車の法定点検は業者に依頼しますが、点検後に以前はなかった傷がついたというトラブルもあります。点検でついた傷かもしれないけれど、業者に指摘しづらい…という方もいるでしょう。
プロの整備士であっても不注意などで傷をつけてしまう可能性はゼロではありません。点検で車に傷がつくのはどのような場合が考えられるかを見ていきます。
さらに、ついてしまった傷を業者は修理してくれるのか、こういったトラブルを防ぐにはどうすれがよいかも紹介します。
車の点検後に傷がつく場合もある
車の法定点検は一般的にディーラーや整備工場、カー用品店などの専門業者に依頼します。その依頼先から法定点検に出した車が戻ってきた際に、ボディや車内に傷や凹みがついていたというケースがあります。
法定点検に出す前にはついていなかった傷にすぐに気づくということもありますが、点検が終わって業者の元から離れ、自宅に着いてからもしくは翌日や数日経ってから気づくと、どうしようか余計に困るものです。
業者に言おうか迷ったり、言っても認めてもらえるか不安になったりします。こういった点検後に気づいた車の傷に関しては、どのようにしたらよいか考えてみます。
点検後に傷がつく原因
車の点検を業者に依頼し、点検終了後に車に傷がついてしまう要因は色々考えられます。
点検で、タイヤ交換やワイパーゴムの交換などパーツ交換を行う際に、使用する工具がボディに当たることもあるでしょう。
点検時に車をカーピット内に移動させる時にぶつけたり、こすったりする可能性もあります。
洗車をした際にも洗車に使うスポンジの劣化などが原因で、ボンネットなどの細かな傷がつくこともあります。
点検でタイヤ交換をした際によくあるのが、タイヤやホイールに誤って傷がついてしまうというケースです。
中でも、ホイールを古いタイヤから外して新しいタイヤに付け替える組み換えという作業ではタイヤチェンジャーという工具を使います。タイヤチェンジャーにホイールを差し込む際に固定用の爪によってホイールにこすり傷がつく可能性があります。
また、タイヤからホイールを外す際に使うのが、タイヤレバーという工具です。タイヤレバーを差し込む際に、ホイールに当たって傷がつくということも考えられます。
他にも、通常のタイヤ交換でレンチや電動式のインパクトレンチなどを使ってホイールごとタイヤを外す際に、誤ってホイールに工具をぶつけて傷や凹みができるという可能性もあるでしょう。
そして、タイヤのホイールが元から腐食、劣化している場合、タイヤ交換時に塗装がはがれてしまうということも考えられます。
ワイパーゴムも自然劣化しやすいので、定期的な交換が必要です。
ワイパーは「ワイパーの先のゴム部分」と「ゴムがはまりフロントガラスについた汚れをふき取るブレード」と「ブレードと車体をつなぐアーム」の3つで成り立っています。
ワイパーの種類によっては、ゴムの交換となるとゴムだけ外す場合とブレードごと外す場合があります。いずれにしてもアームを起こした状態で作業を行うのが一般的です。
作業時の不注意により、アームが倒れてしまうことがあります。アームの強力なバネの力により、フロントガラスにアームが叩きつけられ、フロントガラスにヒビが入る、もしくは割れる、欠けることはあり得ます。
通常はフロントガラスにウエスなどの布を敷いて作業を行えば、よっぽどのことがない限り傷はつくことはありません。しかし、ウエスを敷くのを忘れる、作業中にウエスがズレてガラスがむき出しの部分にアームが当たってしまう、という可能性もあります。
点検時に預かった車は、カーピットへ移動させます。また、ドアやトランクを開閉して車内のメンテナンスも行います。
その際に考えられるのが、不注意によりボディが柱や壁に衝突して凹みができる、こすってしまい傷ができるという可能性です。
ドアの開閉時に近くに置いてあった工具などに当たってしまう、手が滑って工具をボディにぶつけてしまって傷ができるということもあり得ます。
プロの整備士であっても、不注意で車を傷つけてしまう可能性はゼロではありません。特に狭いピット内では、十分な注意を払っていても不可抗力で車に傷ができることはあるでしょう。
車の法定点検を依頼すると、ディーラーや整備工場などでは点検終了後に洗車や車内清掃をしてくれます。無料の場合とサービス料に含まれている場合があります。
点検後の車の傷は、実はこの洗車が原因となる場合が多いです。
手洗いで洗車をする場合、スポンジを使ってボディの汚れを落とします。スポンジは洗車の度に新しいものに交換するわけではないので、劣化して硬くなっていることもあるかもしれません。古いスポンジに当たることで擦り傷ができることもあります。
