日本の粋 クラウンの系譜

日本の粋、クラウンの系譜
「CROWN(クラウン)」とは、「王位を表す冠」を意味する
つまり、トヨタ・クラウンはその名のとおりトヨタ車の王様である
初の国産乗用車として初代が登場した1955年以来
クラウンは日本の自動車シーンを牽引してきた主役だった
いわば、国産車の歴史はクラウンの歴史でもあるのだ
そこに注がれた技術の粋(すい)と国産車としての粋(いき)は
ほかのどのクルマでも味わえないほど、濃厚で深みがある
だからこそ、半世紀もの長きにわたり日本人に愛され続けてきたのだろう
文=森口将之  写真=菊池貴之
HISTORY OF CROWN
CROWN ROYAL
CROWN ATHLETE
CROWN MAJESTA
日本の伝統を色濃く残す 先代クラウンを手に入れる
国産乗用車の原点であり、いつの時代も
国産車をリードしてきたクラウンに
込められた大きな夢と技術の粋
「いつかはクラウン」。日本の自動車史上に残る名コピーだと思う。
 どうしてクラウンが「いつかは」なのか。どうして日本を代表する高級車になったのか。それはやはり、初代の登場から半世紀以上という、歴史の重みに裏づけられている。しかもクラウンは日本初の純国産にして本格的な乗用車だった。この事実を抜きには語れないのだ。
 第2次世界大戦に負けたことで、日本はとてつもない損害を受けた。クルマを所有するなど夢のまた夢。乗用車といえば、タクシー用のクルマのことだった。道路も悪く、雨が降れば穴だらけのぬかるみと化していた。戦争前、欧米のレベルに近づいていたクルマ造りの技術は、再び大きく差が開いてしまった。
 多くのメーカーは、トラックをベースにしたタクシー用の乗用車を造りつつ、欧米のメーカーと提携してノックダウン生産を行い、技術を学んでいこうとした。
 戦後10年目の1955年に登場した初代クラウンは、そこが違った。トヨタはノックダウンには走らなかった。しかもクラウンはオーナードライバー専用車だった。たとえばフロントサスペンションには、いち早く独立懸架を取り入れた。観音開きドアを持つボディは、当時のアメリカ車を思わせる、きらびやかなものだった。
 こうした造りのよさが、憧れにつながった。日本でも本格的な乗用車が造れることを示したことで、敗戦のショックから立ち直れなかった日本人に勇気と希望を与えたのだ。
 最初のモデルチェンジは7年後の1962年。デザインはモダンになり、サスペンションはリヤのスプリングが板バネからコイルになって、直列4気筒エンジンは小型車の排気量枠拡大に合わせて1.5Lから1.9Lへ。さらに2L直列6気筒まで投入し、快適性をアピールした。
 さらに2年後には、2.6LのV型8気筒エンジンを3ナンバー幅のボディに積んだモデルが、クラウン・エイトの名前で登場する。もっともこのエイトは、68年にセンチュリーに発展。その前年に発表された3代目クラウンは、再び5ナンバー2Lのモデルになった。
失敗から学んだ
クラウンのあるべき姿
 そんな3代目は、本格的にオーナードライバーねらいだった。ボディカラーにはホワイトを加え、「白いクラウン」のキャッチコピーでアピール。翌年には、クラス初の2ドアハードトップまで登場させたのだ。
 その4年後に発表された4代目は、2.6Lエンジンの搭載もニュースだったが、何よりもデザインで攻めていた。ボディの前後やキャビンを大きく絞り込んで、バンパーはボディ同色として一体感を強調するなど、国産高級車とは思えない斬新な造形。しかし「クジラ」とあだ名がつけられたこのモデルは行き過ぎで、販売台数はライバルの日産セドリック/グロリアに抜かれてしまう。
初代は今から50年以上も前にデビューした、日本車初の乗用車だった。
 そこでトヨタはモデルチェンジを早め、5代目は3年後の74年に発表した。落ち着きを取り戻したボディは、4ドアハードトップが追加されたことがトピック。それまでの最上級グレード、スーパーサルーンのさらに上を行くロイヤルサルーンが登場したのもこのときだ。現在のロイヤル・シリーズのルーツはここにある。
「クジラ」での教訓を生かしてか、79年デビューの6代目は、デザインはキープコンセプト。しかしエンジンは2Lターボが登場するとともに、2.6Lが2.8Lに拡大。のちにこの2.8LはDOHCになった。ツインカムとターボを一度に手に入れた世代だったのである。
