車を保有していると定期的に訪れるのが車検です。乗用車の場合、新車購入であれば初回は3年後でそれ以降は2年に1回やってきますが、車検の費用はディーラー等に頼むとおおむね10万円以上の費用がかかってくるため、お金のやり繰りに困るという方も多いかもしれません。
車検の費用を抑える方法の一つとして、ディーラー等に依頼をせずに自分で陸運支局に車を持ち込むユーザー車検があります。しかし、その方法を知っているという人は、あまりいないかもしれません。
知っていても、難易度が高いため敬遠されがちです。そこで今回は、ユーザー車検の難易度やその流れ、費用感について比較をしながら解説をしていきます。
ユーザー車検ってどのようなもの?
「ユーザー車検」という言葉は、あまり聞きなれないものかもしれません。ユーザー車検について簡単に説明すると、「整備工場やディーラーなどに依頼をしないで自分自身で車検を行う」ということです。
車検の手続きを自分自身で行うとはどういうものなのか、疑問に感じる人もきっといるでしょう。ここでは、ユーザー車検の特徴や費用について解説します。
ユーザー車検はその名の通り、「車のユーザー(車の使用者)が自ら車検を行う」ということです。車の車検整備は、資格を持ったプロである整備士がしっかりと整備したうえで車検に通すというイメージが強いかもしれません。
車検を通す手続き自体は最寄りの陸運支局で行うことが基本となります(例外として陸運支局の認可を受けた指定工場出の車検も可能です)。
ユーザー車検の大きな特徴は2つあり、1つは「自分自身が車を陸運支局に持ち込んで車検を通す」、2つ目の大きな特徴は「車検費用を抑えることができる」ということです。
車検の費用で割合が大きいのが「法定費用」ですが、これに次いで「整備費用」や「車検代行費用」も割合が大きな費用となります。整備費用や代行費用を削減することで、結果的に車検にかかる費用の総額をグッと抑えることができるようになります。
つまりユーザー車検の特徴は、自分自身で車検を通す手間をかかることで、通常より費用を抑えられるということです。
前述した通り、ユーザー車検の費用はプロに任せる車検よりは安価です。かかる費用としては、基本的に「法定費用+α」となります。
法定費用については、車検対象である車の排気量や総重量によって変わってくる部分ではありますが、こちらでは、2000ccクラスの車の車検にかかる費用目安について確認をしていきます。2000ccクラスの車は主に車重が1500㎏~2000㎏以内の車が多いので、こちらをベースに費用を計算していきましょう。
車検に必要な法定費用は大きく分けて「自動車重量税」と「自賠責保険料」、そして「印紙代」となります。2021年3月現在の法定費用は以下の通りです。
- 自動車重量税(1500kg以上2000㎏未満):32,800円(エコカー減税を考慮していない金額)
- 自賠責保険料(本土の場合):20,010円
- 印紙代:1,700円
以上を合計すると54,510円となります。
こちらの費用が法定費用ということになり、継続車検を受ける際に必要な最低金額です。
車検に通らないような故障や不具合がない場合については、こちらの費用のみで車検を通すことができるということになります。
車検と聞くとディーラーや整備工場に頼んでやってもらうというケースが大半かと思いますが、前述した通り、ユーザー車検にすることで車検の費用を抑えることができます。この費用の違いとはどのようなものなのか、解説していきます。
ディーラーや整備工場に車検を頼む場合と自分自身でユーザー車検を行う場合の決定的な違いは、「整備」の内容です。
ユーザー車検の場合、自分が整備士でない限り、いわゆる「日常点検」の範疇でしか車を整備することができません。車検は車の「現在」の状態を確認するため、車検後すぐに壊れてしまうという可能性もあります。
その点、ディーラーや整備工場に依頼をすれば、車のプロがしっかりと点検整備をして車検に合格するレベル以上に車を仕上げてくれるはずです。ユーザー車検より費用は高くなりますが、プロがきちんと車を整備してくれるため、安心して乗ることができます。
ユーザー車検の流れを確認してみよう
それでは、実際にユーザー車検をするためにどういったことをしなければならないのか、という点を学んでいきましょう。ここでは、ユーザー車検で車を持ち込む際の流れについて詳しく解説します。
まず事前準備として、車検を持ち込む際に陸運支局の車検枠の予約を取ることから始めます。ディーラーや整備工場に依頼をする時と同様に、事前に「いつ持ち込むか」ということをはっきりと通知しておく必要があるためです。