また、屋外を走る車には雨風が当たり、ホコリや砂などで汚れています。ボディに付着しているホコリや砂をしっかり洗い流さずにこすることで、細かな傷がついてしまうのです。
特に黒や紺などの濃い色の車だと少しの傷でも目立つものです。
車内を清掃する際は掃除機を使いますが、その際に掃除機のホースの部分がルーフとボディをつなぐドア付近のピラーに当たり、摩擦傷ができてしまうといったトラブルもあります。
せっかく洗車してもらっても、傷ができるようではやってもらわなくてもよかったと後悔する場合があることを、頭に入れておきましょう。
洗車を行う際に、時間短縮のためや人員不足などにより手洗いではなく洗車機に入れる場合もあります。洗車機に入れたら車の傷がついたというケースも少なくありません。
原因は洗車機に使われているブラシです。以前は洗車機のブラシには、プラスティックやナイロンなどが使われており、比較的傷がつきやすいとされていました。
素材が変えられ、傷がつきにくいウレタンやムートン、特殊な布などの柔らかい素材が使われるようになっています。そのため、以前に比べると傷つきにくくはなっていますが、洗車機は屋外にあって雨風に晒され、強い紫外線も浴びるためやはりブラシが劣化することもあります。
劣化したブラシを使えば、デリケートなボディには簡単にこすり傷がついてしまうかもしれません。他にも、屋根のアンテナが折れる、ステッカーがはがれるといった部品の破損トラブルが考えられます。
車検付きメンテナンスパックは必要なのか?費用対効果を徹底解説!
点検後についた傷は直してもらえるのか?
車の点検後に、傷がついていることに気づいた場合、点検を行った業者に言えば修理してもらえるの気になるという方も多いかもしれません。
こういった場合、対応は業者によって違うのが現状です。
例えばディーラーの場合、点検を担当するのは整備士であり、実際にお客さんの対応は営業や受付スタッフが行います。車に傷があるという申し出があれば、まず整備士に確認しなければなりません。
整備士が伝え忘れていた、自分のミスだから言い出せなかったなどの理由で、後から傷を付けたことが発覚する場合もあるでしょう。また、軽微な傷なら問題ない、もしくは今更言い出せないなどの理由で傷はつけていないと言われる可能性もあります。
傷をつけたことを認めてもらえればそこから修理の話へと進みますが、認めない場合はトラブルへと発展することにもなりかねません。
車の傷が業者側の不注意だとわかれば、傷がついた部位によってはパーツごと交換してもらえる場合もあります。
例えば、傷つきやすいタイヤのホイールやガラス、バンパーなどが当てはまります。丸ごと交換して、費用も業者負担としてもらえるケースです。
ただし、車の傷が業者の責任だと明確にわからない場合もあるでしょう。その際は、パーツを交換して費用を業者とお客さんで折半するという対応を提案してくる業者もあります。パーツ交換と言っても、費用がどうなるかわからない場合はきちんと確認しておくべきです。
また、他の車の点検予約で埋まっており、すぐに修理してもらえないこともあります。その場合、車を預けて修理しておいてもらうか、指定日に車をもっていくことになるはずです。
車を預ける場合、移動手段に困りますが親切な業者だと代車を貸してくれることもあるので聞いておくことをおすすめします。
車のボディにこすり傷がついたという程度なら、パーツ交換までは不要です。傷の部分を研磨して平らにしてから、その上から色を入れてキレイに直してくれることもあります。
軽微な傷ならば研磨しないでそのまま上から塗装するという場合もあります。傷や凹みに関しての修理は、程度に応じて業者側が決めてやってくれるので任せましょう。
ただし、元の色と傷に対する色が違ってくると余計に傷が目立ってしまいかねません。同じ塗装であっても新車時の色と紫外線などを浴びて劣化した色とでは色味が違ってきますから、必ずしも完全な状態に戻らないということを考慮しておく必要があります。
点検後についた車の傷は、業者に責任があるかはっきりしないと修理してもらえないこともあるでしょう。車の傷を直したい、でも点検を依頼した業者は信頼できないので修理を頼みたくない、という方も少なくありません。
そうなると、別の整備工場などへ車の傷の修理を依頼することになります。修理が終わってから、点検を依頼した業者に修理費用を弁償してもらいたいと思う方もいるはずです。
しかし、他の修理した費用を点検業者に請求するのはかなりハードルが高いと言えます。点検業者が傷をつけたという確固たる証拠がない以上は難しいかもしれません。
