クルマのお役立ち情報[2017.03.02 UP]

CLOSEUP LUXURY MODELS [SUV]
いまもっとも注目が集まるラグジュアリーカー

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世界中の自動車ブランドが続々と参入しているのが「SUV」。もはやブームではなく、人気が続いているこのジャンルは、高級車ブランドにとっても最強のフロンティアとなっている。

文●九島辰也

強者たちによる競演で華やかさ極まるSUV

 近年もっともホットなカテゴリーといえばこのSUV&クロスオーバー。「え、こんなブランドが!?」って感じで、各社参入している。そもそもは90年代終盤のメルセデスとリンカーンだったが、すぐにBMWがX5で追従すると、2002年にポルシェ、VW、ボルボが追いかけた。

 そして今日。このページにあるようにベントレー、マセラティ、さらにはジャガーが販売を開始し、人気を集めている。ランボルギーニ、ロールスロイス、アルファロメオなども名乗りを上げた。どれもつい3、4年前までは考えられなかった。主軸はスポーツカーやスーパーサルーンで、背の高いクルマの経験値などはまったくと言っていいほどない。だが、昨今の技術力の高さから、いとも簡単にそれを仕上げてくるからお見事だ。

 というのも、どのクルマも背を高くしたことでのネガティブさはない。走ればスポーツカー並みの出だしとハンドリングだし、エキゾーストサウンドもレーシーに演出される。ここ数年この手のラグジュアリーSUVをワインディングはもちろん、サーキットで試したが、途中でSUVであることを忘れてしまうほど完成度が高い。

 しかもそれでいて快適なのも見逃せない。クルマの性格上エアサスや電子制御式ダンパーを多用するが、日常的な乗り味はまんま高級サルーンなのだ。もはやそれはショーファードリブン(運転手付き)の世界。かつてその領域はレンジローバーの独占であったが、そうではなくなったことを認識させられる。

 そして注目なのは、レーシーでラグジュアリーサルーンの快適性を持ちながら荷物がいっぱい積めること。これらラグジュアリーSUVはそこそこサイズのある分積載性もサルーンを圧倒する。

 これが21世紀のトレンド。いやデフォルトであることは言わずもがな。注目すべきカテゴリーなのである。

BENTLEY BENTAYGA
すべてに贅を尽くしたモンスター

ベントレー ベンテイガ ベントレー ベンテイガ
今度のベントレーは野山を
駆け巡ることもできちゃう

 ベントレー初のSUV。6L W12エンジンはパワフルにドーンと走るのはもちろん、綿密な電子制御でオフロードまでコントロールする。まさにワインディングから林道まで幅広くこなす。それでいてインテリアはベントレーならではの高級なしつらえ。ショーファードリブン(運転手付き)として使えそうな超高級SUVだ。

ベントレー ベンテイガ

ここがLUXURY POINT

サーキットで勝負し続けてベントレーならではの代物
サーキットで勝負し続けて
ベントレーならではの代物

 1920年代から30年にかけてル・ルマン24時間レースで5度優勝しているベントレー。戦うマシンというのが本性だ。それを証拠にベントレーを所有する方々を「オーナーズクラブ」ではなく「ドライバーズクラブ」と呼ぶ。走らせてナンボといったところだ。

ベントレー ベンテイガ(8速AT)

全長×全幅×全高 5150×1995×1755mm
ホイールベース 2995mm
車両重量 2530kg
エンジン W12DOHCターボ
総排気量 5945cc
最高出力 608ps/6000rpm
最大トルク 91.8kg m/1350rpm
ブレーキ前後 Vディスク
タイヤサイズ前後 275/50R20
新車価格 2695万円

MASERATI LEVANTE
イタリアの美しきチャレンジャー

マセラティ レヴァンテ マセラティ レヴァンテ
乗り込めば目の前には
お約束のアレが鎮座している

 こちらはマセラティ史上初のSUV。フレームはギブリベースで、その背を高くすることで開発された。特徴はアグレッシブな走りと優麗なスタイリング。イタリア車らしいグラマラスなボディラインを描く。インテリアもデザインされ妖艶な雰囲気を漂わす。ダッシュボード上にはお約束のアナログ時計が鎮座する。

