新車試乗レポート
更新日:2019.05.23 / 掲載日:2017.04.24

上質な暮らしを予感させるクロスオーバー【試乗レポート】ボルボV90クロスカントリー

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

「クルマは作らない。クルマのある人生を作っている。」
 ボルボV90クロスカントリーに触れていたら、なんだか大手自動車販売会社(念のため言っておくと現在はボルボを取り扱ってはいない)のキャッチフレーズが頭に浮かんできた。その理由は、V90クロスカントリーを所有することで手に入る豊かな人生と生活をイメージさせてくれたからに他ならない。
 結論から言ってしまえば、V90クロスカントリーほど人生の余裕を楽しんでいるひと、もしくはこれから人生を楽しみたいひとにふさわしいクルマはないだろう。単に優雅に暮らしているとかお金を持っているというだけでなく、人生を楽しんでいるというのが大事だ。

 ボルボV90クロスカントリーは、言うなればボルボのフラッグシップステーションワゴンのV90をベースにしたクロスオーバーSUVだ。専用の足まわりによって車高を高め、大径のタイヤや無塗装の樹脂部品を組み合わせてアウトドアテイストを強調。あわせてインテリアも専用のコーディネートが施されている。
 最強のリゾートエクスプレス。ボクはこのV90クロスカントリーのことをそう考えている。ウイークデイは都市で精一杯働き、休日はファミリーと、もしくは大切な人と大自然を求めて別荘やリゾートホテル、そしてキャンプへ出かけるのにこんなにマッチングのいいクルマはないからだ。

 その理由は3つある。ひとつはクルマ自体が非常に洗練されていること。ボルボはプラットフォームを刷新した新世代になり洗練度が非常に高まった。なかでも9インチのタッチパネル式ディスプレイを組み込んだインパネの先進感や表面に凹凸の有る仕上げの本木目を使ったインテリアのクオリティなどは、プレミアムクラスを実感させ、所有する喜びを盛り上げてくれる出来栄えだ。V90クロスカントリーのライバルといえばアウディ・オールロードクワトロ、そしておそらく日本でも発売されるメルセデス・ベンツEクラスオールテレーンなどが想定されるが、それらドイツのプレミアムワゴン勢に比べても見劣りしない。
 ふたつ目は実用性の高さ。荷室空間は後席に人が座れる状態でもステーションワゴン最大級で、後席を倒せば大人2人がゆったりと寝られるほどまで広がるから大量のキャンプ道具を飲み込んでしまう。人生を楽しむのにはじつに都合がいい。
 ラージワゴンだけに後席の足元スペースも広いし、リフトアップによって通常の乗用車よりも着座位置が上がったことで乗降姿勢が楽になったのもぜひ伝えたい特徴だ。
 そして最後のひとつは走りがいいこと。都会からリゾートやキャンプ場へ行くには高速道路を巡航することが多いけれど、V90クロスカントリーは背の高さを感じさせない落ち着いた操縦性で高速道路のハイスピードクルージングも大得意。それこそ一般的なステーションワゴンとかわらない感覚で目的地へ移動することができる。

 エンジンは4気筒で排気量2.0Lと聞くと、ちょっと物足りないように思うかもしれない。だけど、ターボ+スーパーチャージャーを備える「T6」だと320馬力、ターボの「T5」でも254馬力というハイパワーを誇るから不満は無い。たとえひとと荷物を満載していたとしても、高速道路の追い越し車線を、涼しい顔をして走り続けられる実力を持っている。
 そのうえ、V90標準車など通常のワゴンに比べて最低地上高を高くしたおかげで、普通のクルマでは入りこめないオフロードも走れるからキャンプ場近くの荒れた道も安心だ。その最低地上高の数値は、210mmとクロスオーバーSUVとしてはかなり高いので悪路も心強い。また、走行制御プログラムではデフロックして悪路走破性を高める「オフロードモード」まで搭載されているのもクロスカントリーの特徴。高速道路から荒地まで対応するオールマイティ性はじつに頼もしい。
 ついでにいうと、全車に標準装備する世界最高水準の運転補助機能もリゾートエクスプレスとしてメリットが大きい。たとえば前を走るクルマにあわせてアクセルやブレーキを踏まなくても速度を自動調整してくれる追従式のクルーズコントロール機能は、渋滞における完全停止も含めて日本の高速道路上で考えられるすべての速度域で使用可能。「パイロットアシスト2」と呼ぶ、車線の中心を走るようにステアリング操作を補助してくれるシステムは、V90シリーズからは上限速度が時速140kmまで対応できるようになった。