国土交通省の検査予約システムにアクセスし、初めての場合は会員登録をしシステムにログインします。その後、入庫したい日程と陸運支局を設定し、予約をします。
予約の枠は午前と午後といった感じで分かれています。この際注意しておきたいのが、予約のタイミングは「できるだけ月初め~中旬まで」の日程ですることです。
月末が近づくと陸運支局は混雑するので、比較的空いている時期に予約を取ることをおすすめします。3月~4月上旬は最も混雑している時期になるため、車検時期があたる方は早めに予約をしておきましょう。
予約の日になったら予約をした入れた陸運支局に車を持ち込ます。これまでの間に車検に通るように、点検整備をして事前準備をしておくことが大切です。
その際に車と一緒に持ち込まなければいけないものが以下となります。
- 車検証
- 自動車損害賠償責任保険証明書
- 自動車税納税証明書(継続検査用)特定の条件で省略可能
- 使用者の認印
自賠責保険については2年後まで有効期限のあるものでなければなりませんが、陸運支局の近く(もしくは内部)にある代書屋さんに行けば、保険に加入することもできます。
陸運支局に行ったら、車検手続きに必要な用紙や自動車重量税の印紙を購入します。車検にかかる費用はすべて現金決済のみとなり、クレジットカードは使用することができません。
車検に必要な費用については必ず現金で用意し、ピッタリではなく余裕のある金額を持ってから行くようにしましょう。用紙と印紙を購入したら、購入した用紙に必要事項を記入していきます。
初めて記入をする用紙のはずですから、書き方がわからないかもしれません。そういった場合は陸運支局の職員さんに書き方を聞いてください。
もしくは、数千円支払うことですべての書類を記入してくれる代書屋さんを活用するのもいいでしょう。
書類の記入が終わったらいよいよ車検です。車検専用のレーンに車を移動させて、ひとつひとつの検査項目を陸運支局の検査官に確認してもらいきます。
車検の検査項目は以下の通りです。
- 同一性の確認(書類に記載されている車体番号などの情報を照らし合わせていきます)
- 外回りの検査(ブレーキランプやウインカー類の確認や、タイヤのはみだしなどを確認します)
- サイドスリップ検査(前輪タイヤの横滑り量を確認します)
- ブレーキ検査(ブレーキの効きを確認します)
- ヘッドライト検査(光量と光軸を確認します)
- 排気ガス検査(排気音と排ガスの濃度を検査します)
- 下回りの検査(足回り部品の取り付けとオイル漏れなどを検査します)
これらの工程はすべて自分自身で行い検査員が確認をしますが、親切にやり方を教えてくれるので安心してください。
車検レーンでの検査が終わり、すべてが基準値(合格地)であれば新しい車検証が発行されます。車検証が発行されるまで少し時間がかかる場合もありますので、気長に待ちましょう。
新しい車検証をもらったら、次回車検までの有効期限や記載事項に誤りがないか確認をし、車検ステッカーをフロントガラスに貼ってすべてが終了となります。
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車検に通らなかった場合はどうする?
陸運支局に車を持ち込んでユーザー車検を行った際、基準に満たず不合格となってしまう、という可能性も少なからずあります。ここでは、陸運支局に持ち込み車検を行った際に不合格となってしまった場合の対処法について確認していきます。
車検の検査項目の中で不合格となってしまった箇所が「ヘッドライトの光軸」あるいは「サイドスリップ」だった場合は、ある程度短時間で対処することが可能です。
この場合は基本的に調整をすれば基準値の範囲に持っていくことがでますが、車検場や自宅で行うことは厳しいはずです。そういった際には、たいていの車検場に近くに店を構えている「テスター屋さん」に行って調整をしてもらいましょう。
テスター屋さんは別名「予備車検業者」とも呼ばれており、車検とほぼ同等の設備を持っていることが多く、数千円の費用を支払うことで車検に適合する調整を行ってもらえます。
車検を持ち込む前にテスター屋さんで調整してもらえば全く問題はありませんが、午前中のラウンドでも午後のラウンドでも早い時間から陸運支局に車を持ち込んでいれば、不合格になっても検査当日に再受験することができます。そのため、一度不合格になった後にテスター屋さんに行っても大丈夫です。
その際に気を付けておきたいのが、すべてのテスター屋さんが飛び込みで調整をしてくれないということです。一般ユーザーお断りのテスター屋さんもあるため、事前に下調べをしておくことをおすすめします。
