新車試乗レポート
更新日:2019.05.23 / 掲載日:2017.06.14

【試乗レポート】フォルクスワーゲン ゴルフが、マイナーチェンジで見せる商品力

文●内田俊一 写真●ユニット・コンパス

 ゆっくりとクルマに近付いていくと、フロントまわりがスポーティに、そして目つきが鋭くなったことに気づく。ドアを開けシートに腰を下ろすと以前よりゆったりと、そして、体全体を包み込むような質感とともに、目の前に広がる新しいデジタルメーターに新鮮な驚きを感じた。この短時間で新しいゴルフの新しくなったポイントが明確に伝わってくる。

 4年ぶりに商品改良が行われたゴルフ。そのポイントは大きく3つ。ひとつはデジタル化、次に安全・快適性の向上。そして、スポーツモデルのパワーアップだ。
 
 まずはデジタル化で最大の特徴は、ドライバーの目の前に広がるデジタルメータークラスター、アクティブインフォディスプレイだ。昨年初めてパサートGTEに導入され、その後パサートシリーズ、今年1月導入の新型ティグアンの上級モデルに採用。12.3インチの大型ディスプレイを用いた高解像度のフルデジタルメータークラスターで、ディスプレイは好みに応じて数種類のモードから選択したグラフィックを表示できる。その中のナビゲーションモードは、純正インフォテインメントシステムの Discover Pro と連動して表示されるマップを、メータークラスターの中で大きく映し出すことが可能だ(一部モデルに標準、あるいはオプション設定)。

 そして、さらにフォルクスワーゲンでは初めてジェスチャーコントロールが採用されたこともトピックだ。大型化されたセンターディスプレイに手のひらをかざし、左右に振るとメニュー画面をスライドさせることが可能になった(Discover Pro装着車のみ)。

 次にポイントとなる予防安全面においては、近い将来実現が期待されている自動運転を見据えた最新の運転支援システムが採用された。それは、レーンキープアシストシステムと、アダプティブクルーズコントロールを連携させた渋滞時追従支援システム、トラフィックアシストだ。60km/h以下での走行中に車線を逸脱しそうになった時にステアリングを自動補正するだけでなく、アダプティブレーンガイダンスが車線の中央、もしくはドライバーが望む範囲内を走るように制御。渋滞時においてもトラフィックアシスト等との機能が補完しあい、前方と横方向でのクルマの動きを制御。つまり、ステアリング操作、加速、ブレーキングが“システムの限界内”で作動するものだ。

 それ以外には前後バンパーと新形状のヘッドライト、リヤコンビはLED化され、先進性を表現しているという。

走行フィーリング

 前置きが長くなってしまったが、早速走り出してみよう。シートやミラー類を合わせたのち、相変わらず質感の高い室内のセンターコンソールにあるスターターボタンを押し、1.4リッターTSI(気筒休止付)エンジンを目覚めさせる。4気筒にも関わらずそれほど振動もない静かなエンジンだ。シフトレバーでDを選択しアクセルを軽く踏み込むと、思った以上にきびきびした印象を受けた。少々極端な例だが、ステアリングを切って、乱暴にアクセルを踏み込むとホイールスピンをするほどだといったら、そのきびきび感は伝わるだろうか。

 今回は30分ほどの試乗であったため、第一印象程度での紹介となるが、まず先代から大きく変わったのが乗り心地で、先代よりも足が大きくしなやかに動くようになった。とくに段差などを超えたときに突き上げられるショックが格段にやさしくなったのだ。これまでも決して不快ではなく、高いボディ剛性によって十分許容範囲であったのだが、新型でははるかにしなやかさが増しているのだ。今回の変更点に記載はされていないので詳細は不明だが、イヤーモデルとして改良が重ねられた結果、足回りのブッシュ類やダンパー等に小さな改良が施されたと推察される。
 もうひとつこの印象を助長するのが、ハイラインに新たにシート素材としてマイクロフリースが採用されたことが挙げられる。マイクロフリースは、ポリエステルの一種を原料とし、柔らかい起毛仕上げの生地だ。軽量で肌触りがよく、保温性が高いのが特徴とされるものだ。これまで比較的パンと張っていたシートだが、新型ではふわっとした座り心地となり、マイクロフリースの特徴である肌触りの良さも相まって、ショックをしなやかに吸収してくれるのだ。