マセラティ レヴァンテ

ここがLUXURY POINT

強いこだわりは開発ばかりか製造工程からも感じられる
強いこだわりは開発ばかりか
製造工程からも感じられる

 マセラティはギブリや新型クワトロポルテ、レヴァンテを製造するためにトリノに新しい工場を作った。会社として相当力が入っていると考えられる。しかも、フレームやボディワークにアルミを多く使うなど、コストのかかるつくりを選択。まさに強いこだわりのなせるワザといえる。

マセラティ レヴァンテS(8速AT)

全長×全幅×全高 5000×1985×1680mm
ホイールベース 3004mm
トレッド前/後 1624/1676mm
車両重量 2140kg
エンジン V6DOHCターボ
総排気量 2979cc
最高出力 430ps/5750rpm
最大トルク 59.1kg m/5000rpm
ブレーキ前後 Vディスク
タイヤサイズ前・後 265/50ZR19・295/45ZR19
新車価格 1080万円〜1279万円(全グレード)

That's what means the luxury vehicle.
高級車づくりに見るヨーロッパ

多くのひとが憧れる存在「高級車」。それは、自動車メーカーにとっても同じこと。だが、それは作り手が「高級車です」と出すものではなく、認められるものなのである。

文●沢村慎太朗

ハードだけでは語れない高級車というクルマ作り

 高級車・・・。この捉えにくい言葉を明快に解き明かすべく、人々はいろいろと悩みます。革シートだとかマルチシリンダー大馬力のエンジンだとか少量生産だとか、自動車エンジニアリング上のキーワードで例えば解こうとする。しかし、BセグメントのMINIあたりにも革シート仕様が設定され、かつてはV12やV8の自然吸気エンジンを積んでいた欧州車がダウンサイズ過給ブームを受けて軒並み気筒数を減らしたりしている現在、それは解法の決め手にはなりません。売る数が少ないって言ったって、2年前に発売されたFK2系シビック・タイプRは750台の限定でしたが、だれもこれを高級車とは言いません。ただし値段は428万円と無茶でしたが。

 そうやって理系方向で考えて悩んでいるところに文系がブランドというキーワードでしゃしゃり出てきました。いんちき臭いブランドアドバイザーだのが、いまだに残る西洋崇拝を利用して伝統のストーリー性だとか寝言をほざいてゼニを巻き上げようとする。騙されちゃいけません。

 話は簡単なのです。

 まず持てる方法を根こそぎ使って全力でクルマを作る。今そこにある最高の方法論を最高に積み上げて、ほかのクルマよりも凄ぇぞとアピールする。当然ながら我々はそのクルマに驚いて賞賛を送って憧れる。こうしてできあがるのが高級車であり、それがブランドになるのです。

 欧州のメーカーはそうしてきました。もともと自動車という機械製品が生まれた19世紀から20世紀の初めにかけて、クルマはお金持ちが遊びで買う贅沢品でした。でも庶民は、そんな目新しく高価な機械には目もくれず牛馬や人力だった。欧州セレブレティ上流階級が乗馬の代わりの遊びとして自動車に乗ったのです。そこが広大な土地を移動する大衆のアシとして自動車が普及したアメリカとは違いました。お金持ちの遊び道具だから、それは最新テクノロジーをふんだんに盛り込んだ高性能で仕立ても贅を凝ってないと駄目だった。こうして黎明期の欧州メーカーは競って全力開発のクルマを作りました。しかるのちに、その全力車から要素を少し抜き取って安いモデルを作る。その廉価車も全力車の威光があるから有難がられる。これがブランドの正体です。

ラグジュアリーモデル 工芸や美術などにも眼識がある富裕層を顧客に持つラグジュアリーモデル。室内は使用する素材や熟練した技術によって仕上げられる。

 だれもが認める高級の王者ロールスロイスもそうしてきました。彼らは1910年にシルバーゴーストという超絶な全力開発車を売り出しました。これはあまりに高額なので王侯貴族に少しだけ売れただけでしたが、一方で普通に高級なクルマを生産して、これが会社の基盤を支えます。のちにも彼らはファントムという超絶的モデルを注文生産しつつ、通常商品を売る形態を保持しました。BMWはそれをよく理解していたので、ロールスを買収したときに全力車として現行ファントムをまず作って売り出し、それが受け入れられたところでゴーストという普通に高級贅沢なモデルを送り出した。

 ロールスと別れたベントレーはVW連合の一部になり、アウディA8を下敷きにしたコンチネンタルやフライングスパーで商っていますが、90年代の全力車をミュルザンヌとして残している。

