車検のときに「冷却水を交換した方がよい」と言われたけど、本当に必要?と悩んだ経験はありませんか。冷却水はエンジンを守る重要な液体ですが、日常点検では見落としがちです。

冷却水の点検や補充・交換を怠ると、オーバーヒートなど重大な故障につながる恐れもあります。最悪の場合、エンジン破損で高額な修理が必要になる場合も。

この記事では、冷却水とは何か、その役割や特徴、適切な点検や補充・交換方法、漏れた場合の対処法まで詳しく解説します。

車の点検時に冷却水も確認しよう

愛車を点検する際、エンジンオイルやタイヤの空気圧は気にしても、「冷却水」まではなかなか気が回らない方も多いのではないでしょうか。しかし、冷却水はエンジンを適切な温度に保つために欠かせない重要な液体です。

冷却水が不足したまま走行を続けるとエンジンがオーバーヒートし、最悪の場合は走行不能になる危険もあります。車の点検時には冷却水もしっかり確認し、必要に応じて補充・交換が大切です。

冷却水は、言わばエンジンの「血液」とも言える存在です。その役割を理解し、日頃から適切に管理すると、愛車のコンディションを保ち安心して走行できるでしょう。

冷却水とは?

冷却水とは?
冷却水とは、車のエンジンを冷却するために用いられる液体です。エンジンの熱を効率よく吸収し、ラジエーターで空気に放熱すると、エンジンの温度を適正に保ちます。

一般的には「クーラント」や「ラジエーター液」とも呼ばれ、エチレングリコールなどが主成分の液体です。エンジンルーム内のリザーバータンク(補助タンク)に入っており、ボンネットを開ければ冷却水の量や色を確認できます。

色は車種により緑、赤、青などさまざまに着色されています。

冷却水の役割

エンジンは燃焼と摩擦で高温になります。エンジン内部の燃焼温度は数百℃にも達しますが、冷却水が循環して熱を奪い、過度な温度上昇(オーバーヒート)を防いでいます。

冷却水がない状態では数分でエンジンが故障してしまうほど、冷却は重要な役割です。また、冷却水には防錆剤が含まれており、エンジン内部やラジエーター内のサビや腐食を防止する働きも担っています。

冷却水はエンジンを長時間正常に動かすための縁の下の力持ちと言える存在です。

冷却水の特徴

冷却水はエチレングリコール不凍剤を含んでいるため、氷点下でも凍らず、100℃を超える高温でも沸騰しにくい性質を持っています。また、緑や赤など目立つ色に着色されており、エンジンルームで他の液体と判別しやすく、漏れに気づきやすいよう配慮されています。

さらに防錆・防腐の添加剤が含まれ、エンジン内部やラジエーター内のサビや腐食を防ぐ効果もあるのです。

ただし、時間とともに少しずつ蒸発して量が減り、成分も劣化する消耗品です。そのため、定期的な点検と交換が必要になります。

濃度50%の冷却水は凍結温度が約-35℃にも達し、寒冷地でも凍りにくくなっています。

冷却水の種類

冷却水は大きく2種類に分けられます。古くから使われているLLC(ロングライフクーラント)と、近年主流のスーパーLLCです。

LLCは、赤や緑色に着色されており、寿命がおよそ2年程度の冷却水です。

スーパーLLCは、ピンクや水色に着色され、寿命が4~7年(メーカーによっては10年程度)と長寿命なのが特徴です。また、欧州車向けの冷却水には黄色系や無色のものも存在します。

基本的には、メーカー指定の純正クーラントを使用すれば問題ありません。異なる種類や色のクーラントを混ぜて使用すると性能が低下する恐れがあるため、補充の際は必ず同じ種類・色の冷却水を使いましょう。

冷却水の点検頻度

冷却水の点検は、少なくとも半年に一度は行いましょう。走行中の高熱で冷却水はごく少量ずつ蒸発するため、時間とともに徐々に減っていきます。

また、ホース類のヒビなどが原因で冷却水が漏れ、急激に減少する場合もあるのです。そのため、冷却水の残量は定期的に確認する必要があります。

定期的に残量をチェックして不足していれば補充し、色が濁り劣化が見られる場合は交換を検討してください。

交換時期は一般的に2年ごとが目安ですが、最近のスーパーLLCでは4~5年以上交換不要とされるものもあります。長期間交換せずに劣化した冷却水を使い続けると冷却性能が低下する恐れがあるため、適切なタイミングで交換しましょう。

