つり革といわれると、電車に立っている時に体を支えるものを想像する方は多いでしょう。しかし車にも一時期つり革が取り付けられていました。
中高年層であれば「懐かしいな~」と思う方もいるかもしれません。昭和の時代ではたびたび見られたシーンだからです。
なぜ昔の車にはつり革が取り付けられていたのか、その目的についてここでは見ていきます。
また、つり革の取り付けられている車は車検が通るのかについても、併せて解説します。
昔の車にはつり革が取り付けられていた?
昭和の車両を見てみると、つり革が取り付けられているものも少なくありませんでした。
なぜ車につり革をつけていたのか、その理由についてここで見ていきましょう。
最近では昭和の時代とは違った意味で、車につり革を取り付けるケースも増えています。その目的についても併せて見ていきます。
つり革が取り付けられた車両をよく見かけたのは、昭和1970~80年代と言われています。そして、つり革はリアバンパーの下あたりに取り付けられていました。
どのようなつり革が取り付けられていたかというと、いくつかスタイルがありました。黒いベルトで地面を引きずるようなものや、まさに電車に取り付けられているつり革のように車の後方に垂らしているような車種もあります。
ネットで検索すると、つり革つきの車の画像が掲載されているので、興味がある方はチェックしてみてください。
なぜ車両の後ろにつり革が取り付けられていたのでしょう?
その理由は「静電気対策」です。
当時つり革のことを「アースベルト」と呼んでいました。ベルトを地面に引きずることで、車の静電気を放電するために取り付けられていたのです。
車のボディを手で触った時に「バチッ」と静電気が発生したという経験をした方も多いでしょう。つり革はこの静電気を減少するためだったのですが、実際のところはあまり効果はなかったようです。
ただし、一部ユーザーの中には「電波状況が改善された」という方もいました。電波のノイズが多少減少する効果があったとされていて、無線やオーディオを車内で楽しむ方たちの間では、根強い人気がありました。
また、ドレスアップするためにつり革をつける方もいました。
上記の理由から、昭和時代につり革が取り付けられた車両が多かったとされています。
1980年代以降に生まれた方は、つり革のついた車が走っていたと言われてもピンとこないかもしれません。それは、アースベルトの人気は一過性のもので、1980年代以降は姿を消してしまったからです。
なぜつり革つきの車両が少なくなっていったかというと、別のアプローチで静電気対策する手法が出てきたためです。
例えば「ポールアンテナ」を使って空気中に放電する手法が注目を集めました。しかし、ポールアンテナの効果のほどは不透明でした。
次に流行ったのが「アーシング」です。2000年代の初頭に急速に普及した手法です。
アーシングとは、エンジンルーム内などにアースケーブルを追加する方法で、こうすることで従来よりも抵抗が減少して電流がスムーズに流れます。各部品の放電効果もアップするので、車本来の性能が発揮できるというものでした。
つり革を取り付ける本来の目的は、静電気対策のためとされています。しかし、中にはビジュアルを良くしたいという目的で取り付けている方もいました。
1980年前後につり革つきのドレスアップ車をしばしば見かけました。このようなカスタマイズをしていたのは、当時「街角レーサー」と呼ばれていた人たちです。
街角レーサーの間でトレンドになっていたのは、いかに車高を低くするかでした。つり革が地面に擦れてカラコロ音を出すことで「こんなに車高が低いぞ!」というアピールになったのです。
つり革は、一般的に車のバッグに取り付けられたものが多かったです。
しかし、中には車内や窓の近くにつり革を取り付けている車も当時は見られました。これは、いわゆる箱乗りをするためのものです。
箱乗りとは、窓から体を外に出して乗るスタイルを指します。
しかし、箱乗りをするとなると落下する恐れもあります。車を高速で走行した場合、コーナリングの時にそのままだと振り落とされる危険性がありました。そこでつり革を設置して握ることで、落下防止となっていました。
つり革つきの車は、1980年代以降姿を消しました。その後しばらく見かけなくなりましたが、近年つり革が装着されている車両も出てきています。
現在の目的は、かつてのものとは全く異なります。助手席などにつり革を取り付けられている車が多いですが、これは高齢者のためです。
高齢者の場合、足腰がどうしても弱くなります。車の乗り降りがきついという方も多いです。そこで、つり革を取り付けることで、乗り降りする時に体を支えられるようにしています。
つり革は通販サイトなどで取り扱っているので、購入して自分で取り付けている方もいます。
今度ますます高齢者の割合が高くなると言われているので、つり革つきの車も増加するかもしれません。
つり革の取り付けられた車両は車検的にOK?