テスター屋さんで調整してもらえれば、車検に通るレベルの軽微な不合格項目であれば問題はありません。
しかし、重大なオイル漏れ等が発生していて部品交換をしなければならないレベルの不具合があった場合は、当日に車検を通すことはまず困難といえます。
そういった場合は、部品の手配と交換をする必要があります。自分自身で修理(交換)できるレベルであれば部品販売店に行って部品を注文して入荷後に交換という流れで問題ありませんが、たいていの場合はディーラーや整備工場に交換を頼むのが最善の方法です。
工賃を節約しようと自分自身で交換や修理を行った際に余計に症状が悪化したりすることも十分に考えられるため、部品交換が伴う作業となる場合はプロにお願いするのが無難といえます。
その際に車検をお願いするのもいいかもしれませんが、交換後再チャレンジするという方法もあります。修理が完了するタイミング以降で車検の予約を取り直して陸運局に持ち込む時間があれば、やってみましょう。
車検の費用を徹底比較(2000ccクラス)
念のため、車検の費用についておさらいをしていきましょう。車検の費用は大きく分けて「法定費用」と「その他の費用」の2つに分かれます。
その他の費用について挙げられるのは、「点検整備費用」や「部品代」そして「車検の代行手数料」などです。この費用は車検を依頼するお店によって変わってくる項目でもあります。
そこで、ここからはそれぞれの費用の概算を確認して比較をしてきます。
車検費用を算出するにあたり、ユーザー車検の費用を出した際に参考にした2000㏄クラス(車両重量が1500kg~2000㎏未満)の車でチェックしていきます。
法定費用については、ユーザー車検もディーラーや整備工場に依頼する車検でもすべて一律の金額となります。
車検に必要な法定費用は2021年3月現在、以下の通りとなります。
- 自動車重量税:32,800円(エコカー減税を考慮していない金額)
- 自賠責保険料(本土の場合):20,010円
- 印紙代:1,700円
合計が54,510円です。
値引きをすることもクレジットカード払いをすることもできませんので、この金額の現金を用意することになります。
まずは、ディーラーや整備工場に依頼をする場合の費用の目安を確認していきましょう。
ディーラーや整備工場に依頼をする場合、法定費用以外に以下の費用がかかってくる場合が多いです。
- 法定点検整備(24ヶ月点検)
- 車検代行費用
- エンジンオイルや冷却水、ブレーキオイルなど消耗品の交換(任意項目)
この費用の概算ですが、消耗品の交換をしない場合であっても4万円~6万円はかかると見積もっておいてください。
消耗品の交換が入る場合はプラスで1~2万円程度の費用がかかってきます。
法定費用と合わせると、車検費用の総額は10万円~13万円程度がかかるイメージとなります。
ユーザー車検よりはお金はかかるものの、ディーラーや整備工場に依頼をするより費用を抑えられる方法として「車検代行業者に依頼をする」という方法があります。
この方法は、平日日中に時間が取ることが難しく、ユーザー車検を行いにくい人たちに向けたサービスの一種で、ユーザー車検を業者に依頼をする形となります。
車を預ける前に必要な点検整備を行っておく必要があります(業者によっては自社工場で点検整備を行っている会社もある)が、ディーラーなどよりも安価に車検を通すことができます。
費用の目安としては、車検代行手数料として法定費用にプラス1~2万円の費用がかかるイメージです。
車検代行業者を利用する場合の注意点としては、車検に通らなかった場合の整備費用がディーラー並かそれ以上にかかってしまう恐れがあるということです。比較的新しい車の場合は、利用してみるのもいいでしょう。
車検入庫に共通する注意事項はこれ
ユーザー車検で車を持ち込む場合でも、ディーラーや整備工場に依頼する場合でも気を付けておかなければならない点があります。それは「有効期限ギリギリに車検入庫をしない」ということです。
何も問題がなくすんなりと車検に合格すれば問題はありませんが、オイル漏れ等重大な故障などが発覚した場合、部品の取り寄せや交換作業の時間がかかる場合があります。車検ギリギリにこれが発覚すると車検切れとなってしまって、車を持ち込む際に仮ナンバーを取得しなければならないといった手間も増えてきます。
こうなってしまうと余計な時間も費用もかかりますから、期限を変えずに継続車検を受けられる30日前から早め早めに車検を受けるようにしましょう。
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