もしオーバーヒートした場合はどうしたらいいですか?
車の走行中にオーバーヒートが疑われる症状(水温計がH付近になったり、ボンネットから蒸気が出たりしたら)が出たら、ただちに安全な場所に停車してエンジンを停止します。絶対に熱い状態でラジエーターキャップを開けてはいけません。エンジンが十分冷えるまで待ちましょう。冷却後に冷却水の量をチェックし、不足していれば静かに継ぎ足します。(非常時は水で応急補充も可)それでも正常に戻らない場合や再始動が難しい場合は、無理をせずロードサービス等に救援を依頼してください。

冷却水の補充方法

冷却水の補充方法
冷却水は循環しているため頻繁に減るものではありませんが、長期間の使用で自然に減ったり、トラブルで漏れた際には適切に継ぎ足したりする必要があります。

冷却水の補充自体はそれほど難しくありませんが、いくつか注意点を守って安全に作業しましょう。

手順としては、エンジンの状態確認→冷却水残量の確認→冷却水の補充→必要に応じたエア抜きの流れになります。それでは、実際の補充方法を見ていきましょう。

補充用の冷却水はカー用品店などで購入できます。車種に合ったものを選び、既存の冷却水と同じ色・濃度のものを用意しましょう。

エンジンの確認

エンジンの状態を確認します。

エンジンが高温のままでは絶対に作業しないでください。走行直後は冷却水やラジエーターキャップが高温になっており、開けると熱い冷却水や蒸気が吹き出す恐れがあります。

必ずエンジンを停止し、十分に冷えてから作業を開始しましょう。却ファンが止まり、ボンネットを触って熱くない状態になるまで少なくとも20~30分は待つと安心です。

車が平坦な場所に停まりサイドブレーキがかかっているかを確認してボンネットを開けます。念のため軍手などを着用し、安全に作業できる状態を整えます。

冷却水の残量を確認

次に冷却水の残量をチェックします。

エンジンルーム内には白や半透明のプラスチック製の「リザーバータンク」(補助タンク)があり、側面に「FULL(MAX)」「LOW(MIN)」などの目盛りが付いています。

タンク内の冷却水の液面が上限と下限の間にあれば適量です。液面が「LOW」や「MIN」のライン付近まで下がっている場合は、冷却水が不足している状態のため補充しましょう。

タンク内の冷却水の色も確認します。通常は緑やピンクなど鮮やかな色ですが、茶色く濁っている場合は冷却水の劣化やサビの混入が疑われます。

冷却水を適正量まで補充

冷却水の状態を確認したら、必要に応じて補充します。

リザーバータンクのキャップを開けましょう。補充用の冷却水を用意し、じょうご(漏斗)を使ってタンクに静かに注ぎ足します。こぼさないようゆっくり注ぐのがポイントです。

使用するのは車に適合した冷却水で、濃縮タイプの場合は事前に規定の割合(通常50%程度)に水で希釈してから注入してください。液面が「FULL」(MAX)のライン付近まで達したら補充完了です。(入れすぎないよう注意)こぼした場合はすぐに布で拭き取っておきましょう。

最後にキャップをしっかり閉めます。

エア抜き(必要に応じて)

エア抜きとは、冷却水の中に入り込んだ空気を抜く作業です。冷却水内に空気が残っていると循環が阻害され、エンジンを十分に冷やせなくなる恐れがあります。

少量の継ぎ足しであれば通常エア抜きは不要ですが、念のため確認しましょう。

ラジエーターキャップを開けた状態でエンジンを始動し、しばらくアイドリングさせます。冷却水に泡が出なければ問題ありません。泡が出る場合はそれが止まるまでアイドリングを続けて空気を追い出します。

