軽自動車を譲って所有者が変わる際には、たとえ家族の間柄であっても名義変更が必要になる可能性があります。
所有者が変わったにも関わらず、必要な手続きを怠った場合には、法的な罰則が科される可能性があるため注意が必要です。保険が適用されないリスクなどもあるため、名義変更の必要性についての概要を把握しておきましょう。
この記事では、家族間での軽自動車のやり取りで名義変更が必要になるケースとはどのようなものであるかを明らかにし、手続きの流れや必要書類、注意点などについて詳しく解説します。
家族間でも軽自動車の名義変更が必要なケースとは?
親が子供に譲るケースや、兄弟姉妹が転勤の際に実家に置いていくケースなど、軽自動車は家族間で譲渡される場合が多いため、名義変更は不要だと誤解していることも少なくありません。
しかし、家族間であっても名義変更が必要なケースが存在し、手続きを怠ると税金の通知や保険の適用に支障をきたす可能性があるため、手続きの必要性を理解しておくことが重要です。
ただし、軽自動車の名義変更の手続きはそれほど難しくない場合が多いため、必要書類と手続きの流れを把握しておけば自分でも済ませられるでしょう。
手続きに不安があるならば、代行業者に依頼することも可能なため、必要に応じて利用するのがおすすめです。
同居家族の場合は名義変更しないケースが多い
同居している家族の間で軽自動車を共有している場合には、わざわざ名義変更せずに使用することがよくあります。
例えば、親が所有者になっている車を子どもが運転するケースや、夫(妻)の車を借りて乗るケースなどです。これらの場合は、所有者が変わったわけではなく、名義変更の必要性はあまりないと考えられます。
ただし、車の所有者が亡くなった場合や、家族が車を相続する際には名義変更が必要になるため注意が必要です。このような場合に名義変更を怠ると、亡くなった旧所有者に税金の通知が届いたり、任意保険の適用が受けられなかったりと、思わぬトラブルを招いてしまいます。
軽自動車の売買をする際の必要書類とは?
別居や家計が別々の場合は名義変更した方がよいケースもある
家族間で軽自動車を譲渡する場合の中でも、離れて暮らしている場合や家計を別にしている場合には名義変更をしておいた方が何かと安心です。
例えば、子供が就職して一人暮らしをする際に親が軽自動車を譲るというケースがあります。この場合には、税金や保険料が旧所有者である親に請求されるため、支払いの責任が曖昧になってしまう点がデメリットです。
また、事故を起こしてしまった場合には、保険の契約内容が適用されず、補償を受けられないリスクもあるため、名義変更しておいた方が良いでしょう。
軽自動車の名義変更は、軽自動車検査協会で手続きでき、必要書類が揃っていれば簡単に済ませられます。トラブルを未然に防ぐためにも、早めの対応が大切です。
家族間で名義変更をする際に必要なもの
家族間であっても、軽自動車の所有者が変わる場合には名義変更をするのが一般的です。その際には、旧所有者と新所有者がそれぞれ準備すべき書類があります。
必要な書類が揃っていないと手続きの進行に支障をきたすため、どのような書類が必要であるかを把握しておくことが重要です。
ここでは、家族間で軽自動車の名義変更をする際に必要なものを紹介します。
車検証(正式には自動車検査証)は、名義変更の際に旧所有者側が準備すべき最重要書類です。
車検証には車両の登録番号や車体番号、所有者情報、使用者情報などの基本情報が記載されており、原本を提出する必要があります。写し(コピー)では受理されないため注意してください。
もしも車検証を紛失してしまった場合には、名義変更の前に車検証の再交付手続きをしなくてはなりません。軽自動車の車検証再交付手続きは軽自動車検査協会で行えますが、自動車検査証再交付申請書(軽第3号様式)と申請手数料(350円)が必要です。名義変更の前に時間的余裕を持って準備しておきましょう。