 スポーツカー系もそうです。フェラーリの市販車はV12搭載モデルから始まりました。そのV12車は同時代のF1マシンを市販車に改造したものだった。以降フェラーリはV12車だけを作り、ときには限定の超贅沢V12モデルまで仕立てつつ、60年代末にフィアットの助けを借りて量産体制ができあがったところでV6のディーノgtを追加した。時系列の順番は上から下です。

 フェラーリに対抗して設立されたランボルギーニもそうです。創業時にフェルッチオ・ランボルギーニはフェラーリをクビになった技術者にフェラーリより馬力が出て、あちらのようにSOHCじゃなくDOHCでV12を作らせました。それを載せてFRのGTで業界に進出したあと、フェラーリよりも早くミドシップ化してミウラを送り出した。その後にV8ミドのウラッコが登場する。

 アストンに至っては20世紀後半にはDBシリーズ系しか存在しなかった。21世紀に復興したとき彼らはV12をカーボンアルミ混成シャシーに載せた初代ヴァンキッシュから新規ビジネスを船出させた。DB9やDBSなど普通に高級高性能なモデル登場を経てV8ヴァンテージが送り出されるのは、そのずっと後でした。

 ジャガーはベントレーなどに比べて歴史が浅い会社ですが、それでも全力開発のXJと、その派生版クーペだけで商売をしてきて、下位モデルが加わるのは90年台からです。

 考えてみればランドローバーだってそうです。彼らは戦前設計のランドローバーを一新すべく全力でレンジローバーを開発して70年に送り出す。しかるのちに戦後版ランドローバーとして簡素なディスカバリーが追加される。そして小型SUVへ。

 日本の自動車メーカーはそこを間違います。地道に手堅く行こうとするのか、下位のモデルから上位にモデルという順番にする。トヨタが89年にレクサスを立ち上げたとき、米国版マーク2の設計を拡大して初代セルシオを作った。それはある意味ではトヨタの全力開発だったのですが、レクサスを日本で展開するときにセルシオ(LS)でなく下位のGSやISから始めてしまった。おまけにトヨタにはレクサスにはないV12を積むセンチュリーがある。これじゃあレクサスLSは真の高級ブランドにゃなれない。日産は同じ80年代末に全力でプレジデントを開発しましたが、それが失敗すると懲りてビビッてシーマの焼き直しで逃げた。料亭プロデュースのコンビニ弁当は高くても有難がって買われます。でもコンビニが作った会席料理を料亭で喰いたがる奴はいない。そういう人間の心理を日本のメーカーは無視するからいつまで経っても真の高級ブランド車は生まれないし、欧州メーカーは分かっているから今日も我々が憧れる高級ブランド車のセールスが成功しているのです。

Profile
沢村慎太朗 自動車ジャーナリスト
●研ぎ澄まされた感性と鋭い観察力、さらに徹底的なメカニズム分析によりクルマを論理的に、そしてときに叙情的に語る自動車ジャーナリスト。

1948 FERRARI 125 F1

1948 FERRARI 125 F1

F1と密接な関係を築き上げてきたフェラーリにとって、最初のF1マシンとなったのが「125 F1」。全長およそ3.7mのラダーフレームのボディに搭載された1.5LのV12エンジンは、230馬力を発揮。

1963 LAMBORGHINI 350 GTV

1963 LAMBORGHINI 350 GTV

1963年、トリノの自動車ショーで発表されたランボルギーニ初のプロトタイプ「350 GTV」。およそ400馬力といわれた3.5LのV12気筒エンジンは、翌年、デチューンされて市販車「350 GT」に。

1970 RANGE ROVER

1970 RANGE ROVER

タフなフルタイム4WDメカを持ち1970年に登場した初代レンジローバー。高い悪路走破性や機能性だけでなく、快適さも持ち合わせていたことから、「砂漠のロールスロイス」と呼ばれた。

1972 JAGUAR XJ

1972 JAGUAR XJ

ジャガーブランドを代表する伝説の高級サルーン、「XJ」の第一世代「シリーズ1」。1972年にはすでに、5LオーバーのV12エンジンを搭載したモデルが設定されていた。

1980 BENTLEY MULSANNE

1980 BENTLEY MULSANNE

1980年から1992年までの長きにわたり作られたミュルザンヌ。ル・マン24時間レースが開催されるサルト・サーキットのもっとも長いストレートの名を持つ、贅を尽くした極上のセダン。

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