エア抜き後はエンジンを停止し、冷却水の量を再度確認して足りなければ適量まで追加してください。

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冷却水の交換方法

冷却水は長期間使用すると劣化して性能が落ちるため、定期的な交換が必要です。また、冷却水が濁っている場合や、ホース類の劣化で漏れが見られる場合も交換を検討します。

ただし、冷却水の交換は補充よりも工程が多く、少し手間がかかる作業です。古い冷却水を抜き、新しい冷却水に入れ替える際には、廃液の処理や念入りなエア抜きなど注意点も多くあります。

初心者にはやや難易度が高いため、可能であればディーラーや整備工場に依頼するのが安全でしょう。

ここでは参考として、基本的な交換手順を紹介します。自分で交換する場合は廃液の処理にも注意が必要です。抜き取った冷却水は環境に有害なため、自治体の指示に従って適切に処分しましょう。

エンジンの確認

交換作業でも、エンジンが十分冷めていることを確認します。

エンジンが熱い状態でラジエーターキャップを開けると、沸騰した冷却水が噴き出して大変危険です。必ず完全にエンジンを冷やしてから作業を始めましょう。

受け皿となるバケツやウエス、車体を持ち上げるジャッキなど必要な道具を準備しておきます。冷却水は有毒なため、ゴム手袋を着用するなど安全対策も忘れずに行いましょう。

冷却水を排出

次に古い冷却水を排出します。必要に応じて車をジャッキアップし、下に潜って作業できるようにします。

車の下に廃液受けのバケツを置き、ラジエーター下部にあるドレンコック(排出栓)を緩めましょう。車種によってはラジエーターホースを外して冷却水を抜く場合もあります。

ラジエーターキャップを開けると内部の圧力が抜け、冷却水がスムーズに排出できます。勢いよく冷却水が流れ出るため注意しながら完全に抜き取りましょう。

排出が止まったら、ドレンコックを軽く締めておきます。

冷却水経路を洗浄

冷却系統の洗浄を行います。排出後、一度ドレンコックを閉め、リザーバータンクから真水をゆっくり注いで冷却水路を水で満たします。タンクの8割程度まで水を入れたらエンジンを始動し、数分間アイドリングさせて水を循環させましょう。

その後、エンジンを停止して十分に冷めてから再びドレンコックを開けて水を排出します。この工程で冷却系統内の古い冷却水や汚れを洗い流せます。必要に応じて、水を入れて循環・排出する工程を2~3回繰り返すと内部がよりきれいになります。

排出した古い冷却水や洗浄に使った水は下水に流さず、バケツに回収して適切に処分しましょう。

冷却水を補充

最後に新しい冷却水を入れます。ドレンコックをしっかり締めたことを確認してから、新しい冷却水(車に合ったもの)を注入しましょう。

リザーバータンクまたはラジエーターの注入口からゆっくりと冷却水を入れ、容量いっぱいまで満たします。その後、エンジンを始動してエア抜きを行いましょう。方法は補充時と同様で、ラジエーターキャップを開けたままアイドリングさせ、冷却水内の空気を追い出します。

エア抜き後、冷却水の液量を再確認し、足りなければ適量まで追加します。最後にキャップ類を確実に閉めれば交換作業完了です。

車検時に冷却水は検査項目に含まれていますか?
車検の検査項目に、冷却水の品質や濃度の検査は含まれていません。そのため、冷却水が劣化していても直接車検に通らない原因にはなりません。
ただし、車検整備の際には整備士が冷却水の状態を確認し、劣化が見られれば交換を勧められます。一般に冷却水は2年ごとの交換が推奨されているため、車検のタイミングで新しいものに交換しておくと安心でしょう。
なお、車検当日に冷却水が極端に不足しているとエンジンの検査に支障をきたす可能性があるため、事前に適量まで補充しておくことが望ましいでしょう。

冷却水漏れで起こるトラブルと対処法

冷却水漏れで起こるトラブルと対処法
冷却水漏れは、ポタポタ垂れる明らかなものから、じわじわ減るだけで気づきにくいケースまで様々です。

冷却水が漏れるとエンジンを十分に冷やせなくなり、放置すればオーバーヒートなど重大な故障を招く恐れがあります。原因や兆候を把握し早めに対処すれば大事に至るのを防げます。