新所有者の「使用の本拠の位置」が旧所有者と異なる管轄地域になる場合は、ナンバープレートの交換が必要です。
同じ管轄内での名義変更の場合は、旧所有者のナンバープレートをそのまま使用できます。ナンバープレートの変更が必要かどうか、事前に確認しておきましょう。
「使用の本拠の位置」が管轄地域以外になる場合は、旧ナンバープレートを軽自動車検査協会で返却し、新しいナンバープレートを取得しなくてはなりません。
ナンバーを取り外す必要があるため、必要な工具などを用意していくとスムーズです。手続きに車で行かない場合は、事前にプレートを外して持参しましょう。
軽自動車の名義変更の際に、新所有者は住民票の写しや印鑑証明書など「住所を証明する書類」を用意する必要があります。これは、名義変更後に新しい所有者が車をどこで使用するか、いわゆる「使用の本拠の位置」を確認するために重要な情報です。
住所を証明するために住民票の写しを使用する場合、本籍地が記載されている必要はありません。
なお、発行から3ヶ月以内のものが求められる点に注意が必要です。そのため、これらの書類は手続きの直前に用意するのが良いでしょう。
また、法人の場合に必要となるのは、商業登記簿謄(抄)本や登記事項証明書です。個人の場合とは必要書類が異なるため注意してください。
軽自動車の名義変更の際には、新しい所有者の情報を車検証に記載するために、自動車検査証記入申請書が必要です。
この申請書は軽自動車検査協会の窓口で配布されており、印鑑は不要なため、その場で記入できます。公式サイトからダウンロードもできるため事前に準備しておくのも良いでしょう。
記入する際は、新所有者の住所や氏名、車両の使用目的など、基本情報を正確に記載することが重要です。記載内容に誤りや記入漏れがあると、再提出を求められ余計な手間がかかるため、慎重に内容を確認しましょう。
窓口には記入例があるため、参考にしながら記入すると良いでしょう。
軽自動車税申告書は、新所有者が軽自動車の税金を適切に納付するための書類で、軽自動車検査協会に隣接する地方税事務所に提出します。
申告書は地方税事務所で配布されているため、あらかじめ準備する必要はありません。
軽自動車税申告書の書式は地域によって異なりますが、主に新所有者の氏名や住所、車両情報などを正確に記載します。手続きの遅れを防ぐために提出前に記載事項の確認を行いましょう。
この申告を怠ると旧所有者に税金の請求が届くなど、思わぬトラブルの原因となるため、名義変更の当日にしっかりと手続きを完了させることが重要です。
軽自動車の名義変更手続きの一般的な手順
軽自動車の名義変更手続きを完了するまでにはいくつかのステップがあり、全体的な手順を把握しておくことにより、無駄な手間をかけずスムーズに進められます。
以下のステップを理解し、必要なものを事前に用意しておくことが重要です。
まずは、自動車検査証(車検証)や住民票・印鑑証明書など、必要な書類を準備します。この際、有効期限には注意してください。
管轄地域の変更がある場合にはナンバープレートを、代理人に手続きを委託する場合は申請依頼書など、必要に応じたものを事前に準備しておきましょう。
書類の準備が整ったら軽自動車検査協会の窓口へ出向き、そこでもらえる書類に必要事項を記入します。
不明点がある場合は記入例を参考にしたり、係員の人に質問してみましょう。必要書類を全て提出してから軽自動車税の手続きも済ませます。
書類を全て提出したら手数料を支払って、しばらく待機します。
提出した書類が受理されると新しい車検証が発行され、それを受け取った時点で手続き完了です。最後に内容に誤りがないかを確認しておきましょう。
軽自動車の売買をする際の必要書類とは?
