新車試乗レポート
更新日:2019.05.23 / 掲載日:2017.04.17

悪路走破性に感動! 本格SUVに生まれ変わった新型SUBARU XV

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

 この走破性は信じられない! 新しくなったスバルXVの試乗会で受けた最大の衝撃、それは悪路走破性の高さだった。
 スバルXVをひとことで説明すれば、インプレッサスポーツ(5ドアハッチバック)の車高を上げて、アウトドアギア的なコーディネートを加えてカジュアルに仕立てたクロスオーバーSUVということになる。そしてジドウシャ業界的に言えば「SGP(SUBARU GLOBAL PLATFORM)」と呼ぶスバルの次世代を担う最新プラットフォームが使われていたり、先代の日本仕様にはなかった1600ccエンジンが追加されたり、後席が広くなったりとか、ハードウェア面に関して語れることはいくつもある。
 しかし実際、このXVを購入対象として興味を持っている人にとってはメカニズムの話よりも、先代に比べてどうよくなったのか?とか、ライバルに比べてどこが優れているのか?といったことのほうがより重要だろう。そんな人にまず報告したいのが、新しいXVは絶大な安心感をドライバーや乗員に与えてくれるクルマだということだ。
 試乗会では走破性を確認するオフロードコースが用意されていた。運が悪いことに、いや、試乗に訪れた我々にとっては運がいいことに、試乗会場となった軽井沢北部には直前に季節外れの大雪が降った。そのためオフロードコースは雪解け水が混じって田植え前の田んぼのようなぬかるみになってしまったのだ。それは走破性を試すには最良の路面コンディションである。

 普通のクルマなら、もしくは見た目だけのSUVなら、そんな状況になったら試乗は中止だろう。しかしスバルのスタッフは、そんなオフロードコースにメディアを乗せたXVを送り出すという判断を下したのだ。神をも、いやスタックをも恐れぬ行為である。
 とはいえ、スバルはなにも無謀なことをやろうとしたわけではない。メディアを乗せる前にしっかりと試走し、しっかり走破できることを確認。そして「OK」を出したのだから。
 泥んこのぬかるみを甘く見てはいけない。現場は何度もクルマが走って深い轍ができ、雪も残り、上り坂だってあり、走れる確認ができていなければ本格悪路走行用の四輪駆動車以外のクルマで足を踏み入れようなんていう気には絶対になれない悪環境だ。くどいようだが念のためいっておくと、人間では泥に足を取られてまともに歩くことは不可能だろう。
 そんな状況でも、なんとXVは走ってしまった。それも、特別なテクニックも必要なしにだ。上り坂では片輪が泥、そしてもう片輪は雪。そんな傾斜を上っただけでなく、坂道の途中で停止して再発進も難なくこなしたのだから驚かないわけにはいかない。普通じゃなさすぎる。
 タイヤは……なんと新車装着時のノーマルタイヤだった。重要なのでもう一度言っておこう、悪路用のタイヤではなくノーマルタイヤで走ったのだ。雪と泥という路面コンディションの上り坂を。
 じつは、新型XVには従来になかった悪路走破用の新アイテムが搭載されている。それが「X-MODE(エックスモード)」だ。
 現行型フォレスターで初搭載され、その後アウトバックにも採用されたこのシステムは、電子制御系を切り替えることでトラクションを稼ぐ(タイヤが空転しないようにする)仕掛け。エンジン、トランスミッション、4WDシステム(締結率が高まる)、そしてブレーキなどをスイッチ操作で悪路用に切り替えることで走破性を高められるのだ。

 XVは今回、もし自分で判断するなら絶対に足を踏み入れないような過酷な路面のコースを「X-MODE」オフの状態で走り抜けた。それだけでもすごいこと。そして次はオンにして走ってみたところ、あきらかにタイヤの空転が減って走りがスムーズになったのだ。これを驚くなというほうが無理だ。「X-MODE」オフでも信じられないほどの走破性だけど、オンにしたら思わずその効果に惚れそうになってしまった。
 ひとによっては、「そんな悪路なんて絶対に走らないから関係ない」と思うかもしれない。でも、雪道を走る機会があるならその判断は早計かもしれない。この走破性の高さは、雪道での発進や坂道でのスリップ抑止となるのだ。滑りやすい路面で、坂道発進や雪がたまった場所からの脱出ができない経験があるならそのメリットが想像できることと思う。走破性の高さ、それは悪条件でもヒヤリとしなくて済むという安心感に直結するのだから。
 もうひとつ。新型XVの悪路走破性の高さには理由があった。それは最低地上高の高さである。最低地上高とは車両下側の、もっとも低い部分の路面との隙間。おなかを擦ると亀のように動けなくなってしまうこともあるが、この数値が大きければ大きいほど、クルマはおなかを擦りにくくなるのだ。
 その最低地上高を、XVは200mm確保している。じつはXVのような背が低めのSUVで200mmという最低地上高の数値は驚き。たとえば販売ランキングでトップのホンダ・ヴェゼルは170mm(4WD車)だし、人気のトヨタC-HRは155mm(4WD車)。ちなみにインプレッサスポーツは130mmだ。この最低地上高の高さは、未舗装路や雪道を走る際の大きなアドバンテージとなる。