ここでは、冷却水漏れの主な原因や症状、応急的な対処法と修理費用、さらに日頃から気をつけるべきポイントを紹介します。

冷却水が漏れる理由

冷却水が漏れる原因として多いのは、冷却系統の部品の劣化や破損です。ラジエーター本体の損傷、ウォーターポンプの故障、ホース類の劣化などです。

ラジエーターは小石の衝突や経年劣化で穴が開き、そこから冷却水が漏れる場合があります。ウォーターポンプも長年の使用でシール部分が摩耗し、隙間から漏れが生じる場合があります。

ホース類はゴム製のため年数が経つと硬化やひび割れが起こり、接続部などから冷却水が滲み出る場合もあるのです。冷却水を定期的に交換して品質を保つことが予防につながります。

冷却水が漏れているときの症状

冷却水が漏れているときの症状
冷却水漏れが起きると、いくつかの症状で異常が現れます。

まず、エンジンのオーバーヒート傾向です。水温計の針がいつもより高い位置(H付近)まで上がり、エンジンルームから湯気が出る場合があります。

次に、冷却水特有の甘い匂いが車内外で感じられる場合があります。漏れた冷却水が熱で蒸発すると甘い臭いを発するため、普段しない匂いがしたら要注意です。

さらに、駐車場の地面に冷却水のシミ(緑やピンクなど色付きの水たまり)ができる可能性もあります。また、エンジンルーム内のホース接続部付近に冷却水が滲んだ白い結晶状の痕跡が見られる場合もあります。

リザーバータンクの冷却水が通常より減っているのも漏れのサインです。定期的に液量をチェックして、短期間で液面が下がっているようなら漏れを疑いましょう。

冷却水が漏れた際の対処法

冷却水漏れが発覚したら、漏れの程度を確認しましょう。少量の漏れなら冷却水を継ぎ足しながら走行して早めに修理します。大量に漏れている場合は安全な場所に停車し、ロードサービスを呼ぶのが無難です。

どうしても自走しなければならない場合は、水を応急的に補充して最寄りの整備工場まで移動してください。また、市販の漏れ止め剤で一時的に漏れを抑える方法もありますが、あくまで応急処置です。

いずれの場合も最終的には故障箇所の修理や部品交換が必要になるため、応急処置後はできるだけ早く本格的な修理を行いましょう。

冷却水が漏れた際の修理費用

冷却水漏れの修理費用は原因によって異なります。目安として、ラジエーター修理・交換が約1万~2万円、ウォーターポンプ交換が約2万~5万円、ホース類の交換が約3千~6千円程度です。

症状が軽ければ比較的安価に修理できる場合もありますが、オーバーヒートによってエンジン本体にダメージが及ぶと、エンジン載せ替えで100万円以上かかる可能性もあります。

冷却水漏れは放置せず、早めの修理対応が結果的に費用を抑えられます。

日頃から注意すべきことはありますか?
日頃から冷却水の状態に注意しておくと、大きなトラブルを未然に防げます。定期的にボンネットを開けてリザーバータンク内の冷却水量をチェックし、減りが早くないか確認しましょう。また、駐車場の地面に色付きの水滴やシミができていないか気を配ることも大切です。
冷却水は約2年ごとの交換が推奨されているため、適切なタイミングで新品に入れ替えて常に良好な状態を維持しましょう。さらに、エンジンが熱いときにラジエーターキャップを開けない、車種に合った冷却水を使用する、といった基本的な取り扱いにも注意してください。こうした日常点検を習慣づけると、冷却水トラブルを未然に防げます。

まとめ

①冷却水はエンジンを適正温度に保つ重要な液体で、不足するとオーバーヒートの原因になる
②冷却水は定期的に残量を点検し、不足時にはエンジン冷却後に適切な種類の冷却水を継ぎ足す
③冷却水は劣化する消耗品のため、約2年ごとに交換して新品に入れ替える
④冷却水漏れは甘い匂いや液量低下などで察知でき、放置すればオーバーヒートにつながる。漏れを見つけたら応急処置後、早めに修理する
⑤冷却水の量や色を日常的にチェックし、駐車場の漏れ跡にも注意。エンジンが熱いときはキャップを開けない、適合する冷却水を使う等基本を守る

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