 少し走らせてみると、相変わらずDSGの反応のよさと、ハンドリングの素直さが光ってくる。これまでどおりスムーズにシフトアップされ、少しアクセルを踏み込めば的確にシフトダウン。思ったとおりの加速を手に入れられる。140ps、250Nmのトルク以上にパワフルに感じられるのはこのDSGの完成度の高さも要因のひとつだといえる。また、気筒休止タイミングについては、今回の試乗時間内ではいつ気筒休止したのかどうかを全く把握できなかったので、それだけスムーズに作動していたといえるだろう。

新規装備と安全装備

 目の前に広がるアクティブインフォディスプレイはとても見やすく、また、ナビモードではいちいちセンタークラスターに視線を送らなくても、目の前で現在地やその先の状況を把握できるので、安全性も高いものだ。解像度も問題なく、十分瞬間的な情報を把握することが出来た。
 そして、ジェスチャーコントロールはとてもスムーズで手のひらをセンターディスプレイに近づけ左右に振るだけで、即座に反応する。しかし、例えばボリュームの上げ下げ等はタッチスクリーン横のボタンを操作しなければならないので、まだ、第1歩を踏み出した程度と認識し、今後の発展に期待したい。

 今回市街地のみでの試乗であったため、積極的にレーンチェンジアシスト等は試さなかったが、わずかにレーンを外れそうになったときなどに、すっとステアリングがアシストされ、クルマを車線中央に戻そうというそれほど強引ではない、自然な動きが感知できた。いずれ、こういった動き等も含め、高速道路などでテストしてみたいと思う。


ヴァリアント

 今回の試乗ではワゴンのヴァリアントTSI Highlineもテストできたので、簡単に印象を述べておく。
 基本的にはハッチバックと何も変わらず、快適な乗り心地ときびきびした走りを実現している。ワゴンタイプだとどうしてもリヤからのロードノイズが大きくなりがちだが、それもほとんど気にならなかった。
 更に、310mm伸ばされたリヤオーバーハングにより、ワゴンとしてのスタイルとともに十分な荷室空間を確保しているが、一方で開口部の大きさやリヤオーバーハングを延長したことによるボディ剛性の低下が懸念される。さすがのゴルフも、例えば斜めに段差を超えるときなどに若干の剛性の低下は認められたが、それは乗り比べながら、意地悪く観察して初めて気づく程度のもの。ヴァリアントのみでテストしていれば、ほとんどわからないレベルであった。

 ゴルフの歴史を振り返ると、1974年の登場以来、2016年末までに3331万2123台を販売。世界のコンパクトカーのベンチマークとして、現在も君臨している。ここ日本においても同様で、ドイツで発表されてから1年後の1975年の導入以来、シリーズ累計で約85万台の販売台数を誇る輸入車のトップセラーモデルへと成長してきた。

 そして今回の改良では、コンパクトカーとしては初採用のジェスチャーコントロールや、非常に見やすいアクティブインフォディスプレイなどを装備することで、更に一歩先に行ったといえ、その走りも競合他車を凌駕する見事な仕上がりになっている。この点はGTIやRシリーズも同様だ。

 純正ナビゲーションシステムの操作にはかなりの慣れが必要であるなど、使い勝手に不満の残る箇所があることも事実だが、クルマそのものの走る、曲がる、止まる、そして、スイッチのタッチを含む質感の高さはこのセグメント随一のモノであることに変わりはない。ナビの操作は覚えれば何とかなるものだが、クルマの完成度は後からは変えられないものだ。従って、7代目ゴルフも、今回のバージョンアップにより、引き続きコンパクトカーのベンチマークとして、競合をリードする立場を貫いていくことだろう。


【フォルクスワーゲン ゴルフTSI Highline(7速AT・DSG)】
全長         4265mm
全幅         1800mm
全高         1480mm
ホイールベース    2635mm
重量         1320kg
エンジン       直列4気筒DOHCターボ
総排気量       1394cc
最高出力       140ps/4500-6000rpm
最大トルク      25.5kgm/1500-3500rpm
サスペンション前/後 ストラット/4リンク
ブレーキ前/後    Vディスク/ディスク
タイヤ前後      225/45R17
販売価格       249万9000円~559万9000円(ハッチバック全グレード)
           293万9000円~569万9000円(ヴァリアント全グレード)

  • ゴルフTSI Highline

  • ゴルフヴァリアント TSI Highline

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グーネットマガジン編集部

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