 あまりの感動にオフロードの話にボリュームを割いてしまったが、普通の舗装路での感触もよかった。舗装路ではまず先代XVに乗ってから新型XVで同じコースを走ってみたのだが、乗り比べての印象を一言でいうと新型は“雑味”がとれている。
 わかりやすいのは路面の段差を超えたとき。先代はタイヤの上下動の収まりがイマイチで段差通過後に車体の振動も残るが、新型はまずタイヤの動きがビシッと収まり、車体の揺れもすぐに消えるのだ。ハンドルを切ったときのクルマが傾く感じやその収まり、ブレーキング時の安定感なども同様である。もちろん先代だってそのあたりの完成度は抜かりなかった。しかし新型はさらにその上をいっているというわけだ。これぞスバルが渾身の力を込めた新型プラットフォーム「SGP」の真価なのだろう。
 ところで先代では排気量2.0Lのみだったエンジンは、新型では1.6Lが加わり2タイプから選べるようになっている。どちらを選ぶべきか? オススメは2.0Lだ。減速比の最適化などで加速性能は1.6Lでも不足ないものの、ひとをたくさん乗せて上り坂や高速道を走るシーンでは2.0Lが頼もしい。やっぱり排気量増の余裕が違うのだ。
 そしてなにより、XVの特徴であるオレンジを挿し色にした楽しいインテリアは(オプションで本革シートを選んだ「1.6i-Lアイサイト」のステアリングホイールを除き)2.0Lモデルしか選べないのだ。どうせファッショナブルなXVを選ぶのだから、あのオレンジステッチのダッシュボードは欲しい。それがコーディネートされるのは2.0Lモデルだけなのだから、ぜひ選んでおこうじゃないか。

 もうひとつ加えておくと、ダッシュボード(ステッチの仕上げは1.6Lがフェイクで2.0L車だと本物の糸を使った手縫い)、2.0L車はシフトレバーにブーツが備わるなどインテリアの質感に差がつくのも大きなポイント。インテリアは運転中には常に接する部分だけに、質感が高まれば所有する満足感が違ってくるからだ。
 もうひとつ悩ましい選択肢は、オプションのルーフレールを装着すべきか否か。耐荷重80kg(これは公称値で実際にはまだまだ余裕がありそう)のルーフレールはルーフボックスやキャリアを装着するのに大活躍するからアクティブ派には欠かせないし、SUVらしい楽しそうな雰囲気を演出してくれるのも魅力的だ。セットで装着となるシャークフィンアンテナもカッコいい。
 しかし、全長が1550mmを超えて1595mmとなってしまうのは一部の人にとってはウィークポイント。つまりミニバン非対応の機械式立体駐車場には入れないのだ。いっぽうで未装着の全高は1550mmで入庫可能。もし行動範囲に機械式立体駐車場があるのなら、それをしっかり理解して判断しよう。


【XV 2.0i-S EyeSight(CVT)】
全長        4465mm
全幅        1800mm
全高        1550mm
ホイールベース    2670mm
重量        1440kg
エンジン      水平対向4気筒DOHC
最高出力      154ps/6000rpm
最大トルク     20.0kg/4000rpm
サスペンション前/後 ストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ前後    Vディスク
タイヤ前後     225/55R18
販売価格      213万8400円~267万8400円(全グレード)

  • 新型スバル XV 2.0i-S EyeSight

  • ポジション点灯。

  • ロービーム点灯。

  • ウインカー点灯。

  • 自動ブレーキのアイサイトはver3を全車に標準装備。2016年度の自動車アセスメント(JNCAP)において過去最高得点を獲得し、「衝突安全性能評価大賞」を受賞。

  • パワーユニットは、2.0L直噴および1.6Lエンジンの2種類で、いずれも水平対向レイアウトを採用。リニアトロニックと名付けられたCVTトランスミッションも改良され、発進時のパワフルさと低燃費を両立。

  • 2.0Lモデルでは、各所にオレンジのステッチを効かせることで、XVらしさを演出。

  • 荷室容量は385Lで、後方視界を妨げることなく9.5インチサイズのゴルフバックならば3つを収納可能。6対4分割可倒式リヤシートによって使い勝手はさらに広がる。

  • 商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャーの井上正彦氏。

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グーネットマガジン編集部

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