業者側が点検時に傷をつけたと申し出れば、ほとんどの場合修理してもらえるはずです。しかし、業者側も傷をつけていないとなると、傷をつけたという証拠がないと修理してもらえない場合もあります。
特に点検場所を離れ、帰宅後に車に傷があるとクレームを入れても、自分の知らないうちに帰宅途中に飛び石などで傷がついたという可能性も捨てきれません。業者が傷を付けたという明確な証拠があれば業者も反論ができませんが、そうでなければ基本的に業者側も修復する義務がないことになります。
それでも良心的な業者なら修理してくれる可能性もありますが、修理に応じるのが難しいケースがあることも覚えておきましょう。
自分では気付かなかった車の部位に傷があり、業者側で修理しておいたというケースもあります。
例えばフロントガラスの運転席から見えづらい場所に傷があり、点検時に整備士が念入りに見て気づくという場合です。フロントガラスに傷やヒビなどがあれば、車検に通らないので修理しなければなりません。
点検前には聞いておらず、修理後に費用を請求されるというパターンもあります。通常は、傷を見つけた時点でお客さんを呼んで説明し、納得した上で修理しますが、お客さんが車を預けて外出してしまった、または軽微な傷だからと安易に修理されることもあります。
事前に聞いておらず、自分でも本当に傷があったのかどうかわからないとなると、修理費用をめぐってトラブルになる可能性があるでしょう。
点検後に車の傷がついたと業者側に言っても、どうしても傷をつけたことを認めてくれないケースもあります。その際は、業者側が傷をつけたという証拠があれば、根気よく交渉を続けてみるというのも一つの方法です。
しかし、業者が傷をつけたという確固たる証拠がないと、どちらに非があるがはっきりしません。逆に業者側もお客さんにクレームをつけられて困るという状況に陥ります。
話し合いも平行線のままなので今回は諦めるという選択肢もありますし、それで納得できなければ、次回の点検から業者を変えるという手段もあります。
信頼できる業者を見つけるのは難しいですが、慎重に検討してみるのも良いでしょう。
点検後の車トラブルを避けるには
業者に点検を依頼し、車が戻ってきた際に傷がついたというトラブルは避けたいものです。そのための対策としては、まず車を預ける時に必ず立ち合い、業者と共に車の傷の有無を点検しておくことが大事です。
さらに、点検後も同様に車の傷の有無を業者と共にその場で確認しましょう。また、洗車による傷のトラブルも多いため、洗車は依頼しないなども有効的です。
点検による車の傷の有無で揉めるのを避けるには、車の入出庫時に双方が立ち合いの元、車を確認しておく必要があります。面倒だからと省略すれば、後でトラブルになりかねません。
傷や凹みの有無をざっと確認し、前からあった傷なのかどうかはっきりさせておきましょう。書面や写真などで証拠として残しておくとより効果的です。
そして、大事なのが点検後の車の確認です。車を引き渡してもらったら、その場で業者にも立ち会ってもらい、傷の有無をチェックします。
もし点検前になかった傷があれば指摘しやすいし、業者側も自分たちのミスでついたと認めざるを得ないため、修理をしてもらいやすくなります。
点検後にサービスで洗車や車内清掃をしてくれる業者も多いですが、その際に車に傷がつくこともあります。業者に任せるとどのような道具を使って、どのような方法で洗車するかわかりません。
洗車は不要だと思ったらその旨を点検前に伝えておきましょう。また、洗車機も使いたくないなら同様に洗車は断っておくことが大事です。
受付のスタッフに言っても伝わっているか不安なら、メモを書いてダッシュボードの上に置いておくと整備士にも伝わります。
業者に点検を依頼する際に、車に傷がつく可能性も考慮してどのように対応してもらえるかを確認しておくことも大事です。
整備士の技術やメンテナンスの質を信用していないようで、聞きづらいかもしれませんが、人間が行うことなのでいくら技術力があって経験を積んだ整備士でも100%ミスがないとは言えません。
良心的な業者ならきちんとどのように対応するかを答えてくれるはずです。点検の見積もりをする際に、それとなく尋ねてみるのも良いでしょう。
点検後に車の傷に気づくのが遅れると、本当に点検でついた傷なのか自分でも気づかないうちにつけた傷なのかわからなくなります。点検から日数が経つにつれ、業者側に指摘しづらいものです。
また、業者に車の傷のことを訴えても、クレームと受け取られかねません。車の傷に気づきそのままにしておけない、納得できなければできる限り早く業者に伝えて整備士に確認してもらうことが大事です。
迷っている間に時間が経つと、トラブルが大きくなる可能性もあります。