣わなくて済む。それでいて荷室は通常時の床の奥行きが840mmもあるから頼もしく、使い勝手のいいモデルなのだ。都会生活にもマッチングがいいだろう。
 ちなみに、荷室の床面は高さを3段階(仕様によっては2段階)に調整可能。アメリカのクルマも使い勝手を高めるためにそんな細かい技を組み込む時代になったのだと実感させられた。

全身に行き届いた質感の向上

 しかし、そんなコンパクトモデルにも関わらず、独特の存在感と高級感を感じるのはデザインの力によるものだろう。
 エクステリアデザインの責任者であるクリス ピシテリ氏によると、初期スケッチを描くにあたってインスピレーションを受けたもののひとつが「SR-71ブラックバード」という超音速偵察機なのだという。その躍動感や力強さを生かし、モダンさやプレミアム感までバランスしてエクステリアがデザインされたという。
 フロントはパッと見たところジープの最上級モデルである「グランドチェロキー」と見違えそうになるほどの存在感。これは、購入する側にとってはうれしいところだ。先代コンパス、特に初期モデルはその点が少々物足りなかっただけに、このプレミアムな雰囲気を待ち望んでいたひとも多いだろう。
 インテリアも最近のジープらしいアクティブかつプレミアムな雰囲気だ。スイッチの形状やクロームの使い方は急激にクオリティがアップした現行グランドチェロキー以降のジープの流れに従ったもので、欧州のコンパクトSUVと比べても見劣りしない。

 インパネは中央上部に8.4インチ(「Sport」は7インチ)のディスプレイを組み合わせ、中間グレードの「Longitude」やトップグレードの「Limited」にはナビゲーションシステムも標準採用。近年のジープらしく握りが太く触感のいいレザーを巻いたステアリングホイールの奥には中央にマルチディスプレイを内蔵したメーターが鎮座している。メーターはクリア感とポップな雰囲気のデザインで、オフロードブランドのジープとはいえ、室内に強烈なワイルドさがないことも改めて実感させられた。また、ディスプレイの表示がしっかりと日本語化されていることも「日本市場はオマケではない」とFCA(ジープをブランドを擁する会社)からのメッセージと感じさせられたのはきっと気のせいではない、と思う。
 そのうえパーキングブレーキが電動式になったり、「Limited」だけとはいえ、渋滞中に停止保持までおこなう追従式のクルーズコントロールを採用するなど電子メカニズムも積極的に搭載されている。まさにジープの変化を目のあたりにしているような気分になった。

 変化といえば、「アメ車」という先入観を持って乗り込むと驚くのが、フロントシートの着座感。表皮に張りがあって座り心地は固め。これはアメリカだけでなく世界中をマーケットとすることや、FCAとしてグローバルな開発体制で作られたことが影響しているのだろう。いずれにせよ長時間運転でも疲れにくい座り心地だ。
 いっぽう後席は、このクラスとしては足元がゆったりしている。2人掛けを重視したシート形状だが、左右席の座る部分に関しては凹凸が少なくフラット。またフロントシートの背もたれ上部の幅が絞り込まれたデザインだから前方視界が広く開放感が高いのも印象的である。

 さて、パワートレインは1.4Lターボや2.0Lディーゼルなどマーケットによって複数のラインアップがあるが、日本仕様は全車とも2.4Lの自然吸気ガソリンエンジンを搭載。グレードによって駆動方式が異なり「Sport」と「Longitude」は前輪駆動(FF)、最上級グレードの「Limited」は4WD。トランスミッションは前輪駆動車が6速AT、4WDモデルはなんと9速ATと駆動方式で異なっている。
 今回試乗したのは中間グレードの「Longitude」で、6速ATを組み合わせたFF。結論からいえば、高速走行の安定感が抜群でそのままロングドライブに行きたくなる衝動にかられたほどだった。1.5トンに満たない車両重量だから2.4L自然吸気エンジンでも動力性能は十分で、6速ATが適切なギヤを選んでくれるから加速感も爽快。挙動は「ジープ」といういかにも悪路走行重視のイメージを裏切りつつ、かつてのアメリカ車とは異なって芯がしっかりと通った安定性も好印象で、まるで欧州車のようだ。グランドツアラー的乗り味と言ってもいい。これは多国籍化のいい面がしっかり出ていると判断できた。
 いっぽうでこれではジープブランドなのにオフロードは得意ではなさそうという不安が頭をよぎったのだが、その心配は杞憂に終わりそう。この道は(スタックを心配して)自分の運転では入り込みたくないなと思えるようなオフロードを走っている開発におけるテスト走行の写真を見る限りは、よほど激しく悪路を走ろうという人以外は心配はいらないだろう。もちろん4WDモデルの話ではあるが。
 ところでグレードをどう選ぶべきか。4WDがほしいというならば最上級グレードの「Limited」と100台限定の「ローンチエディション」が選べる。Limitedの価格は419万円と「Longitude」に対して68万円高いが、レザーシート、バイキセノンヘッドライト、前面衝突警報(警告だけで自動ブレーキではない)など安全装備、プレミアムサウンドシステム、そして4WDまで備わっての価格差は納得できる。ローンチエディションは、Limitedに通常27万円でオプション設定される「ラグジュアリーパッケージ(サンルーフとパワーリフトゲート)」を装備しながら、Limitedより10万円高でリリースされ、お買い得感をアピールする。
 ちなみに4WDシステムは必要な時だけ後輪へトルクを送るオンデマンド式だが、状況によっては1輪に100%の駆動力を送れるというのはさすがジープだ(駆動系の負担が大きいので一般的な都会派SUVはおこなえない)。
 2WDで選ぶのであれば、オススメは「Longitude」。「Sport」に対してカーナビが標準採用されて機能性がアップし、革巻きステアリングホイールなどでインテリアの質感も向上、17インチタイヤ&ホイールにブラックペイントルーフやLEDテールランプも組みあわせてスタイリングも引き締められている。そんな装備追加にも関わらず、価格アップはSport比28万円高とお買い得感もある。

 今やジープもアメリカだけでなくグローバルで生産されているブランド。コンパスは世界4カ所の製造拠点を持ち、日本仕様は約150億円を投資して新設されたインドのランジャンガアン工場で製造されている。隅々までしっかりと細かく、ちょっと意地悪なくらいにチェックしてもインド製だからといって気になる部分がなかったことはきちんと報告しておきたい。


ジープ コンパス ローンチエディション(9速AT)
全長×全幅×全高 4400×1810×1640mm
ホイールベース 2635mm
トレッド前/後 1550/1540mm
車両重量 1630kg
エンジン 直列4気筒DOHCターボ
総排気量 2359cc
最高出力 175ps/6400rpm
最大トルク 23.4kgm/3900rpm
JC08モード燃費 9.6km/L
サスペンション前後 ストラット
ブレーキ前/後 Vディスク/ディスク
タイヤ前後 225/55R18

販売価格 323万円〜429万0000円(ローンチエディション含む全グレード)

ベースグレードの「Sport」。

ミドルグレードの「Longitude」。SportとLongitudeは共にFFで6速ATを搭載。上級グレード「Limited」と限定の「ローンチエディション」は4WDで9速ATとなる。

試乗会に先駆けて、発表会が行われた。

アメリカ本国のデザイン部門代表のクリス ピシテリ氏は「ルーフラインには特別こだわりました、サイズを超えたエレガンスとダイナミズムを感じてほしいです」と語る。

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