軽自動車の名義変更にかかる費用の目安
軽自動車の名義変更を自分で行う場合、以下のような費用が発生します。
住民票を取得する費用は自治体によって異なりますが、200円〜400円程度が目安です。
住所を証明する書類として印鑑証明書を用いる場合、390円〜450円の料金がかかります。
地域によって差がありますが、1,400円〜1,600円程度が目安です。希望ナンバーにする場合には、4,500円程度かかります。
また、旧所有者へ税金の請求が行かないようにする「税止め」の申請に500円〜1,000円、軽自動車税の環境性能割(車両価格の0%〜2%で車両の燃費により変動する)なども必要に応じて支払わなくてはなりません。
軽自動車の名義変更を怠った場合のリスク
費用や手間がかかるからといって名義変更を怠った場合には、どのようなリスクがあるのでしょうか。
無用のトラブルを招かないためにも、名義変更をしないことによるデメリットを理解し、所有者が変わった際には速やかに名義変更手続きを済ませることが大切です。
ここでは、名義変更をしなかった場合に発生するリスクを、それぞれ具体的に解説します。
自動車の名義変更は、所有者が変わってから15日以内に届け出ることが、道路運送車両法により義務付けられています。
この義務を怠って名義変更を行わずにいたり、不正な名義変更を行ったりすると、50万円以下の罰金が科せられる可能性があるため厳重に注意しましょう。
また、引っ越しなどにより登録住所が変わったにも関わらず名義変更をしなかった場合に、自動車税の通知が旧住所に届き、税金未納として処理される場合もあります。
いずれにせよ、所有者や登録住所の変更があった場合には、迅速に名義変更の手続きを行うことが大切です。
名義変更をしないことで、税金の支払いに関するトラブルを招きやすくなります。
例えば、軽自動車を売却・譲渡した後に名義変更をしないままにしていると、旧所有者に税金の通知が届くことになり、支払い責任をめぐって争いに発展するかもしれません。
そのため、自動車の所有者が変わった際には、速やかに名義変更を済ませ、同時に税申告も行うことが重要です。
軽自動車は、家族間や友人間で気軽に貸し借りや譲渡が行われますが、名義変更をおろそかにしていると、誰が所有権を持っているのか不明瞭になるおそれがあります。
所有権が誰にあるのか分からない状況では、売却や保険契約・更新などの手続きを適切に進められないでしょう。所有者が複数人名乗りでるという状況になるかもしれません。
そのようなトラブルが発生しないためにも、所有者が変わるたびに正確な名義変更を行うことが大切です。
名義変更を行わないと、事故が起こった際に保険が適用されない可能性があります。自動車保険では、所有者と契約者の登録情報が一致していないと、保険の適用が無効になる場合があるためです。
所有者と保険契約者の名義が異なる場合は、契約の段階で保険会社にしっかりと確認しておく必要があります。
軽自動車の名義変更と同時に手続きするもの
軽自動車の名義変更を行った際には、同時に自賠責保険や任意保険の名義変更も済ませておくことが重要です。これらの手続きを怠るとさまざまなリスクの要因となるため、忘れずに行いましょう。
ここでは、軽自動車の名義変更と同時に手続きすべき、自賠責保険と任意保険の名義変更について解説します。
自賠責保険(正式には自動車損害賠償責任保険)とは、交通事故で他人を死傷させた場合に最低限の補償を行うための強制保険です。
自賠責保険は車両にかける保険であるため、名義変更を行っても保険自体は有効ですが、車の所有者や使用者が変わった場合には、保険契約者の名義変更をする必要があります。
自賠責保険の名義変更は、自動車損害賠償責任保険承認請求書と確認書類に必要事項を記入し、保険会社や代理店に送付することで行えるため、軽自動車の名義変更と同時に済ませましょう。
任意保険は、自賠責保険ではカバーできない分を補償するために必要な保険です。任意であるため強制ではありませんが、対物・自損事故にも対応しているため、自動車の事故リスクに備えるために加入することが推奨されています。
任意保険の名義を変更するためには、まず加入している保険会社に連絡します。そして新旧所有者の必要事項を記入した契約書や車検証の写しなどの書類を用意し、保険会社に郵送します。
名義変更の手続きが完了したら、保険内容が正しく引き継がれているか必ず確認しましょう。
家族間で名義変更する際の注意点
家族間で軽自動車の売却・譲渡を行い名義変更する際には、どのような点に注意すべきなのでしょうか。
ここでは、家族間で名義変更する際の注意点として、車庫証明と贈与税について詳しく解説します。
家族間で名義変更を行う際に、車の新しい所有者が旧所有者と別居する場合には、車庫証明の手続きが必要な場合があるため注意してください。
車庫証明は、車を保管する適切な場所があることを証明するもので、手続きは新所有者が住んでいる地域の警察署で行えます。
軽自動車の車庫証明(正式には自動車保管場所証明書)は、特定の地域で取得が必要です。自分が住んでいる地域で車庫証明が必要か否か、地域の警察署に確認しておきましょう。
家族間で軽自動車を譲渡する場合、生活や教育以外の目的で使用する高級車には、贈与税が課せられる場合があります。
具体的には、110万円を超える財産価値がある車を贈ると、家族間でも贈与税がかかり、確定申告の必要があるため注意しましょう。
家族間で軽自動車のやり取りを行った際に、贈与税が発生するかどうか、不安な場合は税務署や専門家に相談するのがおすすめです。