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こだわりのネーミングこそ名車の条件
跳ね馬のないフェラーリからは親子の深い情感が伝わってくる
美学が多く宿るクルマほど魅力は大きい。また、美学には、陰があるほどその輝きも増す。
1967年に発表されたディーノ206gtのミドシップに搭載するV6エンジンは、フェラーリの総帥エンツォ・フェラーリのひとり息子で、1956年にわずか24歳の若さで病死したアルフレディーノ(愛称・ディーノ)にちなんで「ディーノユニット」と名づけられている。のちにF2を経てF1でも使用され、フェラーリの新時代をもたらしたこのV6エンジンのアイデアを彼が出し、開発に深くかかわったことからも、ディーノの名前はふさわしい。
名づけ親は父エンツォ。
ところが、206gtのボディには、フェラーリの名前もトレードマークである跳ね馬のエンブレムも見当たらない。ディーノの死に際して「レースやマシンに対する情熱を失った」とエンツォは語ったという逸話からは、とうてい想像に難い出来事である。しかも、206gtはV6フェラーリの量産第1号車でもある。
事実はこうだ……。60年代初頭、財政的に苦渋の状態にあったフェラーリはいくつかのメーカーへの売却交渉を進めており、結局69年にフィアットの傘下へ半身を寄せる。その中途過程として、量産を目的としたディーノユニットの生産はフィアットにゆだねることになった。それゆえ、フィアットディーノクーペ/スパイダー、ランチアストラトスも同じV6を搭載する結果となった。
つまり、純粋なフェラーリではない206gtは、フェラーリブランドを名乗るにふさわしくない、ということなのだろうか。「12気筒以外のストラダーレ(公道用車)はフェラーリと呼ばない」というエンツォの逸話も残っている。
が、そのエンジンレスポンスのよさ、素晴らしいハンドリングとも、ディーノ206gtはまごうことなきフェラーリのクルマである。愛息のために純血さを欠いたクルマにフェラーリを名乗らせたくない……そんな父親の深い敬愛なのだろうか。
←ボディはオールアルミで1台1台をスカリエッティが手作り。エアインテークの跳ね馬は後付けされたモノ。
←ブランド名は「ディーノ」。のちに246gt、V8搭載のディーノ308gt4へと発展し、今日のV8搭載スモールフェラーリのルーツとなった。
←排気量1986.6cc、3連ウェーバー、V6DOHCのディーノユニットは180馬力/7400回転を発生する。このクルマの生産番号は40台目。
←明確なゲートが付けられたシフトレバーは今日も続くフェラーリの伝統。ステアリングなどを除いて、室内、ボディなどほとんどオリジナル状態。
もうひとつのビッグネーム「エンツォ・フェラーリ」
愛息のディーノがあるなら、父エンツォの名前を冠したクルマもある。その名もエンツオフェラーリ。こちらは、2002年の発表だ。
6L V12エンジンをミドシップに搭載し、650馬力以上のパワーによって最高速350km/hを超えるトップスピードを実現している、フェラーリの最高峰といえるモデルである。
最高峰ゆえにエンツォのネーミングを与えるにふさわしいフェラーリといえるだろう。349台の限定生産。
●ディーノgtオーナー:鬼頭重一氏 取材協力:テリッフィク TEL 058-240-4788
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