高齢の家族が車の乗り降りが大変になってきたので、愛車につり革を取り付けたいと思う方もいるかもしれません。
ここで問題になるのは、つり革をつけたら車検に引っかかるのではないかということです。
ここからは、つり革をつけることが保安基準に引っかかるかどうかについて見ていきます。
また、車内に手すりのようなものがついていますが、これを外しても問題ないかについても解説します。
つり革がついた車であっても、車検には引っかかりません。
車検は、国の定める保安基準に合致しているかどうかを検査するために行います。
保安基準の中には、つり革に関する規定は特別設けられていません。項目がもともとないので、つり革の有無は検査結果に影響を及ぼさないということです。
しかし、つり革の有無とは別の意味で、車検に引っかかる可能性があります。例えば、つり革が地面を引きずっているような車の場合、かなり車高が低いと考えられます。
車高は車検の検査項目の一つです。地上面から9cm以上ないと検査に引っかかってしまいます。
もしつり革がついている車両で地面を引きずっているなら、車高が基準以上になっているか確認しておきましょう。
多くの車種で、天井近くのところに手すりのようなものが設置されています。コーナリングの時に体が振られるので、この手すりを握ることもあるでしょう。
しかし、中にはこの手すりを普段特に使わないので、取り外したいと思っている方もいるかもしれません。そんな時、手すりを外しても車検を通せるのかどうか、疑問に思うでしょう。
手すりを外して車検に出しても、車検が落ちることはないとされています。つり革同様、手すりも車検の検査基準での項目はありません。検査員も手すりの有無について、チェックをしないことが多いです。
必要ないならば、手すりを取り外してしまうのも選択肢の一つです。
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車検で引っかかる改造車の特徴
手すりを外したり、つり革を取り付けたりしても、車検で問題にはなりません。他にもいろいろと改造したいと思っている方もいるかもしれませんが、やり方によっては車検を通せない場合もあります。
ここからは、どのような改造車が車検に引っかかるのか、主な項目を7つ紹介します。
愛車をカスタマイズするにあたって、もともとのサイズから大きく変更するのはやめましょう。車検の規定の中で大幅なサイズ変更は認められていません。
サイズ変更する場合、許容範囲が決められています。
また車検では重量の規定もあります。
50kg以内のサイズ変更なら車検は合格です。それを超える変更は認められません。
100kgまでが許容範囲となります。それを超える変更は認められません。
改造車の中でよく見られるのが、タイヤの変更です。「ツライチ」と呼ばれる改造を行っている車種は、しばしば見られます。
ツライチとは、ホイール面をフェンダーと同じ位置まで持っていく手法です。
ツライチにすると、タイヤやホイールが車体からはみ出してしまいます。車体からタイヤがはみ出している車は、検査で引っかかってしまいます。
また、タイヤが車体からはみ出していると、安全上問題もあります。運転中に歩行者にタイヤが当たってしまう危険性があるためです。
また、車体やブレーキ機構と干渉してしまって、走行性能に深刻な影響が出る可能性もあるので、ツライチにはしないほうがいいでしょう。
ちなみに、平成29年にタイヤのはみ出しに関する法律が改正されました。最外側がタイヤとなる場合、10mm未満までははみ出しても良いと見なされるようになりました。
車検の検査項目には灯火類も含まれます。
灯火類は自分の車両がどこにいるのか、周りに知らせるために欠かせない装備です。また、ウィンカーなど今後の進路について周囲に知らせる機能も含まれます。
もしこの灯火類に問題があれば、周囲のドライバーを誤解させ事故を起こすきっかけになるかもしれません。
灯火類は種類ごとにルールが設けられています。灯火ごとにライトの種類も決まっているので、勝手に色を変えないように注意しましょう。
例えば、バックランプは白と決められています。少しでも黄色がかっていると検査で落とされるかもしれないので注意が必要です。
改造車の中には、窓ガラスにフィルムを貼り付けているものも多いです。しかし、着色フィルムを貼り付けている場合、検査に引っかかる可能性があります。