 このうちツインカムは、ポジション的にクラウン2ドアに近いソアラとともにデビューしたエンジン。ということで83年に発表された7代目では、2ドアが消える。メカニズムでは、リヤサスペンションにセミトレーリングアームを導入して4輪独立懸架になったこと、3Lエンジン投入などがトピックだった。
 でも、ここまでのオーバー2Lのクラウンは、ボディは基本的に5ナンバーのまま。その状況が変わったのが87年登場の8代目だった。4ドアハードトップの3Lが3ナンバーサイズになったのである。といってもサイドパネルをふくらませただけなのだが、販売の主力が2Lセダンから3Lハードトップに移行していたことを示していた。
 時代はバブル景気のまっただなか。ユーザーの上昇志向は止まらず、89年にはあのクラウン・エイト以来のV型8気筒エンジンが搭載される。4Lのこのエンジンはセルシオ(レクサスLS)用として開発されたものだったが、日本でのデビューはセルシオより前のことだった。
クラウンを超えるクルマの存在は許さない
 昔からのクラウン・ユーザーは、クラウンを超えるトヨタ車の存在を許さなかったのかもしれない。それを証明するように、次の9代目ではV8モデルが専用車種になり、セルシオに並ぶ車格に押し上げられた。マジェスタの登場である。今までのハードトップはロイヤル・シリーズとして継続。セダンはマイナーチェンジにとどまって、完全に脇役に追いやられたかっこうだった。
 マジェスタは現在のレクサスGSのルーツ、アリストの兄弟車で、モノコックボディを採用していた。今までのクラウンはフレーム付きボディを特徴としていたが、その伝統を初めて破ったのだ。サスペンションが4輪ダブルウイッシュボーンになっていたこともロイヤルとの違い。クラウン初の4WDもこの初代マジェスタに設定された。
 ロイヤルとマジェスタの2シリーズ体制は、95年発表の10代目でも続く。ただしプラットフォームは共通となり、ついにロイヤルもフレームを捨て、モノコックボディ+4輪ダブルウイッシュボーンになった。デザインではマジェスタの縦型テールランプが特徴だった。
 20世紀最後のモデルチェンジは99年。ここで登場した11代目は、ロイヤル/マジェスタともに、ボディがハードトップからセダンに変わった。少し前にモノコックにモデルチェンジしていた従来からのセダンは、これで完全に法人向け用になった。
 ここでは新しいシリーズとして、アスリートが誕生。セドリック/グロリアのグランツーリスモに対抗するモデルで、ほかのクラウンにはない280馬力を発生する2.5Lターボエンジンを積むなどして、走りのイメージをアピールしていた。
 そして2003年にこのアスリートとロイヤル、翌年にマジェスタと、時間をおいて現行の「ゼロ・クラウン」にスイッチしたのである。
セダン以外も重要な位置づけ
 クラウンにはセダン以外にもワゴンモデルもラインアップされていた。初のワゴンは、カスタムの名で2代目から登場。以降、セダンとは違うサイクルでモデルチェンジを繰り返し、現在は先代をベースにしたモデルがエステートの名でラインアップされる。また、初代クラウンをモチーフにした「オリジン」というクルマが2000年に発売され、話題になったことも記憶に新しい。
カスタム 初のワゴンとなるカスタム。
オリジン プログレをベースにしたオリジン。
クラウンステーションワゴン 8代目をベースにしたクラウンステーションワゴン。1999年にフルモデルチェンジするまで約12年間も販売された。
クラウン初の4ドアハードトップは5代目から。当時はピラードハードトップと呼ばれていた。この上級グレードには、なんと車速感応式パワーステアリングが装備されたというから驚きだ。
8代目クラウンには、ワイドボディハードトップがラインアップ。それまでもワイドボディはあったが、このときは全幅も拡大するなど、完全にボディサイズを大きくした。
9代目からクラウンの主流はハードトップに移行する。11代目からは再びセダンボディを採用するが、クラウンの歴史のなかでは、ハードトップの流れと見ていい。
1991年にデビューした初代マジェスタは、アリストと基本プラットフォームを共有。その意味では、クラウンシリーズとは源流が異なる。が、味つけはクラウンらしい。
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