 つまり渋滞や高速道路上では自動運転に近い状態までサポートしているのだ。それらは自動運転ではないが、ロングドライブの疲れを軽減してくれる。つまりこのクルマで移動すれば移動中の体力消費を抑えることになり、移動先でたっぷり遊べるというわけだ。
 また、家族を大切に守りたいという気持ちにもしっかり応えてくれる。世界最高峰の性能を誇り、右折時の対向車や歩行者はもちろん、自転車の飛び出しやヘラジカなど野生動物の出現にも対応する自動ブレーキをはじめとする安全装備も充実。道路から飛び出したことを検知して、シートベルトを巻き上げるなど乗員のダメージを減らすシステムも心強い。ここまで先進的な予防安全システムは、世界中を見まわしてもほぼ見当たらないのだから。
 内外装のクオリティ、実用性、そしてオールマイティな走りと安全性。V90クロスカントリーには家族のいる大人が人生を楽しむのに必要な要素がすべて詰まっているのである。

 ベース車両である「V90」標準モデルとの違いについてもう少し触れておこう。エクステリアは車体下部やホイールアーチを覆う無塗装の樹脂部品やグリル、そしてドアミラーやタイヤ&ホイールがクロスカントリー専用。サスペンションも独自設定で、車高は標準モデルに対して55mmリフトアップしている。ただしルーフレールを装着しても全高は1545mmでミニバン非対応の機械式立体駐車場を使える高さに収まっているのはうれしいトピックだ。

 インテリアカラーは全モデルともブラックで、V90シリーズとしては唯一、黒い本木目をコーディネートしているのが特徴である。シートはベーシック仕様の「Momentum」でも本革で、上級仕様の「Summum」になると滑らかな仕上げのナッパレザーにアップグレードされて、フロントはベンチレーションやマッサージ機能、加えて後席シートヒーターで備わる。
 両グレードの違いは、シートのほかステアリングホイールヒーター、ヘッドアップディスプレイ、タイヤサイズ(Summumが1インチ大きい)などで価格差が60万円。上級グレードに若干の割高感を覚えるが、極上の快適性を求めるならやはり「Summum」が欲しくなる。とはいえ「Momentum」でも世間一般的に考えればフル装備なので悩ましいところだ。
 いっぽうで「Momentum」も「Summum」でもエンジンは254馬力の「T5」と320馬力の「T6」を選べて価格差は65万円。性能的には前者で十分だから、大きなゆとりが欲しいという人だけ「T6」を選べばいいだろう。
 いずれにせよ間違いないのは、このV90クロスカントリーを選べば人生がもっと楽しくなることである。

【V90クロスカントリー T5 AWD Summum(8速AT)】
全長        4940mm
全幅         1905mm
全高        1545mm
ホイールベース    2940mm
重量        1850kg
エンジン      直4気筒DOHCターボ
総排気量      1968cc
最高出力      254ps/5500rpm
最大トルク     35.7kg/1500-4800rpm
サスペンション前/後 ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ前後    Vディスク
タイヤ前後     235/50R19
販売価格      694万円~819万円(V90クロスカントリー)

  • V90クロスカントリー T5 AWD Summum

  • スキッドプレート付きフロントバンパーの採用により、フロントの印象はワゴンとは異なる。

  • フロントグリルのデザインもクロスカントリーのためのオリジナル。

  • ドアミラーも専用品で、V90よりも大きなデザインとなる。

  • T5 AWD Summumに標準装備される19インチホイールは乗り心地とルックスを高次元で両立。

  • チャコール色の樹脂製プロテクションがアウトドアギア的なイメージを作り出す。

  • インテリアではブラックウォールナットのパネルによるシックな装いが印象的。

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