着色フィルムが全般的にダメというわけではありません。しかし、可視光線透過率70%未満の着色フィルムがついていると、検査では不合格です。
着色フィルムを取り付けたいと思っているのであれば、商品のラベルなどで透過率が検査をクリアできる程度確保されているか確認してください。
別にこだわりがなければ、着色フィルムを貼り付けるのはおすすめできません。特に夜間に走行する際、十分な視界を確保できないからです。事故リスクを少しでも低減するために、着色フィルムを使うのはやめましょう。
パーツによっては取り付けると不正改造車になってしまう可能性があるので、注意してください。特に歩行者が危険にさらされるようなパーツを取り付けていると、検査に引っかかります。
例えば、サイドミラーで衝撃緩和対策の施されていないものは、車検に引っかかる可能性が高いです。歩行者と接触した場合、より大きなけがを負う危険性があります。
また、ウィングを取り付けること自体は問題ありませんが、保安基準を超えるような大きなサイズのウィングを取り付けるのは禁止です。
他には装飾パーツで、とがった形状のものはNGとなります。
心配であれば、工場のスタッフなど専門家に相談するといいでしょう。
改造車の中でもよく見られるのが、ミュージックホーンです。「パラリラ」といったメロディになっているホーンを取り付けている不正改造車を、見かけた方もいるでしょう。
これは、車検で確実に引っかかります。音程が変化するホーンは警告を促す本来の目的から逸脱しているので、基準違反となるわけです。
また、音程が変化しなくても大きすぎると車検に引っかかります。クラクションのボリュームは、保安基準でも細かく規定されています。
前方7メートルの位置で、93~112dbの範囲内に収まっていないといけません。
近年では、ユーザー車検を希望する方も増えてきています。ユーザー車検は他で車検を受けるのと比較して、かなり費用を安く抑えられます。
しかし、ユーザー車検の場合は不合格に終わってしまう危険性があることも、あらかじめ理解しておくことが大事です。
ユーザー車検で不合格になる事例を見ると、利用者のミスによるケースも少なくありません。
例えば、ユーザー車検を受ける際に運輸支局に書類を提出します。その書類に記載されている項目に誤りがあると、車そのものに問題なくても不合格になってしまいます。また、書類の不備で不合格にされる場合も珍しくありません。
車検を受ける前に、必要書類はあらかじめ確認しておきましょう。
車検不合格になったら?
何らかの問題があって、車検不通過にされる場合もあります。車検が通っていないままだと、公道を走行できなくなります。
車検が不合格になったら、問題のある箇所を修繕して再検査を受ける形になるでしょう。その際の注意点について見ていきましょう。
車検で不合格になったのであれば、問題点を修正して再度検査を受けてください。その場で改善できるものであれば、当日受けても問題ありません。
車検は1日最大3回まで受けられます。不合格になった場合でも、後2回は当日検査を受ける権利があります。
当日中に整備が間に合わないようであれば、別日に再検査を受ける形になるでしょう。不合格になってから15日以内に検査を受けられるのであれば、限定自動車検査証の交付をお願いしてください。
限定自動車検査証があれば、不合格になった箇所のみの検査で済みます。
15日を超えてしまうと最初から検査がやり直しになってしまうので、なるべく15日以内に再検査を受けるようにしましょう。
不合格になった当日に再度検査を受ける場合、時間に注意してください。
運輸支局の検査受付の時間は決まっていて、営業時間とは異なる可能性があります。営業時間が17時まででも、検査受付は16時までという場合もありますので注意しましょう。
もし当日検査を受けるのであれば、午前中に初回の検査を受けるのがおすすめです。そうすれば、問題のある箇所を修正して、再度検査を受ける時間的余裕があります。
また検査場が混み合うことで、再検査が受けられないことも考えられます。一般的な傾向として、月末は検査場が混みやすいです。
再検査の可能性があると思うのであれば、なるべく月末を避けてスケジュールを調整しましょう。
また車検の期限ぎりぎりであれば、不合格の時に限定自動車検査証を発行してもらってください。車検切れになると本来公道を運転できませんが、限定自動車検査証があれば走行が認められます。